第647話 触れ合い画集

不思議な画集を手に入れた。それは、誰かと誰かが手を取り合って微笑みあっている様子の画集だ。親と子供、祖父と子供、子供と子供、恋人と恋人。様々な触れ合っている姿が描かれている。その画集は、触れ合い画集というタイトルだった。

私には両親がいない。幼い頃から孤独で施設に預けられていた。父や母の温もりを知らない。私はこの触れ合い画集の中の母と子の触れ合いに憧れた。お母さんがいるってどんな気持ちなんだろう。


「みっちゃん。何してるの?……あら、触れ合い画集。それ良いよね」

「うん」

「みっちゃんは、どの絵が好きなの?」


私は母と子を指差す。


「そっか。そっか」


そう言って施設の人は、触れ合い画集の母と子のように私の手を取って同じポーズをした。


「こんな感じだよね」

「うん」

「私達はみっちゃんのお母さんだからね。何でも言ってね」


そっか。私には沢山のお母さんがいるんだ。人より得したな。

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