第579話 小さな弁当屋

小さな弁当屋を営む一人の女店主がいた。女の弁当屋は、なんとか自分が食っていける程度の売上で細々と経営を続けていた。しかし女は、食べていくだけの経済力のない人間に無料で弁当をあげているのです。


ホームレス、売れない作家、売れない役者、売れない映画監督。


彼らは、いつも喜んで小さな弁当屋の弁当を食べて女店主に感謝するのでした。来る日も来る日も女は、弁当を無料で渡しました。月日が流れて3年が経過しました。


書店に並んでいるのは、この出版不況にも関わらず1億冊の売上を突破した本。


「ホームレスと役者と弁当」


という小説でした。そうです。この小説は、女に弁当をもらった売れない小説家がホームレスに取材をしながら書いて、売れない映画監督が映画化し、売れない役者が出演している話題の本。


全ては女店主の計算だった。この人達はきっと才能がある。そう直感した小さな弁当屋は、彼らを結んだのだった。

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