第574話 逆さ殿様

「知っておるか?」

「おう、なんじゃ?」

「殿は、奥方にはめっぽう弱いらしいぞ」

「バカな。あの厳しい殿がか?亭主関白ではないと申すのか?」


噂は広まっていった。あの偉そうな殿様が、奥さんにはめっぽう弱いと言うのだ。


「奥方を見た事はあるか?」

「ああ。おしとやかな女子だと思うたが」

「それがな。ワシは見たのだ。殿に罵声を浴びせておる姿を」

「なんと!!それは真か?殿に罵声をか!?」


兵たちの間でその話は、どんどん広まっていった。そして一人の兵がとんでもないものを見たという。


「と、殿が……。奥方に逆さ吊りにされておった」

「な、なんじゃと!?」

「逆さまになって反省してなっ!!って言われて、天井から吊るした糸に足を括りつけられておった。おそろしや……」

「女子は結婚すると変わるというからの」

「ワシ。嫁をもらうのが怖くなってきた」


こうして兵士たちは、女の怖さを知ったのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る