第525話 伝説の剣豪

博物館に飾られていたのは、大紫幸三郎という大剣豪の「手」だった。

私はその手を見て首をかしげた。


「えっ?なんで手?普通、刀とか飾ってない?」

「ああ、これはですね。大紫幸三郎の武器なんですよ」


隣で見ていたおじさんが教えてくれた。


「手が武器なんですか?大紫幸三郎は、格闘家だったんですか?私、てっきり剣豪だと思ってました」

「いいえ。剣豪ですよ。大紫幸三郎は、唯一無二の手刀の使い手だったんです」

「手刀!?嘘ぉ!?」

「相手の振り降ろす剣をひらりとかわしてかいくぐり、首に一撃、手刀を当てて気絶させるんです。一滴の血も流さずに敵を倒した伝説の剣豪です」

「そうだったんですか!?歴史の教科書には、そんな事書いてなかった」

「そりゃそうですよ。そんな事書いていたら、馬鹿なクラスの男子は、どうすると思います?」

「休み時間に手刀で戦います」

「そう。書いてないのは、文化省の配慮ですよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る