第486話 あなた疲れてるのよ

「ただいま」

「おかえりなさい」


仕事終わり。いつものように妻が出迎えてくれた。


「あら、あなた。お疲れのようね」

「ああ、本当に参ったよ。新しい取引先が出来て忙しくて残業続きだ」

「でも仕事が忙しいのは、良い事よ」

「まあそうだがな」

「ご飯出来てるわよ。お風呂も沸いてるけど、どうする?ご飯?それともお風呂?」

「風呂に入ろうかな」

「お疲れのようだから、ゆっくりお風呂に入ってくるといいわ」

「ああ、そうするよ」


風呂に入り、リラックスする。良い湯だ。

それから風呂上がりにビールを飲む。

しかし妻は、なぜかグラスを二つ用意した。


「ん?お前も飲むのか?」

「いいえ」

「じゃあどうしてグラスを二つも持ってきたんだ」

「あなた疲れてるのよ」

「えっ?」

「だからね……」

「なんだよ」

「後ろにもう一人いるじゃない。あなた憑かれてるのよ」


俺はゾッとして後ろを振り返った。

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