第467話 作家に振り回される編集者

出版社に入社した私は、大ファンの売れっ子作家である紅葉川先生の担当になった。紅葉川先生は、ピュアで純粋な胸キュンラブストーリーを書いたら最高の作家だ。失礼のないように気合を入れて先生の家のチャイムを鳴らした。


「はい」

「新しく担当になった荒井です」

「今手が離せないんだ。開いてるから入ってきて」


さすが紅葉川先生。きっと今、筆が乗っているんだ。私は気が散らないように、なるべく音をたてないように家に入った。すると先生は、オンラインゲームをしていた。


「……あの、先生。原稿は?」

「まだだよ」


それから紅葉川先生は、出かけると言う。私にも付いてこいという。出先のカフェで書くのか?

さすが紅葉川先生。しかし行ったのは、競馬場だった。


「先生。原稿は?締め切りが……」

「これ終わったらね」


そして家に帰った先生は言った。


「実は原稿もう出来てました。てってれー。ドッキリでした」

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