第334話 最後のお別れ

僕が彼女と出会ったのは、15歳の夏。太陽が照り付ける暑い日だった。受験生の僕は、塾の夏期講習を終えて家に帰っていた。


「和也」


僕の名前を呼ぶ声がした。後ろを振り返るとそこにいたのは、綺麗な茶髪の髪をした女の子だった。


「えっ?誰?」

「うーん、名前なんて重要?」

「重要だよ」

「じゃあ……夏だし、ナツでいいよ」

「偽名じゃないか」

「うん、私はナツ。唐突に思いついただけだけど気に入ったし、そう呼んで」


そう言ってナツは笑った。笑顔が可愛らしい子だった。


「なんで僕の名前知ってるの?」

「私はずっと和也の事知ってたよ。小さい頃からずっと見てきた」

「いや、僕は君の事なんて知らないよ」

「いいんだ。それで。今日はね、お別れを言いに来ただけだから」


そう言うと彼女は、行ってしまった。帰ると母さんに、僕の部屋にある大事にしてた犬のぬいぐるみを捨てたと言われた。


ナツ、まさか君は――

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