第36話 念願の超能力

テレポート、予知能力。あらゆる超能力が使えるようになり、もしも使えたら何をするかという事を考えて妄想をして過ごした日々だった。何度もシミュレートしてきたが、いざ超能力が使えるようになった俺は、舞い上がってしまい、何がしたかったのか分からないでいた。しかしひとつだけ確かな事は、超能力が使える事を誰にも言ってはならない。なぜならそれが世間に知られてしまうと、俺は研究施設に連れていかれ、狭い部屋に閉じ込められて実験されるのではないかと考えたからだ。


決して誰にも言えない。親や兄弟、友人にも言えない。俺は悩んだ。誰にも言えない秘密を心の中でずっと保持し続ける事は、とても辛い。自分一人で抱え込んで秘密を墓場まで持っていくしかない。それがどれ程しんどい事か。


こんな辛い思いをするなら超能力なんていらない。嗚呼、こんな事望まなければ良かった。


俺は普通の人間じゃなくなった。それがこれ程辛いとは。

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