応援コメント

第千五百三十話・初陣組の模擬戦・その二」への応援コメント


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    改の連続更新お疲れ様です。

    一馬の本陣の兵は四十名、前衛、右備、左備がそれぞれ二十名の総勢百名ですか。
    構築した野戦陣地は防衛というよりは相手方の動線を定めるためのものになりますか。
    対する初陣組の若武衛様の構築している陣地は、完全な守り重視の防衛陣地であって、優秀な武官に教えられたようですね。

    「あの陣構えは教えられたものだろうね」

    「そうだと思います。悪くありませんよ」

    動きも悪くないし、義信君を含めて皆できちんと協力して陣地を築いているという事は教えられた事はまずは出来るってことですね。
    エルはそんな初陣組に笑みを見せますか。
    教科書通りですが、銀〇伝の教科書通りしかできないフォ〇クの高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変=行き当たりばったりにみたくならないといいんですが。

    ちなみに一馬の陣地構築も、一馬を含めてみんなでしているんですか。
    将だろうが兵だろうが限られた人員ですから働ける以上は働くのが当たり前ですよね。
    これで一馬の陣営が柴田勝家さん、松永久秀さん、朝倉宗滴さんとかの特級クラスの大物が居たら勝ち目ないですよね(笑)
    やるとしたら、胸を借りて戦う感じでしょうけどね。
    義信君は指揮するだけでもいいんですが、多分、自発的に参加すると決めたんでしょうね。
    学校とかでは他の子と同じく働いていたから違和感はないですが、当初は登校拒否をしていたのが嘘みたいに素直になりましたね。

    「悪くないんだけどね」

    悪くないとはいえ幾つか教えられた戦術と陣地の形から、守りの陣地を選んだわけは彼らの心理状況が影響しているんでしょうね。
    悪くないが、あの陣地では戦いの流れと勝ち筋が見えていないと言うよりも一馬だから何をしてくるかわからないと言う心理状況なんでしょうね。
    だから何とか引き分けに持ち込みたいと言う感じでしょうか?

    「初陣もしておらぬ者ら故、勝つことが難しいと思うたのでございましょう」

    一益さんの言葉に少し苦笑いを見せてしまったかもしれないですか。
    不利な相手に守りを固めるのは立派な兵法ですが、悟られないように援軍や別動隊を伏兵したり退路遮断したりしないと勝ち筋が見えないですよ。
    立派な兵法とはいえあれでは勝つという意気込みが見えないですよね。
    力の差がある相手に守りの陣で待ち構えると、攻勢に移る前に士気が上がらず終わる可能性もありますからね。
    攻守の切り替え、これが難しいんですよね。

    それが出来るのが名将なんですが、初陣組にそれを求めるのは酷ですね。
    長尾景虎さんじゃあるまいし。
    戦争の才能って一種の非常の才ですからね。
    そこいらの通行人A、町民Aにも眠っている可能性があるし、漢の高祖劉邦も明の洪武帝朱元璋(本当は朱重八)も平和な時代だったら一介の農民や下級役人で終わっていたでしょうし、実際木下藤吉郎君も弟の小一郎君も非常の才を眠らせたまま、職人として農民として一部分を開発や発想に利用している状態なんですけどね。
    ゴムの使用とか、兵卒にリュックのようなものを背負わせて物資を運ばせたりとか。
    明治維新は薩長などの西国大名の藩主達と薩長土の下級武士たちが一丸となって切り拓いたと言っても過言ではないですからね。

    「さあ、始まるな」

    広い敷地に対峙するように布陣した両軍で声による審判は不可能。
    開始の合図と中断や終了の合図は太鼓と旗で行うしかないですね。
    英国は各員がその義務を尽くすことを期待する=ホレイショ・ネルソン提督の信号旗を開戦前に使ってみますかね?
    ちょっともじって「我々は各自がその義務を至誠を持って尽くす事を期待する」=「義務と誠実(であれ)」とでもしておきましょうかね?
    練習試合ですから事故でもない限りネルソン提督みたいに戦死者は出ないでしょうし。
    両軍が布陣して太鼓が打ち鳴らされると、いよいよ試しの儀とも言える初陣の始まりですか。

    戦いの主導権をこちらが握る気はないですよね。
    それをやると一方的になり過ぎて戦いにならないし、若い子たちには考え悩む時間が必要ですからね。
    銀〇伝の艦隊シュミレーションみたいな事が出来ればいいんですが。

    「思ったより士気を保っているね」

    意外なことに初陣組は守りの陣から出てきましたか。
    右備と左備にそれぞれ二十名ほどが討って出ているから半数ですか。
    陣地は完全な守備の形なのに左右から攻めてきたのは奇策というほどではないですね。
    守勢に入るばかりでは勝ち目がないと悟ったのか、守りの陣形があることで大崩れはないと安心して攻めに転じたと見るべきか。
    この時点では分かりませんね。

    「左右を崩したいのか。中央を手薄にしたいのか」

    肝心の戦術は左右から攻めてくる形を選んだ。
    ハンバル・バルカ将軍のカンナエの戦いとも違いますよね。
    あれは魚鱗?から包囲殲滅ですから。

    「少なくとも包囲されての殲滅はなくなりました。それを狙ったのかもしれません」

    中央にまとまって攻めてくるとそうなりますから、エルに驚きはないですね。
    これも悪くないということは確かですか。
    但し…。

    「個々の力量もそうだけど、集団戦の戦い方が違うんだよね」

    一番槍を狙ったんでしょうね。
    先頭にいた数名が、すぐに胸や頭の紙風船を破られて敗北判定になりましたか。
    陣地を利用して動線を減らして、あとは複数による連携で確実に倒していく。
    一対一では技量の差が出るから多対一の戦法は織田家に仕官して以降、ジュリアとセレスが一番教えていた事ですからね。
    申し訳ないですが、久遠家の連携戦術の完成度は尾張一ですよね。
    銀〇伝のヤン艦隊レベルで(笑)


    「やるぞ!!」

    春達の前に気合いが入った子たちが攻めてきたのは悪くないですね。
    圧倒的に不利な状況で心が折れないだけでも充分教育がなされている証拠ですね。
    とはいえ裂帛の気合、それだけで勝てるほど、久遠は甘くないですよね。

    「なっ!?」

    「動きが!!」

    得物は同じでも使い手が違いますからね。
    個々の力量は決して悪くはないですが久遠はそれ以上に武芸を鍛練している上に連携した集団戦ですし。
    ひとりが相手の木槍を押さえるとすかさず違う者が紙風船を割る。
    基本戦術ですね。
    相手も連携を学んでいるのは間違いないですが、互いに力量も動きも判別できないと、連携しているつもりでも連携になっていないですからね。
    並んで同じタイミングで突く事だって何度も訓練しないと合いませんから、反復練習は必要不可欠なんですよね。

    「出過ぎるな!」

    「なにを! 己らこそ出ろ。退いたらこちらに勝ち目などないぞ!」

    討ち死に判定で離脱する者がいると、そこに隙が出来るのは当然ですよね。
    さらに個人の力量でこちらの連携に対応出来る者が僅かに踏ん張りますが、周りが付いていけないと意味がないんですよね。
    練習試合で実戦ではないから実際に死ぬわけじゃないと割り切って奮戦している子がいる反面で、連携を重視して周りと合わせようとして上手く行かない子もいる。
    これは意思の疎通の問題ですね。

    「退け! 退け!」

    二十人ほどいた相手が半数ほどに減ると、手数も頭数もこちらの半分以下となり撤退するしかないですね。
    死傷者五割は実戦では壊滅ですね。
    駿甲の戦いを思い出しますね。

    「追わなくていいわ」

    春はすかさず味方の追撃を止めましたか。
    無論、追えば数名は討ち死判定に出来るでしょうが初陣で撤退しようとして失敗して終わりではあんまりで可哀想ですからね。
    戦の作法を教える初陣であって、心を折るための戦いではありませんからね。
    右備も同じく撤退していますか。
    とりあえず一当てしたことを褒めてあげるべきですか。
    左右を攻めて様子を見つつ、上手く行けば突破か中央を開けることを狙ったのだと思うとは考えているんですね。
    左備の損傷はゼロですか。
    調練はしても初陣の素人、よくて士官候補生相手にこちらは近代思想の軍隊ですから当然ですよね。


    「討ち死した者二十二! 敵は陣から動かず!」

    一馬は主筋でも本当に手加減しませんからね。
    いや主筋だからこそですか。
    負けや過ちこそ学ぶ事があると言う久遠の教えのままですね。
    その教えをこのような場だからこそ学ばせる気なんですよね。
    折角の試合で戦死者が出ないシュミレーションなんですから、今やらなければいつやるんだって話ですよね。

    「なんという強さだ。左右を差配する奥方様らにたどり着くのも難しいとは」


    「敵方は抜きん出てくる者がおらず。複数で確実に戦う。教えのままだな」

    誰ひとり一馬を甘く見る者は当然の如くいませんが、若武衛様側が二十以上討ち死を出したというのに敵は未だひとりも欠かしていないというその事実に戸惑う者はいますか。
    中には初陣前で武芸大会の予選でいいところまで行った者もいたんですか。
    初陣組の中でも武勇のある彼らを中心に敵方を動かす為に討って出たというのに、ここまで通じないとは。
    流石は久遠家ですね。
    つまり釣り出し作戦だったわけですね。

    「せめて弓が使えれば……」

    それは安易な考えですね。

    「飛び道具を許したら、こちらがさらに不利になるわ。氷雨様や太田様がおるのだぞ!」

    継矢が出来るセレスや太田牛一さんがいますから益々不利になりますよね。
    久遠勢が動かない事で暫く時が得られ、こちらは立て直しのために皆で考えますが、どうにもなりませんよね。
    将とは難しいものですよね。
    早速洗礼を受けましたか。
    若武衛様も多くのことを学んできましたからね。
    幼い頃より傅役だった者(牧長義さん?)から始まり、学校でも学び、元服してからは父親や信秀公からも学びましたからね。
    しかし、どうやっても勝つという道が見えないとは苦しいですね。

    「皆、かような思いをしたのであろうな」

    ふと、思ってしまいましたか。
    敵となった者、こちらに降った者は皆、このように悩み苦しみ、悔恨をして決断したのだろうなと思いましたか。

    「若武衛様……」

    「内匠頭は戦を嫌う。銭や米と違い、人の命は失うと二度と戻らぬからとな。それ故に戦をする時は必ず勝つように支度をする」

    確かに孫子の至上は戦わずして勝つ、次善は戦う前に勝つ事ですよね。
    それでも損害は出る。
    努力すれば全員生きて帰れるんだったらワルキューレも死神も暇でしょうし、戦死者なんていう言葉は無いでしょうね。
    武衛様は傀儡でしたので戦など出来ないと仰せになり、信秀公は昔から戦上手で器用の仁でしたが、それでも戦で得られるものは僅かしかなかったですからね。
    実際稀代の器用の仁でも美濃大垣と西三河の安祥くらいしか手に入りませんでしたし。
    一馬は戦そのものを好みませんからね。
    米や銭は失っても取り戻せますが、人命は失っては元には戻りませんからそれを守るために戦を嫌がるんですよね。

    「これがまことの戦なら降伏するところだ。家を残さねばならぬ。されどこれは初陣だ。勝てぬのであろう。されど、武士として陣地を守り最後まで戦おう」

    久遠の陣は堅固に見えませんが、こちらが攻めにくいようにしていますからね。
    あそこを個々の力量で劣る初陣組が攻めても、先ほどの先手合わせと同じ事になり二の舞になりますから、だったらこちらの陣に引き込むしかないですよね。

    「味方でよかったであろう? それに内匠頭が自ら我らに差配を見せるなど、滅多にあることではない。存分に学ばせてもらおうぞ」

    「ははっ!」

    若武衛様の理路整然とした鼓舞激励でなんとか士気だけは持ち直しましたか。
    アーシャに学校で教わった事が大いに役に立ちましたね。
    学校で人とはいかなるものかよく教えてもらいましたからね。
    最後にモノを言うのは人としての力量なのだと教えを受けていますから指揮官として向いていますね。
    少なくとも銀〇伝の高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変な、行き当たりばったりのフォー〇・ドクトリンよりも。
    面目は別によく、ただ、後悔だけはしないようにしたい。
    それだけですが、人間はそれが一番難しいんですよね。
    人生とは決断と後悔の連続ですからね。
    一将功成りて万骨枯るという事を忘れなければ良い指揮官になれるでしょうね。

    長くなりましたが次回も楽しみにしています。
    では!

  • 誤字報告です。
    とはいえ、それだで勝てるほど、久遠は甘くないわ。
    →それだ(け)で勝てるほど、

    作者からの返信

    誤字報告ありがとうございます。
    修正しました。