第459話 oracle

愛紗と菜由は、一旦お部屋に戻って。

のんびりしてから、また、お風呂に行こうかな、なんて・・・。


菜由は、テレビをなんとなく点けて。



ニュース。皇族の娘が、結婚相手・・・・に、あまり好ましくないとか、なんとか。



菜由は「くだらないなあ」と、他の局に切り替えた。



結婚のハナシは、愛紗が・・・ちょっと嫌かな、と思ったし



旅の一日なのに、そんな下世話なことを見聞きしたくない、とも(^^)。




愛紗は、そのニュース見て「親から見ると、ああなのかな」とも思った。


せっかく、育てたのに。



国のお金で育てたんだから、ヘンな男と結婚して欲しくないし

ヘンな家に嫁いでいかないで。


と言う、回りのひとたち。


愛紗も、税金払ってるからなあ(笑)。



結婚するだけで何億円も国が払う・・

でもその娘は、それは要らないと辞退する・・・なんてコトを言ってるのを見て。




「わたしの親もそうなのかなぁ」なんて・・・・ちょっとは、親の気持にもなったりも(^^)。


愛紗自身も、その娘と同じなんじゃないか?と。


ワケもなにもないのに、自分の意志を貫こうとする・・・のは。




面白いものだ、旅と言うものは。


何気なく見聞きしたもので、感じる事もある。



愛紗の親は・・・・・そういう気持なのかな・・・・?と、思って

すこし反省の愛紗。




逃げてばかりじゃ、ダメだったのかな。わがまま、なのかな?




ふと、そんなふうに、思う。




でもまあ、だからと言って・・・親元に戻ろうとは思わない(^^)。けど。

話しくらいはしてもいいかと思った。


「弘前機関区に入れたら話そう」なんて・・・・・夢半分、希望半分。



機関区の仕事って、どんなんだろうな、なんて。

夢見てる間は、楽しい。





「ちょっと、デンワしてくる」と、愛紗は菜由に言って

部屋の外、どこか、静かなところで・・・・と。


マホガニーの重厚なドアを引いて。

浴衣に羽織。旅人スタイルで4階の回廊に出た。


回廊から外を見ると、遠くに水分峠が見えて。


「あの山をトンネルでくぐってきたんだな」と、愛紗は思った。




エレベータ・ホールのとこまで来て「さて、どこでデンワしようかな」と思ったけど

静かだから、どこでも良さそうなものだけど・・・。でも広いので

あちこちに響いて、迷惑かな?


なんて思ってたら、エレベータの扉が開いて


「あ」



にっこり。



理沙が、同じ羽織に浴衣で。



愛紗もにっこり。



「乗務、おつかれさまでした」と。




理沙は「なんか、面白いね。同じ職種だから、かな。同僚みたいね」と。


制服を着ていないと、違う人みたいにたおやかに見える。



愛紗も、なんとなく「そういえばヘンかも」と言って、笑った。



そして「すみません、お休みなのに」と。



理沙は、もともと焼肉を食べに(笑)と、友里恵が誘ったのに

食べられずに。


結局何しに来たか解らなくなった・・・と、愛紗は思っていて。




理沙は「いいの。いつでも食べられるし、わたしは。地元だもん。

大分のスーパーでも売ってるし、お肉は」



愛紗は「ああ、そうですね、そういえば。」



理沙「うん。なんとなく、みんなと一緒で居るのが楽しくて。

それに・・・愛紗さん、国鉄に入れば私の後輩になるんだし」



愛紗「入れれば」と、笑顔になって。



エレベータ・ホールで立ち話もなんだから、と



愛紗は407号室に戻りながら。




理沙は「入れるよ。庫内手ってアルバイトだもん。そこから機関士になるのは

運半分だけど」と、ホントのことを言った。



理沙自身だって、偶々、奥羽本線の無煙化、みたいなタイミングだったし

人手が足りない機関区だったから。



愛紗は「そうですね」と、矛盾しているようだけど・・・・。

リクツではなくて。



理沙は「運転がしたい。と言っても、なれる人は一握りなんだね」

と、現実を言った。


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