第417話 豊後森ゆきキハ31

車掌・洋子は

編成最後尾の車掌室の窓を開けて・・・「停止位置、よし!」と

ホームの停止位置マークを指差す。これは1本指でいい。


なぜ、宙にあるものを指すときに2本指でするか?


これは、神経質な人が「指差された」と、気にする(^^;と言うところから。


・・・うしろゆびさされたくない隊(^^)が、いるとのこと。

公共の仕事もなかなか、大変なものである。



地面なら問題ない、と言うワケ。



腕時計をちら、と見て「定時!」


5秒は誤差範囲である。



車掌室と、デッキの隔壁にあるドア・スイッチを上げる。


半身は、開けた車掌室ドアからホームに出て。「ドア、開!」



編成のドア・エンジンの空気が抜け


ぷしゅー・・・・。

折り戸が、ぱか、と開く。


赤い、ドア・ランプが編成の窓の上にあり、一斉に赤く点灯する。

ある種壮観。




それからは、無人駅なら忙しいが恵良駅には駅員さんがいるので、おまかせ。


そうでないときは、降りる乗客から切符を回収しなくてはならない。

その為に、もうひとり。文子が乗務しているワケ。



改札口のところに行って、回収する事も多い。

が、タウンシャトルはふつう、定期の旅客であるので

そんなに忙しいこともない。





友里恵たちの乗った、豊後森ゆきキハ31、単行は


♪ぴんぽーん♪



優しげなお姉さんの声で・・・


ーご乗車ありがとうございました、間もなく終点、豊後森です。ホーム側のすべての

ドアから下りられます。

引き続き、大分方面にお越しのお客様は、そのままお待ちください。この列車が

大分まで参りますーーー




と。



友里恵は「良かったぁ」



由香「ホント」


パティは「ナニがデスカ?」



友里恵「何時間も待つのかと・・・・」



由香「わたしまーつーわー」


友里恵は吹き出し「にあわねー」


由香「うるさい。ギャグだ」



友里恵「わかってるって」


由香「なら言うな」


パティ「ハハハ」



由香「だいたい「わ」なんていわないよな」


友里恵「そーだねぇ。愛紗でさえ言わないよ」



パティ「愛紗は言っても平気っぽい」




由香「あたしは言ったらヘンかい」


パティ「大丈夫」


由香「待つわ」


友里恵「ハハハ!」と、のた打ち回って笑っている。



パティ「そんなに面白い?」



友里恵「だーってさぁ、あの顔で


「わ」


だとか」




由香「レンタカーじゃないんだから」




友里恵「ああ、わナンバーね」



パティ「ナンデスカそれ」



由香「レンタカーってね、みんな 「わ」 ナンバーなんだって。


わ、たしのじゃありませんナンバー」



友里恵「おー物知り!」



由香「茶化すなよ」



友里恵「ハハハ」




かたたん・かたたん・・・キハ31は、ポイントを渡って2番線ホームへ。

駅舎側の1番線は、優等列車が高速で走り抜けられるように、と

ポイントが真っ直ぐ。



2番の方は、曲線に沿って車両が曲がるので

ゆっくり走る。



しゅーー・・・・屋根にある排気管から

排気・リターダーブレーキの作動音。

排気が漏れている音。



車両は、ゆっくりゆっくり。


ホームに近づく。



運転士さんは「ホーム、注意!」


ブレーキ・ハンドルを戻しながら。

空気ブレーキは、ちょっと利きすぎても、割と、戻しが難しく

満員の時だと丁度いいけど、この時のように

カラに近い時は、停まる時に揺れ戻しが出たりする。


人が、何人か。


「タウンシャトル」に乗れなかった人とか。

ダイヤをそんなに気にしていない、路線バスの接続とかも多い地方である。

豊後森を頂点にして、日田・久留米方面か

大分・由布院方面に列車の往来は2分される。

どういう訳か、どの地域でもそういう傾向がある。




ブレーキ・ノッチ1。


ディスク・プレートをパッドが挟む構造は自動車と同じだが

ハイドロリック・オーバー・エア式であるので、効き過ぎる。


ふつう、自動車では真空、つまり1気圧(101525pa )しか、圧力が出ないが

空気圧式の場合は、幾らでも加圧できる。

と言っても数kg/m2程度である。


空気は伸縮するので、戻しても伸びてしまうから・・・思ったほどには緩まないと言う

面白い特性がある。


それでも空気を使うのは、簡単に入手でき、補充が楽だからである。




停止位置が近づく。


ほとんど、ブレーキノッチを解放。また、1.


それで、こういうブレーキ扱いをすると楽だが・・・試験では減点(笑)である。


これは試験ではないので、OK。



停止位置、よし!。





▽の前に停まる。



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