第412話 ごまたん

機関士・理沙が空想する電気機関車の運転台で

「お兄ちゃん」は、ブレーキハンドルを握っていた。


朝、鹿児島本線を下っていて踏み切り支障に出遭い

その書類作成などで、時間を取ってしまった。


「まあ、それも勤務時間になるからいいけど」


とか言いながら、でも、休憩時間がほとんど無くなってしまって

上りの貨物列車を率いているED76-95。


その、青いシートに座り。

緑色の計器盤を眺めながら巡航中。


左上が取り込み電圧。真ん中が1モータ電流、右が4モータ。

左下は架線電圧。20kvを示している。隣が空気圧、右が元空気圧。


計器盤の上は警告灯類で、赤いランプが点く。日本語で「空気ばね」「変速」などと

書かれている辺りが可愛らしいと、お兄ちゃんは思う。


進段指示もここに表示される。自動進段ではない辺りが「機関士」所以。


進段すると、モータ電流計がぴょん、と上がり

速度が上がると、下がっていく。1モータ・4モータで差があれば

車輪が滑っている訳で、砂撒きが必要である。

滑ると、まあ音がするので解るが。



目前、四角い窓。向かって左手に速度計。75を示している。


レールが窓の下、真っ直ぐに。砕石、枕木が流れている。


真ん中に赤い非常停止ボタン。


右手には、主幹制御器。大きなバーニア・スタイルで

歯車のラッチがついており、ストッパーを握って操作するハンドルは

銀色に光っている。


その下がパンタグラフ・ハンドル、遮断器である。今は右、通電位置。

更に下が逆転機。今は左、前進位置だ。



更に右、防護無線がついている。


左手上は機関車単弁、ブレーキである。

その下が編成弁。


計器盤の下に赤いレバー、警笛である。


背中でブロアーが音を立てて回っている。変圧器・整流器を冷やす空冷ファンである。

ACを、一旦脈流にしてからDCモータを回すのであるが、トランスの中間タップを沢山出し


、それをサイリスタで整流する訳だ。


もう少し時代が進むと、そのサイリスタでスイッチングさせ、サイリスタ・チョッパ制御

になるのだが


機関車では、あくまでも堅牢性重視である。



その後、電子制御・インバータになるのであるが

インバータ車両、その半導体の製造が終わると走れない。


ICなどはそうである。


故に、インバータ車両は比較的寿命が短い。





「閉塞、進行!」

信号指示。

線路沿いに立っている信号は、青である。



左手で確認、指差し呼称。



モータ電流は小さい。ノッチは戻し位置から4段目。



均衡速度。



一安心である。



「踏み切りがないといいなぁ」なんて・・・長身のお兄ちゃんは

狭い運転席に座って、そう思う。








その頃・・・・南阿蘇村の、三芳ららちゃんのお家のそば。

畑の近くの道を歩いている、なおなおちゃん。と、ららちゃん。


大きな木が、青々と茂っている。風がさわやか。


なおなおちゃんは「毎日ハイキングだねー」と、にこにこ。


畑には、麦がそよいでいる。「ねこじゃらしみたい」と。



ららちゃんは「ごまたん、待ってるかなー」


なおなおちゃんは「寝っころがってるんじゃない?」と、にこにこ。



ららちゃん「うん、お家に着くとね、玄関で待ってる、ちゃーんと、お座りして」



なおなおちゃんは「わかるんだねー。ニャンコって、おミミがいいのかな」


ららちゃんは、おミミの手まねをして「とんがってるからー?」



なおなおちゃんは「そっかも」と、笑って。


三芳家の周りに生えている生垣の回りを歩いて。

お家についた。



ららちゃんは「ただいまー」と。格子の引き戸を開ける。


からから・・・・。



あがりかまちに、ごまたんは。ちゃーんと、お座りしてて「・・・・・」

ちょっと眠そう(^^)。




なおなおちゃんは「わーい、ごまたんだー」と、抱き上げようとすると

ごまたんは、す、とよけて。


ららちゃんは「あらら。暑いのかな」(^^)


なおなおちゃん「そっかもね」(^^)

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