第383話 回9002列車、日田、定発!

由香が「じゃ、行くか」と。


起き上がって。




愛紗は「どこへ?」


ハテナ顔(笑)。ちょっとおとぼけフェース。






由香「ビール園、ビール園」


まんがみたいな顔をして。




菜由は「また飲むのかー?」と、笑う。






パティは「そうですねー。由香と友里恵は、初めてでしょ?」


大柄なので、日本の客車は狭そう。


まっすぐ立つと、頭が危ない(^^)し


通路を歩くと、ぶつかりそう。






由香「ジャ、降りよう!」と、席を立って。


軽快である。ふつうの日本人の女の子のなかでは


大きい方だけど。






開いていたドアから、1番線ホームへ。










友里恵は「あれ?起きて大丈夫?」


ちょっと心配そうに、顔色を見て。






由香は、まーだ酔っ払ってるみたいだけど


顔色はいい




「ああ、もう平気。遊ぼうよ、せっかく来たし」






友里恵は「なーゆは?」




菜由は「あたしも平気」






由香「でもさ、ニンシンしてたらまずいね」






菜由は「まさか」










友里恵「そーだよぉ、酒のむと赤ちゃんがバカになるって」




由香「友里恵みたいにな」






友里恵「ハハハ」






由香「笑ってていいのか?」




友里恵「いいともー!」






パティは「ダメダコリャ」






由香は「そこだけアメリカジンになーるな」






パティ「ハハハ」








愛紗は「じゃ、どうする?菜由は」






菜由は、少し考えて「そだね・・・あたしは何度か見てるから。みんな、行ってきて」






愛紗は「じゃ、私も・・、あ、でも、日田の道案内が・・・」




パティは「オマカセクダサーイ」






由香「急にアメリカジンになるなってば」






パティ「なんか、お約束でしょ?金髪の、カタコトの女の子。グラマーでかわいくて」






由香「自分で言うなって」




パティ「ハハハ」




友里恵「よし!ホンジャ、初めてのおつかーい・・・じゃないか」






由香「ぴーひゃらぴー」




友里恵「それ違うよ。歌ってるのは同じ人だけど」






パティ「そーだっけかなぁ」






理沙は「じゃ、時間になったら出るね。ホームの案内ないから気をつけてね。回送だから」




愛紗は「はい。」






菜由は「お願いします」






まだ、ちょっと具合悪そう。










友里恵「それじゃ、あたしらは、遊ぼう?」






由香「そだね」






パティ「じゃ、後で・・・・・豊後森駅で追いつくかなあ。わかんないけど」








理沙は、微笑んで機関車に乗った。






ランボードに、はしごステップに足を掛けて、2段。




機関室に乗り込む。






出発信号機は既に青であるので警報は鳴らない。


ボンネットの短い方、左運転席。


さっきと逆である。




編成ブレーキは最大位置なので、機関車単弁を最大位置にし


編成ブレーキを0。






しゅー。




もう一度、確認。




しゅ。






こうしないと、空気管に残っていた圧で


一部、ブレーキシリンダが広がる可能性がある。






「回9002列車機関士、こちら指令」




列車無線が入る。






理沙は、返答する。「回9002列車機関士です、どうぞ」






指令は「信号現示、定刻発車よし」




理沙「回9002列車機関士、了解」














客車では・・・




理沙が編成ブレーキを緩めた時、ゆらり、と揺れた。




菜由は「あー、まだ酔っ払ってるのかと思った」


冗談半分。リクライニングしない向かい合わせボックスシートに


少し、仰ぎ気味に。






愛紗は「赤ちゃん、いないよね」




と、心配そう。






きちんと、シートの背ずりに合わせて座っている。








菜由は「だいじょーぶだよ。ここんとこ忙しいし。仕込んでないし。」






愛紗は、その生々しい言い方にちょっと、恥ずかしさを感じる。




でも、平静を装って「そお」と、だけ言った。








いくつになっても、恥ずかしい。


それは、乙女でなくなったってそうだと思う・・・・愛紗であった。





















運転席の理沙は、懐中時計、計器盤の真ん中に置いてあるそれを見て。




秒針が12時の位置になるのを待っている。






客車、車掌室では洋子が、同じく・・。腕時計を見て。






30秒前に、列車無線で「回9002列車機関士、こちら回9002列車車掌」






返答を待つ。






理沙が返答する。




「回9002列車機関士です、車掌どうぞ」






15秒前。








洋子は、腕時計を見て・・・・秒針が12時方向になった時




「回9002列車、発車!」








理沙も「回9002列車、発車!」






フォーンを鳴らす。






ふぃー・・・・。






ちょっと音が高い、淋しげな響き。






理沙は、出発信号機を確認。「出発、進行!」






逆転機レバーを左に。




ぐ、と・・・トルク・コンバータに油圧が掛かる。






機関車単弁を緩めた。




しゅー、しゅ。








編成は、ゆら、と・・・・動き始めた。








マスター・コントローラを1。




2.


3。




4.






速度が、増して行く。






45、と言う表示が見える。








理沙は、左手、人差し指と中指で確認。「制限、45!」






編成が軽い。






すぐに、ノッチ0に戻す。






ディーゼル・エンジンはスロットルが無いので


燃料の量を加減しているわけだ。












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