第357話 Y-DC125

ツー、と・・電話の呼び出し音みたいなブザーが鳴って。

運転士さんが、バスとよく似たドア・スイッチを倒して

ドアを閉じる。


ワンマン運転なのだ。



出発、進行!


青信号。

3番線から、黄色いディーゼルカーは、豊後森に向かって走り出す。


録音の音声が「この車両は、豊後森ゆきです」と

やさしい女の人の声で、アナウンス。



友里恵は「そういえば、各駅停車ってはじめて?」


由香は「湯前線乗った」



友里恵は「ああ、そうか・・・まゆまゆちゃん、どうしてるかなー」



由香は「元気してんじゃない」






その、まゆまゆちゃんは・・・・

熊本で1行路メを終わり

ちょっと休憩。



車掌区の電話で。


「お兄ちゃん、どうしてるかな」と・・・機関区に電話してみると・・・。




「はい、機関区ー。ああ、真由美ちゃん。お兄ちゃんねー。踏み切り支障で遅れてるね。

鹿児島についたところみたい」




と、区長のんびり。



まゆまゆちゃんは「事故ですか?」



区長は「いやいや、支障。なんか、踏み切りにあったんでしょう。

なんともないよ、着いたんだから」



でも、なんとなく・・・まゆまゆちゃんはそーぞーしちゃったり。




踏み切りにでっかい岩(^^)が落ちてきて


機関車に当たったり。



大きなトラックが、ガーン。



神に祈るのみ。



「ああ、神様ー。お兄ちゃんをお守りください。そのためなら

この身を捧げます。一生。神様にお仕え致します」



と・・・・。ソーゾーでは

グレーの修道服を着て。ひざまづいて、お祈り。



車掌区で。制服のまま。お祈り。



「なにしてんの?」と・・・・・。通りかかったのは板倉裕子車掌(笑)。








友里恵たちが乗った、黄色いディーゼルカーは

がらがらがら・・・と

軽快なエンジンを回して。

長閑な由布院の町を走り出す。


ゆらゆら。

空気バネに乗った車体を揺らしながら、左カーブ。


ちょっと走り出すと、もう、ギアは固定1段。


がっこん。


すこし、前に飛び出すようにギアが変わる。


友里恵が理沙に「いま、何したの?」



理沙は「うん。ギアを固定にしたの。クルマで言う、ロックアップね」


友里恵「ふーん。力有るんだね。あたしのクルマなら、ロックアップって

あんまり入らない」


ふたりは、運転席の後ろにある硝子窓から、前を見ながら。



前方、よし!



理沙は「そう。ディーゼルエンジンは力があるから。この車両は250psね。

低い回転から出るの」




友里恵は「すごい力だね」



理沙は「うん。今の回転くらいでも出てるんじゃないかな、250ps」



固定2段にギアが変わる。今度はすんなりと変わる。




友里恵は「今は?なにしたの?」




理沙は「うん。ギアを2段目にしたの」



友里恵は「ロックアップが2段あるの?」



理沙は「そう。低速で力があるけど、回転を上げないように」




友里恵は「あたしのクルマとだいぶ違うね」




カーブの途中にある、踏み切りを過ぎる。



ベルの音が、かんかんかん・・・・・・と。


通り過ぎていく。



右手に、小学校が見える。




小川の上を、鉄橋で渡り・・・・。



ごーぉ



と、鉄橋に音が響いた。




小川に、鴨ちゃんが、ぷかぷか。



友里恵は「あ、鴨ちゃん。いっぱい」




理沙もにこにこ「かわいいね」




小川を過ぎると、緩い左カーブから、直線。


右側に道路があって。自動車が走っている。


速度は、同じくらい。




並木道。


鉄道の左右にも、高い木があって。



向かい合わせのシートに座っている、愛紗は「いい景色ね」



パティは「ハイ。よくポスターになるんです。

「ゆふいんの森」

と。ここ」



菜由は「綺麗な場所だものね」



遠くに、丘が見えて。

のどかな田園の風景が広がっている。


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