第189話 7236D ,出発、進行! 人吉、定時!
「猫ふんじゃった、ね、タマちゃんが軽井沢のホテルで弾いたんだって。」と、友里絵。にこに
こしながら。
由香「それで?」
友里絵「うけたんだけど、次の朝、ピアノにメモが置いてあって・・・。
「猫ふんじゃったは弾かないで下さい」
」
菜由「ははは。」
由香「ホテルじゃなー。」
友里絵「なんでも、皇太子様が・・と言うと、今の天皇陛下かな?が
泊まった場所なんだとか。」
真由美ちゃんは、にっこり「すごいところにお泊まりなんですね。」
友里絵「そういえば、そうかも。いままで気づかなかったけど。」
由香「ホント。そーいうとこに居そうだもんね。」
愛紗は思う。・・・確かに・・・。
実際、どういう人なのかまったく知らないのだった。
先輩の女子ドライバー、美和の話しでは
「すごい大学を出ているんだって」との事であるが・・・
美和の母は大学の職員である。
それで、どこかで調べたのかもしれないけれど
タマちゃん本人は「そんなことないですよー」との事(^^)。
列車の運転士は、ベテランのようで
白髪交じりの短髪、日焼けの顔、眼鏡。
年季の入った制帽を被っている。
発車が近くなり、駅の方から歩いてきた。
真由美ちゃんを見かけて、左手を上げて挨拶。
真由美ちゃんも、お辞儀。
「知ってる人?」と、友里絵。
真由美ちゃんは「はい。よく列車で会います」
運転士は、運転室ドアを開けて
ブレーキ・ハンドルに鍵を挿して。ハンドルを手前に引いた。
常用最大位置である。
そろそろ出発なのだろう。
車内に、録音の女声アナウンスが流れる。
♪ぴんぽん♪ と、チャイムの音。
ーーーこの列車は、湯前ゆきですーーー。
と、のんびりした声。
ローカル線なので、運賃箱と料金表があるのは
バスと同じ。
レールバス、なんて言う言い方もある単行車両。
ギアをつながずに、運転士さんがノッチを進めると
エンジンの回転だけ上がる。
この辺りが、バスによく似ている。
「この路線も、車掌を目指すなら、乗務する事になりますね」と、真由美ちゃん。
菜由は「今は、車掌さんじゃないの?」
「はい、車掌補になります」と、真由美ちゃん。
愛紗は「いろいろあるわね。乗客案内掛とか。」
真由美ちゃんは「はい。だんだん、経験を積んでいって試験を受けます。」
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乗務員のみならず、全てが経験を要する職種で
乗客案内掛=>車掌補=>車掌=>専務車掌
と、なるように、いろいろある車掌職でした。
もともと、国鉄と郵便は
過疎地域への雇用促進が主目的だったので
農業や、漁業のような仕事とは違う職種の
地方への展開のため、だったので
こういう仕組みを取っていて。
採算、と言うよりは
お互いの助け合い、と言う意味合いが強いものであった。
簡単に言うと、都会で儲けたお金を分配して地方に分けると言う
税に似たようなもので運営を考えていた。
それは、今でもそうで
例えばJRは、東海道新幹線の利益を他各社に分配している。
他社は、それがないと採算割れになったりもする。
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運転士さんがマイクで「湯前ゆき、発車します」と、シンプルなアナウンス。
駅の案内放送は、聞こえなかったようだった。
運転士さんが、ホームの乗降確認をして、ドア・スイッチを下げた。
「面白いね」と、由香。
「ワンマンバスみたい」と、友里絵。
真由美ちゃんは「特急でも一部ありますね。私達が検札はしますが、車掌業務は
しない列車」
菜由「そういうのがあるの」
「はい、2両の、平日の昼間の列車などはそういうものもあります。
ワゴンサービスはあるんですけど」と、真由美ちゃんはにこにこ。
13時15分。列車の発車時刻である。
ドアを閉じた運転士は、出発信号機を確認。
出発、進行!
ギア、変速段に入れて。
ブレーキ・ハンドルを緩める。
ちょっと、車両が動き出す。
ノッチを進める。
がらがらがら・・・と言うエンジン音が少し高くなり
ゆっくりゆっくり。
ディーゼル・カーは
走り出す。
ゆらゆら、と・・・空気バネなので
ふんわり、ふんわり。
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