第187話 猫ふんじゃった
かわいい子を守ってあげたい、かわいいままでいさせてあげたい。
そういう気持って、誰にでもある。
女同士だと、可愛がるだけでいられるから
いいな。
そんなふうに、友里絵は思ったりした。
めいめいに、好きなおかず。
友里絵は、お稲荷さんとのり巻きとか。
「それでメシも食うのか」と、由香。
「うん」と、友里絵。
「よく食うなー。その割に背、伸びないな」と、由香。
「横に伸びてんの」と、友里絵。
みんな、笑う。
「エルさいずのハラ」と、友里絵。
「それは、あたし」と、菜由。
愛紗は「あたしも・・・」と。
真由美ちゃんは「日生さんって、宝塚みたいなお名前」
愛紗は「そう?」
真由美ちゃん「ひらがなにすると。日生あいしゃ、さん」
菜由「それでは、新作「エルさいずのハラ」でーす!」
由香「ジュテーム、オスカル!」
友里絵「雄狩るのか。やっぱしなー。」
ははは、と、みんな笑う。
菜由「でもさ、愛紗が男役だと結構似合うかも。背高いし」
実際、愛紗はみんなより、頭ひとつ高い。
そのあたりが、男子にはいまひとつ人気が無かった理由でもある(^^;
「うん、学園祭でやった」と、愛紗。
「わー、見てみたかった。写真ありますか?」と、真由美ちゃん。
愛紗「あるけど、恥ずかしいな」と、にこにこ。
友里絵「なに演ったの?」
愛紗「えーと、定番の。ロミオとジュリエットとか」
「かっこよかったでしょうねー」と、真由美ちゃん。にこにこ。
菜由「普段、娘役っぽいもんね、愛紗」
由香「ギャップ萌えか」
友里絵「なので、愛紗をPRポスターに、とか。国鉄さんが」
真由美ちゃんは「国鉄ですか?お仕事」
菜由「あ、それはね。指宿で。国鉄の人と一緒になって。
こっちに来るなら国鉄においで、って。
楽しい空想」
真由美ちゃんは「いいですね、そうなったら。わたしも楽しみ。」
とか、お昼を頂きながら。
上品な話題なので・・・・・友里絵は割りと静か(笑)。
「いつも、真由美ちゃんは人吉から、吉松の乗務が多いの?」と、愛紗。
真由美ちゃんは、うなづいて「はい。だいたい・・・・まだ始めたばかりですし。
時々、熊本、鹿児島へ行って帰ってきたり。そのくらいです。
だんだん、長い乗務になるそうです。」
湯前線が13時15分なので、それに合わせてご飯を食べ終えて。
なんとなくダイヤに合わせる習慣の5人。職業的(^^)。
ごちそうさまでしたー、と、5人でごあいさつ。
食堂のおばさんは、にこにこ「あいよ、ありがとうね。またおいで」
線路沿いを歩いていると、まだ、枕木に石炭がらが落ちた後があったり。
電信柱が黒く煤けている。
そのあたりを、愛紗や菜由は懐かしい、と思う。
真由美ちゃんは「そうですか。愛紗さんの伯父様が国鉄ですか。
わたしもそうです」
愛紗は「割と多いですね。親類筋で入るの」
真由美ちゃん「人吉は、のんびりしていますし。高校からだと就職枠があるので
希望優先ですね。」
由香「ああ、なんかあったっけ。パン食い競争みたいな」
友里絵「そうなの?」
由香「友里絵はしらないからなー。」
友里絵「まあ、ね。中退ー>専門校だもん」
真由美ちゃん「専門はどちらですか?」
友里絵「あ、あの。ペットトリマーと看護師。大したもんじゃないけど」
真由美ちゃん「すごいんですねー。この街にもありますけど、美的センスが
難しいと聞きます」
由香「まあ、犬に対してのね。本人はあんまり美的じゃないけどね」
友里絵「悪かったな」
由香「別に」
みんな、ははは、と笑う。
駅に戻ってきた。
さっきは気づかなかったけど、すみっこに電子ピアノが置いてある。
「駅ピアノか」と、由香。
「えー、おほん」と、友里絵がピアノの前に座る。
「え?」と、菜由。
友里絵は、真面目な顔でピアノの蓋を開けて
鍵盤を。
♪ねこふんじゃった♪。
駅員さんも笑っていた。
キヨスクのおばさんも。
「やっぱお笑いか」と、由香。
菜由「そうなるだろうと思った」
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