第160話 リチャード・キンブル

部屋に入る。「こんばんはー。」と、友里絵。


「誰もいないって。」と、由香。



「返事したら怖いよ」と、菜由。



「はやく、にんげんになりたーい」と、友里絵。


「おまえはみかんだ、腐ったみかん!」と、由香。


「懐かしいな」と、菜由。




「腐ったまん・・・・」と友里絵。



由香は友里絵の口を塞いで「あ、いいのか、誰もいないから、じゃ、どーぞ」




友里絵「いいたくなーい」



由香「ひねくれボー。」


友里絵「棒はひねくれてた方がいーのよ」



菜由「ははは」



友里絵「石川さんのはひねくれてる?」



菜由「知らないよ、そんなこと」



由香「やーめろって、そういうネタは。追放されるぞ、業界から」


友里絵「何の業界?」



由香「あ、そっか。ははは」




菜由「愛紗、良かったね。道がひとつ拓けて。」


愛紗「うん。でも・・・・九州で就職したらさ。親に見つかっちゃうよ。」



友里絵「そだね。でも、伯母さんも言ってたけど。そのうち諦めるよ。」


由香「元々諦められてるあんたはいいね」



友里絵「ははは」


由香「笑ってていいのか」



友里絵「いいともー!」



由香「だーめだこりゃ」




友里絵「でも、なんかかっこいいかも。追っ手から逃げる正義の人。」



由香「逃亡者かい」



友里絵「リチャード・キンブル。職業、医師。」と、腰を振る。


由香「オマエが振っても金ないだろ」



友里絵「リチャード・無いぶる」



菜由「おーあぶない。何言うかと思った。」


由香「生放送禁止だな」



友里絵「生はいやーん」



由香「それだけなら大丈夫か」




愛紗は、楽しそうに聞いている。



友里絵「あ、引いちゃった?」


愛紗「ううん、いいの。その方が。楽しいもの」




友里絵「そっか、じゃ・・・。」


由香「もいっかい風呂行って寝るかな」



友里絵「あたしもいくー。」


由香「んじゃ、いっしょにいこ」



友里絵「イクときはいっしょよ」



由香「カタカナにすんな!」と、ひっぱたく。



ははは、と。

タオルもって友里絵と由香。305を出て行く。



菜由「明るいな、ほんと」


愛紗「ほんと」と、笑った。



菜由「でもさーぁ、みんな国鉄に入ったとしても、仕事が違えば

たまにしか会えないんじゃない?」



愛紗「そうね。それはバスでも同じだけど。」



菜由「家になんていうか、ね。」



愛紗「そう、それに・・・友里絵ちゃんたちがわたしに気を使って

こっちに越してくれるんじゃ、悪いじゃない。」




菜由「それはそうだけど・・・大岡山だってガイドは契約社員にしちゃうって

話だし。

いつまでも続かないよね。それに、ガイドの仕事だって。

国鉄の方が条件良さそうだよね。

友里絵ちゃんたちだって、大岡山でドライバーになったら

何があるか解らないもの」




愛紗「そう・・・だね。」


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