第96話 つばめ560号 西鹿児島ゆき

乗換え15分。とは言うものの

その間に切符を発券して来ないとならない。


インターネットから予約しても、2人以上だと

紙の切符にしないとならないので


(現在は、人数分のICカードでも乗れる路線もありますが)



愛紗は、さっき聞いた券売機の所に行ったが・・・・。


日曜とあって、結構人が並んでいる。



「やばいな」と、由香。


「ほかにはないのかな」と、友里絵。


「改札の外だと・・・往復の時間を考えると、待ってた方が。・・それか

みどりの窓口は?」と、菜由。



「とりあえず、並ぼう」と、愛紗。


券売機が2つあるものの、4人づつ並んでいて。



手際のいい人ならいいけれど、そうでない人の後だと

かえって遅かったり。


「よし!」と、友里絵は

愛紗の隣の券売機に並んだ。



「そっか」と、由香は合点した。



早く進んだ方で操作すればいい。




「ちょっとまずいかな」と思ったりもしたが。


菜由は行列の外で、愛紗のバッグを持って。


ひとり、ふたり。


券を持って、離れていく。


割と、スムースなのはビジネスマン風。

だけれども、インターネット予約を知らないらしく


ひとりなら、IC乗車が出来る事を教えてあげたくなった

友里絵である。



友里絵の前にいる、銀髪のおばさんは

指定券を買おうとしているのだけれども、席の選択に時間を費やして

中々、進まない。



友里絵は、ちょっと焦って。



焦ることないんだけれども。



そのおばさんの後ろから「どれに乗りますか?」



おばさんは、ちょっとびっくりして「ええと・・・・窓際の禁煙席がいいわ」


友里絵は「海側がいいですか?、ドアのそば?」と。



このあたりの気遣いは、バスガイドである。






おばさんはにっこり「ありがとう。真ん中辺りでいいわ。海側の」




友里絵は、検索画面で禁煙席を選択し、席次表を開く。



「エレベータに近い方?」と、友里絵は聞く。



おばさんは「急がないから、端っこの車両がいいわ。静かだし」




と、友里絵は8号車の中ほどを見た。



2列×2なので、席数は少ないが


7番が開いていて。


「ここでいい?」と、友里絵。



おばさんは頷く。「はい。」




画面にタッチして。


券売機がアナウンス。「現金か、カードを入れてください」



おばさんは「ありがとう」と、にっこり。




愛紗は、その間にもう指定券を出していた(笑)




「なーんだ、呼んでくれればいいのに」と、友里絵。




愛紗はかぶりを振る。「途中じゃ、悪いし。」



「じゃ、急ごう!」と、友里絵。



由香は駅の時計を見上げ「5分あるから大丈夫だよ」


時間をいつも把握するのは、バスガイドの仕事柄である。

出発時刻や、降車観光の時間、食事や、お菓子や飲み物などを配る時間、などなど。


いろいろ、手順を考えたりする。




「そっか」と、友里絵。


さっきの銀髪のおばさんが、券を手にして「ありがとうね、お嬢さん」とにこにこ。




「どちらに行かれます?」と、友里絵。



おばさんは「鹿児島」



「あたしたちもそう!、じゃ、一緒に行きましょうか。」と、友里絵。




おばさんはにこにこ「はい、じゃ、ご一緒させてくださいな」



ゆっくり、ゆっくり歩く。


乗換え改札を通っていたら、駅のアナウンスが入る。



♪ ~ 


軽快なチャイム。


明るい女声で「つぎの、新幹線、西鹿児島ゆきは、7番乗り場です。

まもなく、到着します。」



「あ、来るって。」と、愛紗は

エレベータが丁度来たので、ボタンを押して待っていて。



おばさんが乗る。ほかの乗客もいるので


「わたしたちはエスカレータで行きます」と、菜由。



おばさんは、にこにこ。手を振って。


エレベータの硝子扉が閉じる。





「さ、あたしらも!」と、友里絵。


すこし先にあるエスカレータに向かって歩いていると、列車が入ってきて

重々しい響きが頭上に伝わる。





どどん・・・どどん・・・。


西鹿児島ゆき、つばめ560号である。




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