第92話 旅

森林鉄道のような雰囲気だった久大本線も

久留米に近づくと、ふつうのローカル線。


ただ、単線で

電車ではないので架線がないと言う辺りが

閑散路線を思わせる。


「ゆふいんの森」も、ちょっと恥かしそうに見えるような

都市近郊。



「あーあ、終わっちゃった」と、友里絵が言う。


由香は「いい列車だったね」




乗るときに会ったCAさんが歩いてきて「そろそろ、久留米ですね」



友里絵は「ありがとう。教えてくれて。」



愛紗は「夜行列車の車掌さんみたいですね」



CAは、笑顔で「はい。特にキマリがある訳ではないのですけど・・・

区間乗車される方は、乗り越されないように気をつけます。」



菜由は「繊細ですね」



CAは、いえいえ、と笑って。「よい旅をどうぞ・・・これから新幹線乗換えですか?

切符はございますか?」




愛紗は「はい、あの・・ネット切符で特急券を」



CAは「それですと、乗換え改札の所に自動券売機がございます。

そちらで特急券を出札してください」



「ありがとうございます。改札を出ようかと思っていました」と、愛紗。



チケットレス乗車をするには、4人各々で行わないとならないのが

今の所のICカード乗車の難点で



一旦、特急券を得ないとならない。


駅によって、券売機がある場所は様々。


意外と、東京駅のような大きな駅の方が

場所が解らないで困る。


広いから。



「すごいですねー。全部の駅のことを覚えてる」と、友里絵。



いえいえ・・・と、CAはにこにこ。



「すこしづつ、覚えています。今は、インターネットがあるので

お尋ねになる方は、あまり多くはなくなっています」






「ああ、みたことある。乗換え動画とか」と、由香。



「東京駅の地下なんて迷路みたいだもんね」と、友里絵。




「ただでさえ地図読めないのに」と、由香。


「うるさい」と、友里絵。




CAも笑い、「それでは・・・よい旅を」と言って


通路を歩いて行った。



黒いスーツに包まれた、その後ろ姿は

美しい。



「かっこいいなぁ」と、友里絵。



「あたしらと同い年とは思えないなぁ」と、由香。



「スーツ着るとなるんじゃない?」と、菜由。



「スタイルは大事かな」と、愛紗。





「あれ、やっぱルックス審査ってあるんだろうね」と、友里絵。



「言いはしないけど、あるんじゃない?バスガイドもそうじゃん」と、由香。



貸切だと、団体にあわせることはある。



温泉への泊まり旅行、年配者、なんて時は


ガイドも中高年の既婚者になるし



学生とか、若い女の子の団体。


そういう時の日帰りだと、若いガイドになる。



トラブルを避ける意味もある。



「乗り合いの鉄道だと、いろいろあるんだろうなぁ」と、由香。



「ありそうだねー。」と、友里絵。


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