第48話 1632列車、庄内、定着!

坂道を列車は登る。

結構急で、速度は落ちる。


かたかた、かたかた・・・・。


客車は静かだ。

モーターの音がしない。



エンジンもない。




坂を登ると、庄内駅。


広い構内、行き違い設備、側線。

工事用車両や、工務部だった建物、倉庫がある。

駅舎は、以前は長く、住居と一体になっている

駐在型のものだったが、最近建て替えられて

モダーンな、綺麗な駅になった。


長いホームはそのまま。



列車が到着。


「あー着いた」と。友里恵。


「いい景色」と、由香。



「はー。」と、愛紗。


空気が綺麗。


「おかえり」と、伯母さんは改札まで出てきてくれていた。


まあ、改札もあるのだけど、ここは委託駅なので

サービス。


「おばさーん、ただいま」と、愛紗。


「お世話になりまーす」と、友里恵。


「おじゃましまーす」と、由香。


おばさんは、愛紗よりも小柄で

がっちりとした体型。


笑うと愛らしい。



「おばさん、急にごめんねー。こちらが友里恵、 こっちが由香。

ガイドの仲間なの」



「友里恵でーす」


「由香でーす」


「三波春雄でございます」と、友里恵。


「それ、古すぎないか?」と由香。



おばさんは笑って「面白いねぇ。こういうガイドさんだと楽しいねぇ」と。



そっかな、と、ふたりは笑う。






改札を「あ、そうだ、けーたいけーたい」

乗車券を買わないで乗ったから。


ICカード・リーダにかざすと・・・。


赤いランプがついて ぴーっ。


「チャージ不足かな」と、おばさん。



「おばさんもコンピュータ時代に慣れてるね」と、愛紗



「だって、仕事だもの」と、伯母は笑って

友里恵のケータイを受け取り


出札のリーダーにかざすと


「ああ、1万3000円かな」と。


「ひえー。」と、友里恵。



「そんなもんだと思うよ」と、由香は


ふつうにグリーンランプで通過。


「どして?」と、友里恵。



「オートチャージだもの」と、由香。


「ただ、ケータイおっことすとそれで使われちゃうから、絶対に落とせないね。」



「なーるほど、あたしは無理だ、はは」と、友里恵。



待合室は、野菜とか果物とか、お菓子の販売所みたいになっていて

いろいろ、面白いものがある。


「これなに?お米?麦?」と、友里恵。


「ああ、それは焼き米って言って。ご飯なんだけど。インスタントご飯ね。

お茶を掛けて戻すの。」と、愛紗。


「面白いね」と、由香。



「食べてみる?」と、おばさん。



出札の奥にちょっとしたお部屋があって、お湯沸し、流しはある。

元々は住んでいたから、勝手は分かっている。


「リフォームなの?」と、愛紗が聞くと


伯母さんは「そうだけど・・・ほとんど建て替えだね。」


元の基礎は、開通時だから大正だ。


その駅舎が、つい最近まで残っていた。でも

台風で壊れたので、建て替えた。


そうでなかったら、今でもそのままだったろう。


「このあたりは台風がいっぱいくるから」と、伯母さん。



「大変だね」と、由香。


「なーに。直せばいいさ」と。悠々としている。


この辺りは豊かな土地で、お米などは

頑張れば年に3回採れたりするくらいで

結構、みんなお金持ちだ。


近年は輸送が大規模なので、遠くの土地へ持っていって

相場が高いところで売ると、かなり安く売っても

利益が出る・・・と言う訳だったり。



それに、社会もそういった自然災害を考慮しているので

融資が行政から得られたり。補助が出たり。



そういう事で、豊かな国なのだ。




キッチンに来た愛紗に、伯母は「ゆっくり休んでってね。」と。


愛紗は「ありがと、ねえ、国鉄で募集出てない?」と。


伯母は「CAはいつも出てるね。乗務員は・・・新卒かな。駅員は時々中途もあるね。」


と。


「なに?転職するの?」と。


愛紗は、やかんでお湯を沸しながら「そう。運転手になろうと思ったんだけど、やってみて

都会じゃ危ないから、田舎に帰るか、ガイドに戻った方がいいって言われて。」



伯母は、少し考えて「・・・そうね。市役所のコミュニティバスなら、なれそうだけど。

定年退職者みたいな人がほとんどね。給料安いし。」



「あなたの会社の営業所、あるでしょ?由布院とか、あそこだったら路線バスとかもあるね


。でも、なんでバスなの?」と。伯母さん。



愛紗は答えようがなく・・・。



お湯が沸いたので、お話はそこまでにした。

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