第568話 rainbow

その、

フリースペース、21時。


人影も減ってきた平日の地下。

衆人環境の中で抱き合い、唇を重ねる男女が一組。


フランスの女神は「はしたない」と、一言。

ドイツの神様「罪にならないのだろうか」


アメリカの神様は「よくやるねぇ(笑)」




めぐの国の神様は「ま、それが愛ならば救いになるだろうが」と笑顔で。




ふと、その横を

両耳イヤホンの若者が、音楽に救われている。




リサが、音楽で救われたように


ここでも、音楽がひとの気持ちを癒している。




音、波の重なりなのにそれが意味を持って。



彼が聞いていたのは、古いアイドル・ポップスだったけど

あきらめないで、がんばって、涙もわたしに分けてほしい。

あなたの勇気のそばにいたいから。と

明るく愛らしく訴える歌だった。


それも、歌を通じて人を和ませる愛。

そのぶんだけ、彼は救われている。






「不思議なものだな、音波が人を和ませるのは」と、めぐの国の神様が呟くと


ドイツの神様は、「心に愛があれば、それを音にして伝えられるのだろう」と、神秘的な事を音楽技法に乗せて(笑)音楽の国らしい言葉。




「ま、それは宗教じゃないけどね」と、アメリカの神様は


フリースペースに落ちていた雑誌の見出しを指差し、壁掛けTVのニュース映像を見た。






「信仰じゃ救えないのかな」と、ドイツの神様



「心に愛がないからね」と、フランスの女神も

口調を真似た(笑)。

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