第435話 railman

そうして、お腹が満たされれば

人間、そんなに腹はたたない(笑)。



そういうもので、乗客の中で

列車が遅れる事に、クレームをつける人など居なかった。



もともと、この世界は

過大な欲望が起こらないように


神様が工夫をした世界。




欲望、それを

目の前のものだけを対象にすれば


そんなに争いは起こらないもの。




記憶や、空想、仮想を

目的にするから

欲望は過大になる。




つまり、欲望が


3次元の、目の前にあるような事だけを対象にするように、設定されていれば



欲望は適当になる。




お馬さんが、目の前の人参だけを欲しても


それほど、焦りも苛立ちも起こらない。



例えば(笑)。


でも、あさって人参を食べられるかもしれないと


思って生きれば、それは苛立ちもするだろう。




そう、例え話にすれば

おかしな話だけど


人間のしている事は、大方そんな事で



客観的には、不思議な行動である。




その、仮想を目的にするから

おかしくなるのだ。







そこのところを、少し修正したら



この国は、住みやすい世界になった。







列車の行方が、例えばこの列車みたいに


地震で



時間が予定できなくなったりすると


乗客にも実感する事ができたりする。



予定の時刻に、列車が着くのは実は結構

いろんな人の努力の賜物なのだ、と言う事を。





機関車乗りは、運転席で



沿線に立って、線路の点検をしてくれた人達の

側を通り過ぎるたびに



列車の汽笛を鳴らして労った。




地上のひとたちは、手を挙げて



微笑む。



日焼けした顔は、いかにも頼もしい。


逞しい腕。ヘルメットの笑顔。




それも、鉄道職員である。

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