第383話 life in the northern town

天井の架線は、雨が当たらないせいなのか

キラキラ光って見えて


でも、銅線の色そのまま。



「きれいですね」と言うと、リサのおじさんは



「んだ、パンタグラフが擦ってる」



いつも、パンタグラフが当たってるので

それで磨かれてるから

綺麗。なるほど。




いつも、ブランニューって、なんか、いいかも。



そんなふうに、めぐは思ったり。




ゆっくりゆっくり、ホームの始点が近づく。



本当に止まるのかな、と

ちょっと怖くなるけれど


普通に止まった。




空気の抜ける音がして、列車は

静かに止まる。



止まってから、少しゆらゆらして



しっかりと、ブレーキが掛かった。


青い車体。




汽笛が短く鳴らされて

機関車乗りは、仕事の終わり。



これから、700kmの道のりを走るのだけど。






めぐの、携帯電話にコール。



「あ、めぐー、今どこ?」と

リサの楽しそうな声。





「リサぁ。」めぐは、友達の

その声で、なんとなく安堵。




リサは語る。

田舎の駅で、ロックの曲に力付けられた事。


意味は解らないけど、音楽が

気分をすっかり新しくしてくれた事。



ビートとハーモニーが。



その曲が、めぐの好きなLedZeppelinだったから

それで、電話した。





「誰だれ?」と、れーみぃがめぐに尋ねる。




リサ、と

めぐは、声に出さずに口の形で

れーみぃに伝えると、




「リサーぁ、今、そっち行くよ!」と


れーみぃは、マイクに向かって割り込んだ(笑)。




めぐは「リサね、ラジオでLedZeppelin聞いて元気になったんだって」とれーみぃに言うと



れーみぃは「あ、それ!学園祭でライブしようって話してたの!やろやろ、みんなで。」と



楽しそう。




「だから、一緒にやろうよね」と



電話の、楽しそうなれーみぃの声を


リサは、700km彼方の、おじいちゃんの

家で聞いていた。




偶然、ラジオの音楽で

元気になれた。



その偶然に出会うために、旅したのかな、なんて

思ったりもしたけど。




ふだんと違う時間の中でないと、出会えなかったと思う。



リサは、そんなふうに思った。




旅っていいなぁ。

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