第290話 Flash forward

でも、めぐは

魔法使いとしての生き方を強いられるのも嫌だと思っていた。


「だって、あたしが選んだ訳じゃないもの」


それが本心。



自由に生きて、自由に暮らしたい。



別に、結果がどうだって

自分が選らんだ生き方なら、それが一番と

若々しい自負に溢れる18歳の感覚は、そんなもので



なので、リサの弟だから

ミシェルに情けを掛けるつもりもなかったし


リサも、そんな事を望んではいない。






女同士って、そういうものだ。




気が済むように生きるのが、一番!。




そう思うリサとめぐは、ある意味ファイターだ。



自由に生きようとすれば、自由に生きられない人たちから

妬かれる。



それも不思議な事だけど。


自分で、自分を規制してしまうと

何もできなくなる。




リサが、少し前

電車の運転が上手く行かなかったのは

おじいちゃんのために、失敗できない、優等生で居たいと言う

(そんなことは、おじいちゃんは思っていなかったけど)


そういう呪縛だった。



言ってみれば、若さ故の自己顕示の転換である。



誰だって、優れている方が嬉しいと思う。その気持が

転換して、優れていなければならないと思い込んでしまうから

失敗する。



失敗したら終わり、みたいに思い込むから。



そういう気持が無くなれば、なんだってできるのだ。

何度も間違えながら。


それが人間。





自由に生きる為に、まず気持を自由に。






そうしたから、Naomiもリサも

好きな事に向かって、ステップを登っていけた。





もちろん、めぐも

そうなっているのだろう。






なーんとなく、でも、めぐは

ミシェルの3年後を知っているせいか


その後も、めぐ自身と

恋愛に至るとも思えなかった。




.....セシルちゃんの方がお似合いなのになぁ。


と、女の子同士の感覚で、めぐはそう思う。




セシルちゃんの気持が、なんとなく分かるから。

その気持を叶えてあげたいもの、って



めぐは優しい子だから、そう思う。







ふと、その瞬間。

めぐの意識は、ミシェルと、めぐ自身の近い将来をイメージして。



短い、タイム・スリップに飛んだ。

もちろん、瞬間の白昼夢のようなもので、こちらの時間軸では


ほんの数秒の間のこと、である。



意識の中では、0次元モデルになっても

問題なく、代わりに4次元の意識、それを凝縮するので

エネルギーは4乗になる。



それで、タイム・トリップ。






------flash!!! forward.









イメージの中で、めぐは

母校、あの坂の上のハイスクール、そこの旧校舎が

建て替えられる、解体現場に立っていた。




時系列で言うと、10年くらい後なのだろうか。




木造の、趣のある旧校舎は

めぐが在校生だった頃も十分に古かったので


そろそろ寿命、なのだろうか。



周囲を囲われて、これから、解体に掛かると言う

そんな感じ。


でも、時刻は夕刻。



解体は明日、以降なのだろう。






「..........。」めぐの心に、寂寥感。


なんだろう。やっぱり、思い出のある物が

なくなってしまうのは、淋しいのだろうか。




思い出のある、日々の象徴のような。



そこに来れば、過ごした時間を思い出せる。


そんな場所がひとつ、なくなるのは。




人は、やっぱり美しい思い出と生きていくものだから。






それを、どうして壊してしまうのだろう?



と、めぐは思った。

思ったけど、それを魔法で阻止するのも、ちょっと無理。



なんたって、この世界の人に魔法を見られたら

その魔法は消えてしまうのだから。









その解体現場を見ている人の中に、成長したセシルの姿を見かけた。



美しいレディになった彼女は、穏やかそうで愛らしい子になっていて。



「あれなら、ミシェルもイチコロだ」(笑)と、めぐは思ったけど


そこにミシェルの姿は無かった。





「10年くらい経ってるとすると......。会社勤めでもしてるのかな?」と



めぐは思う。




うまく行ってるといいけどな、あのふたり。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る