第144話 にゃんこ語


「さ、じゃ、あたしのおうちへ。」と

路面電車を見送って。


石畳の軌

道敷を渡って。


安全地帯から、歩道に渡って。


路地の、坂道へと登る。




見慣れた坂道が、めぐにはとっても

有り難く思えた。



なんたって、絵本の中に旅してしまったのだから。




路地のお隣りさんや、ご近所さんも

心配してないといいけど。


はじめての外泊だもん(笑)なんて


めぐは、ちょっと、スターみたいな

気持ちで戻ってきたけど。


誰も、気にしてないみたいなので


ちょっとがっかり。



そうそう、にゃごにお礼言わなきゃ。





「あ、そうだ。クリスタさん?にゃごにお願いして下さったんですか?

あたしの捜索(笑)」





クリスタさんは、穏やかにかぶりを振って。


「いいえ・・・・。」と、だけ。



「そっか、にゃごにごちそうしないと。」



と、スキップするみたいに


めぐは、楽しげに、おうちの門を開けて。


「ただいまー。」と。



いつもと同じように、お母さんもお父さんもにこにこ。

おばあちゃんも。




だーれも心配してない事に、ちょっと残念な(笑)気もしたけど


でも、叱られるよりはいいかな。




でも、思い出を振り返っても

あんまり、叱られた記憶ってなかったりする。






いい子だったもん(笑)なんて


自分では思ってたり。




「おかえりめぐ。疲れたでしょ?

お風呂入ったら?」と、お母さん。



「うん。おばあちゃん、にゃごは?」



と、めぐは、夕べ出掛けてからそのままだった事を思い出す。



おばあちゃんは、いつも通りで


「にゃごは、ごはんじゃない?」と


ダイニングルームの角、にゃんこのご飯のところにいるのかしら、と

言った。



「にゃごー、にゃごー。」と

めぐは、とことことダイニングルームへ。



クリスタさんとルーフィも、お母さんに招かれて。



「ただいま、戻りました。」

「すみません、ごやっかいを」

と、それぞれにご挨拶。



お母さんは、とりあえずお風呂でも、と

言ったので


それじゃあまた、ニアミスしちゃうな、とルーフィが言ったので


そうですね、とクリスタさんも

みんなも楽しく笑った。


和やかだった。



にゃごは、極上鯖の缶詰を


おいしそうに食べていた。


めぐは「ただいまー、にゃご。

ありがとね。おかげさまで

帰ってこれたのー。」と言うと



ごはんを食べながら、にゃごは



ふにゃくにゃむにゃふにゃご、と

にゃんこ語で語った(笑)。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る