第142話  コンピューターの心




コンピューターの心



古い電車さんが、去っていった港の方面から


新しい電車さんが、真っ白な光を

放つ

ヘッドライトを輝かせて

停留所に入ってきた。


軽そうな車体、スマートな流線型のデザイン。

ブレーキの音もなく、静かに減速。

微かに、PWMインバーターの高周波が

音楽のように聞こえる。



ドアは、空気の音もなく

すっ、とリニアモーターで開く。


低い床は、レールすれすれくらい。



「すごい。」と、めぐはその

未来的な乗り物の雰囲気を称賛した。



でも・・・新しい電車のせいか、魂が

感じられない。



電車や、古いオートバイに感じたような、ソウル。ニルバーナ。


そういう有機的な感じがしない。




「機械、て感じ。」と、当たり前の感想をひとりごとみたいに言うと



「そうだねー。コンピューターって、ひとつの意思だから。


それがあると、全体の意思って

あんまりないのかな。

古くなるとわからなけど。。」


と、ルーフィは言った。



コンピューターが入っている機械は

コンピューターが、いろいろ判断をする。



この電車で言えば、自動的に

モーターの電力を加減する仕組み、インバーターが付いているので


古い電車のように、機械仕掛けで

職人さんが苦労して、作ったり

整備する仕組みはない。

変わりに、インバーターが

自動的に判断して、電流を

短い周期で断続、その時に

あの、高周波音がするのだ。




「コンピューターの中に魂はあるんだろうけどね。」と、ルーフィ。



プログラムのことばがわからないと

コンピューターの気持ちはわからない。


それに掛ける魔法も作れないだろうね、と

ルーフィは言った。




魔法ができた18世紀に、それは

なかったものだから。



「いま、めぐちゃんはコンピューター・プログラムもわかるから



コンピューターに掛ける魔法も作れるんじゃないかな?」



なんて、ルーフィは冗談混じりに言う。



21世紀のコンピューター・まじっく。



めぐは、学校で習った

コンピューターの授業を思い出し、話す。



「どんなコンピューターも、0と1、しかないから。それは、電気を流すか、切る、ってことだけで。


それで、プログラムって

人間のことばで文章にしているけど



それを、0、1、で置き換えて。


呪文みたいなことばにしてるだけ、なの。


その、翻訳さんが

コンパイラ、で



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