第136話  魔法使いの記憶



魔法使いの記憶



つまり、普通の人々の記憶が4次元的、だけれど

その記憶事象を、ふつう

3次元的な時系列モデルを持っている。


時々曖昧になるけど、幼い頃の記憶と、近年の記憶は区別される。



でも、ルーフィたちは時系列や、次元を超えた体験が出来るから




その記憶を、時系列では並べらない。


濃密だ、とも言えるし

分散的でもある。



旅行者は、そもそも

そういう者だけれど・・・・。





「じゃ、今日はこれで」と、主任さんが言う。



無事でなによりでした、と

また言いながら。



やさしい、おばさんみたいな主任さんは

とてもいいひとなんだ、



そんなふうに、めぐは思った。



みんなが、優しい。


めぐの事を、大切にしてくれている。



ルーフィも、それで

戻って来てくれた。




その事だけでも、めぐは

とっても嬉しく思った。




「どうも、お世話様でした」と

ルーフィは、イギリス流の挨拶をした。



そういうあたりに、彼の住んでいた時代を彷彿とさせる。



「じゃ、帰りましょ?」と


めぐは言い、表通りの

路面電車のレールが光ってる通りへと歩いた。



路面電車は、道路の真ん中にある。


レールのあたりは、古い石積みの

ままなので

とても、趣深い通りに見える。




3輪の自動車が、ぱたぱた、と

のどかなエンジン音を立てて


街道を走り去った。




「あれ、かわいい」と、めぐは

その、ベージュの3輪自動車の行方を視線で追った。


オリーブグリーンの幌が掛かってる

あたりを見ると、働く自動車なのかもしれない。




「かわいいですね。」と、クリスタさんもにこにこ。




「ああ、そういえば。

いつか、自動車でお店やってみたい、なんて言ってたっけね。」と


ルーフィは、ずっと前の事を

思い出した。




それは、めぐの前の人生(笑)の

事だったけど



それは、覚えているんだろう、覚えていなくてもいいけど。



そんなふうに、ルーフィの記憶では

いくつもの世界が重なっていたりする。




「はい!サンジェルマンの、サンドイッテみたいに。銀色のシトロエンで。お店してみたいな。なんて。」



と、めぐは楽しそうに言った。





「してみたい事が一杯だね。」と

ルーフィは、にこにこ。



これから、一杯。

いろんな事をしてみようね。



そう、心で囁きながら。



路面電車が来るのを待った。



電車の停留所は、人影も少なくて


風が、少し涼しいくらいだった。



空はよく晴れて、秋のように

星がよく、見えていた。




「あの、お星様はとっても遠いのですね。」と

クリスタさんは、遠い瞳でそう言った。







星・・・・・か。



ルーフィは、クリスタさんが

天使さんだった頃を知っているから


星に、手が届くような


天使さんの世界を、なんとなくイメージできる。




「帰りたくなったんですか?」と

ルーフィは、クリスタさんに尋ねてみたかった。



でも、それを聞いても。


もう、戻る事はできないのだし。



聞かない方がいいかな(笑)なんて

それを聞くのは止めた。



「でも、天使さんになる前は

どんな人だったのだろう?」とか


思ったりもした。




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