岬へ

第100話  On the road

On the road



なので、ルーフィは

図書館のおじさんが使うモペッドを

貸してもらう事にした。


この国では、14歳になると

50ccの、ペダル付きモペッドは

免許不要で乗る事ができる。


そうして、交通ルールを覚えてから

社会に参加すると、無謀な事はしなくなる、そういう考えである。

イタリアと同じで、交通ルールも適当に守られ、いい制度である。




そんな訳なので、ルーフィの

魔法の絨毯とは違うけど

それは結構、面白い乗り物。



「乗り方はわかりますか」と

主任さん。


事情は知らないけど、ルーフィが

その「ゆきのひとひら」を

探しているって聞いて。


助けてくれるこの人も、いい人。




「なんとなく・・・・。」と、

ルーフィはイギリス人なので


イギリスの免許は持っている。



イギリスでは、簡単な試験で

250ccまで乗ることができて。


それなので、オートバイは

割と親しまれている乗り物だった。




もちろん、ルーフィも

オートバイは大好きだ。。


風に乗って走るのは、魔法のように

素晴らしいと思う。


ハンドル伝わるエンジンの鼓動も

生き物のようで。



ルーフィは、キースイッチを入れた。


ハンドルの右についているそれは

小さな鍵。



かちりと、節度のある感じは

どことなく好ましい。



「では、お借りします。」




ペダルを踏みながら、まずは

自転車として走る。


勢いがついてから、クラッチをつなぐ。



その時、エンジンの圧縮を少し、抜くのは


デコンプレッションと言って

スムーズに走り出すための気配り。



タイヤの回る力が、チェーンを通して


エンジンに伝わり、空気を圧縮。



すると、温度が上がる。

PV=nRTである。


容積が減れば、同じ量の気体は

温度と圧力が上がる。



そういう物理法則である、


そこに、燃料を噴射すると

爆発が起き、今度は

容積が増えていく。



燃料は、なぜか

空気との混ざり具合が理論的に決まっている。


空気の分子と、燃料の分子が

酸化反応と言って、いわゆる燃焼をするので

適当な量の酸素と、炭化水素の

組み合わせが必要なので


それはまあ、相性、の

ようなものだ。





例えば、酸素が少なければ

炭素が残る。


ストーブが、煤を残して燃えるような、暖炉のまきが黒くなるような、そんな状態である。



反対に、酸素が多いと、これは

温度が高くなるが、圧力が上がらない。



そんな、精密な燃焼を

エンジンは続ける。



それで、ピストンを下げて

勢いでクランクを回し、タイヤを回して走るのだ。



機械と言うものは、かくも

愛らしい代物である。


愛らしく、単純なものであって


それは、魔法のようなものとは

また違った興味をそそるものである。



ピストンとシリンダーの潤滑、と言って

滑りをよくするために、オイルを混ぜて燃焼させて。


その燃える香りが、いかにも馨しいので


少年たちは、オレンジのオイルや

ひまし油などを混ぜ、その匂いを

楽しんだり。


そういう不思議な事を喜ぶのも

趣味の面白さである。









ペダルを踏んだモペッドは、爽やかに風を切る。



それが夏であっても。



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