第87話  どうしちゃったんだろ



「確か、おじいちゃんのところに

行きたい、って思った時は・・・」


めまいみたいに、ゆらゆらした。


そう、めぐは言う。



ルーフィは「それなら、大丈夫だと思うけど・・・。」



と、魔法陣の書式を見てみる。


間違いはない。



封印も解放されている。



それなら、どうしてだろう?



どう思う?と、ルーフィは

わたしに感想を求めた。



「わたしにわかる訳ないでしょ」と

言いかけて。



そういえば、わたしがどうして魔法を使えるようになったのか?も

よくわからない。




「最初はさ、わたしって

ルーフィにくっついて跳んでたんだよね。」



と、思い出す。


それから「なにか、気掛かりな事とかない?」と

わたしは、めぐに聞いてみる。




「ないと、思うけど・・・・・。」


と、めぐは思案顔。





テラスには、夕暮れの風。




「まあ、手をつないで

飛んで行くのもいいけど・・・・・。」



と、ルーフィはちょっと、思案顔。



科学者のような、彼の思考では

たぶん、原因を類推してるのだろう。



・・・・・こころの奥で、自分でも

気づかないほどの、気掛かり。




・・・・・なんだろうなぁ(笑)。



ルーフィにも、ちょっとわからなくて

テラスから、2階に戻って。


自分の、ロフトへ戻ろうかと

思っていた。でも


思い直し、おばあちゃんのところへ。



おばあちゃんなら、何か

わかるかも。


そんなふうに、漠然と期待して。




階下に下ると、右手がおばあちゃんのお部屋。



扉は開いている。けれど

おばあちゃんの姿はなかった。




畑かな・・・・・。





ルーフィは思い、暗くなってた

畑の方を見た。



農機具小屋に明かりが点いている。





あっちかな?




裏口から、サンダルで


とっとこと、と


歩いていく。



おばあちゃんは、果たして

農機具小屋にいた。



「おや、ルーフィさん」と

おばあちゃんは、にこにこ。


その笑顔のムードは

めぐに、なんとなく似ている。



「こんばんは」と


ルーフィは、ごあいさつ。




その、ルーフィの顔を見て、おばあちゃんは



「魔法、うまくいかなかったの。」

と。




「ご存知でしたか」と、ルーフィ。



「テラスでお話してるから、聞こえちゃうもの」と、おばあちゃんはにこにこ。




「はい、それで、すこし・・・・・教えて頂きたいと思いまして。」と

ルーフィは、真面目に。




めぐが、気掛かりにしている事について


心あたりを尋ねてみた。



おばあちゃんは「・・・・そうねぇ。

めぐは、ルーフィさんがとっても好きだから・・・・その事かしら。


でも、ルーフィさんには・・・。


パートナーが決まってて。



そのパートナーは、めぐ自身の3年後と、同じだけど

違う世界の人。


名前も同じで、すがたかたちの

似ている、別の時空間の人・・・。




と、おばあちゃんは言う。



「恋の悩み、ですか」と、ルーフィは

直裁に言った。



それなら、魔法を使えるようになるのは・・・・・。

めぐが、自身の恋心と

向かい合わないと・・・・。






それは、神様のいたずらだったかもしれない。


めぐの恋心を、残しておく必然はどこにもなかった。



消す必要もなかったけれど(笑)。



それによって魔法の力が封印されたままになれば

魔法使いがひとり、この世に生まれなかった事になるけれど・・・。




気がかりな事。



ただの恋がそれほど気がかりか、と言うと

そんなこともないよ、と


めぐ自身は言う。



恋と言うよりも、無意識に思慕してしまう。



そういう恋愛は、かなり困った状態だ。


本人にも分からないところで、心が軋んでしまう。





古くからある類推的な精神医学では、それを原初体験のせい、なんて

類推する。



有名なビートルズのジョン・レノンが相談した、アーサー・ヤノフと言う

お医者さんの説明だと


人生で初めて受けた経験が、心に影響を与えると言う

至極当然な事、なのだけど。



それは普通、心のストレスなどの説明に使われる。



今、アメリカのお医者さんもこの考え方に沿ってマニュアルを作り

DSM(精神分析マニュアル、と言う単純な名前の略)と言うその本は

しばし、法廷でも判定の根拠とされる存在になっていたりする。



恋もまた、心から見るとストレス(力)である。



めぐの心に、生まれて初めての経験。

どんな経験か分からないが、それが嗜好として


ルーフィのもつ、何かを好ませている。



無意識なのだけれども・・・・。





あるいは、生まれる前、もっと前の記憶を

めぐは、忘れないで持っているのかもしれない。



例えば、前世で魔法使いに関わりがあった、と言うような・・・。




「わかりました。とりあえず、僕らは一旦帰らないと

向こうの世界の僕たちが消滅してしまうかもしれないので

Megとふたりで戻れるか、どうか

考えてみます。」と、ルーフィはおばあちゃんに言った。




「そう。めぐともしばらくのお別れね。それだと。」と

おばあちゃんは、ちょっと淋しそうに。



「はい、お話をめぐちゃんにしてみます。」と、ルーフィもやや、悲しげ。





ほんとうは、一緒に行きたかったんだろうになぁ。....。手をつないで飛ぼうか?。




ルーフィは、そうも思った。


でも、普通の時間旅行と違って、次元を越える旅だし


Megの場合は、魔法の力を持っていたので

その、行き先を支えてあげただけ。


能力が封印されているとなると....。ルーフィ自身の能力で

めぐを飛ばせるか?は、難しい判断だった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る