第39話  時間旅行と記憶




日々の積み重ねが、記憶。

それが、、やがて性格とか

人柄とか、言われているけれど

ずっと、同じ人柄であるわけでないことは


古くから、精神分析学が述べている通りだけれども



記憶の中でも、幼い時の記憶は

覚えていない事が多いし、初めて


体験する事ばかりなので、結構

印象が大きい。


それで、性格に影響が大きい、とか

言われている。


なので、神様がめぐの人生を

最初からやりなおす、と言ったのには


それなりに、意味があったのだ。



めぐだけでなく、この、めぐが住んでいる時空間に、魔物が入り込んで

エネルギー源である、ひとの悪意、敵意を煽ったせいで


この世界が、すみにくくなった。


それを、最初から直すのは

神様としての使命感であるのだろう。




もちろん、この事を知っているのは

ルーフィと神様、それと天使さんくらいだろう。


魔王も知っているかもしれないが。




もちろん、めぐの父母、祖父母ですら

このことは知らされていない。



一晩で、一気に時間を逆転させて

また、元通りにする、そんな事が

できるのは神様くらいだ。


変わった夢を見た、くらいの

認識で


記憶違いの出来事があったり。



そんな事が誰にでもあるし、

正夢、なんて言葉もあるけれど


それらの時々は、時間旅行かもしれない。




そういう記憶が積み重なって人柄ができるなら


自由に時空間を旅行できるひとは

自由な人柄、になるのだろう。

覚えている事が、

4次元で並んでいるので、発想も自由自在である。



ただ、恋愛となると別かもしれない。


好悪の感情は、複雑だ。

善良な人柄、即ち恋愛対象とも

限らない。


一見大人しそうな女の子が、ロックミュージックを好み

攻撃的な男の子に恋する事だってある。



その場合は、恐らく

周囲への配慮でおとなしく振る舞っているけれど

本当は、攻撃的になりたい、と

心が叫んでいるのだろう。






めぐの、魔物体験が心からなくなった事で、

奇妙に臆病なところ、生への諦観のような

年齢の割におとなしいところ、などが消え失せる。



そうすると、それを好ましいと

恋心を抱いていた人などは、そう思わなくなったりする。



誤解が誤解を呼んでいて、うまくいっていた友好的関係などは

ダメになったりする(笑)。



そういう事も、一晩のうちに起きたはずなので



いろいろ、ルーフィたちには

異変に見える事もあったりも、する。。。






新しい朝



いろいろあった土曜日。

だけど、過去が変わったから

この、土曜日の出来事も


もちろん、変わっていたりもする。


日曜日の朝を、爽やかに迎えためぐを

ちょっと心配っぽく見守っている

ルーフぃと、Megだった。


お父さん、お母さんも

何事も無かったように

朝を迎え、朝餉を送る。



おばあちゃんから、ごはんをもらって

おいしそうに食べてるにゃごを、にこにこしながら

眺めて。

めぐは、図書館に向かった。



日曜日は、ホントは

図書館に来なくてもいい、って

司書主任さんは、お気遣い。

でも、元気なめぐは、さらに元気になって(笑)。



張り切って仕事。



「おはようございます!」と、だーれもいない事務室で

主任さんにご挨拶。



「やあ、おはよう。今日も元気だね」と、主任さんはにこにこ。



事務所の壁面にある、黒板を見ると

昨日あった筈の、映画鑑賞会に、司書主任さんの甥御さんの名前が、入っていなかったりする。




たぶん、めぐ、以前のめぐに恋心を抱いていて。



それで、ラブレターのように個人映画を撮影して

めぐに、見せたかった。



そういう、ロマンチストだったらしい。



でも、それは、彼のファンタジーだったようで


魔物に襲われた経験のない、今のめぐは

臆病なところのない、明るい元気な少女である。



それが、彼にとって幻想を呼ばない存在になった、と言う事のようだ。



多くの恋は、誤解である。

過去の経験の中で好ましいと思った記憶、そこに存在したイメージを満たせる人を好むのである。


大抵はよく知らないうちに好きになるのであるから

多くの場合、誤解である(笑)


だが、その差異を

認め、その人を愛おしむ時、それは愛と呼ばれる。



彼は、まだ若いので

自らの好みだけで、女の子を求めていたのであろう。



もう少し、成熟すれば

良い男になるかもしれないが。



いずれにせよ、めぐにとって

それは良い事だったが


その事を、めぐ自身は

覚えていないかのようだ(笑)。



それは、もちろんいい事だと思う(笑)。




めぐ自身が、もともと

興味を覚えていない理由に

そんな、男の子の身勝手な感じ、もあったのだろうから。



優しいお兄ちゃんのような、ルーフぃへの気持ちを

さて、めぐは覚えているのだろうか...

貨幣と恋愛




でも、ひとの思ってる事なんて、大したことはない。

なので、縁あって好きになった人の

嫌いなところが多少あったとしても


それで、愛する事ができないのは

わがまま、だろう。



めぐが、ルーフィに抱いた気持は

そうではなくて、確りとした生き方の人、なので

原基として安心、だと言う事だから


そのあたり、めぐは審美眼がある、のだろう。



もちろん、神様が人々の世から過大な欲望と

争いを抑制したせいで


女の子たちも、安心して生活できる世の中になった。



もともと、動物として獲物を得て、生きていたが

農耕をして貯蓄をする事を考え、エネルギーが安定したので

発情期がなくなった。



貯蓄を、農作物ではなく

農作物の引き換え証で代用するようになる。


貨幣の起こりである。



そのうちに、貨幣をより得ようと考える。

欲である。



貨幣は、食物の引き換え証であったものを


一度に引き換えに来ないので、貨幣だけを増やしても

大丈夫だ、と悪い考えを起こして(笑)儲けた者が居た。



欲の起こりである。



いつか、その貨幣の価値は低いと

信用がなくなるので



沢山の貨幣を持っていても、得られる食物は減る。



そういう中で生きていると、男も女も

不安である。




無意識に競争するから、こころの豊かさは失われる。


それが幸せなのだろうか、と

神は考えるのだろう。



必要にして十分な富があれば良いのである。


欠乏を恐れるのは、社会制度が信用できないからである。




今は、ふたたび安定が訪れたので

ひとは皆、穏やかに暮らす事が出来たし、自由と平和を謳歌する

世の中になった。



社会が安定して、信頼できれば

貯蓄も程ほどで良いし、むしろ経済は豊かに巡るのである。




不思議なことに、めぐに好意を持っていた映画作家くんは

めぐの上辺だけを見て判断していたのだろうか?



本質も良い子、なのだけれど。





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