第35話
自嘲するほどの急変。だけれども
従わざるを得ない。
僕自身がそうしたい、と思うから......。
スマート・フォンには、操作ログらしきものは無かったから
どうしてデータが消えたのか、そして、
過去に遡ってデータが書き込めたのか?と言う事を
調べたくとも、不可能だった。
理論的には可能だ。
Windows-OSのファイル作成日時は
オリジナル・ファイルの作成日時、だから
オリジナルからコピーすれば、古い日付のまま
データが転写できる。
このトリックを使って、コンピュータ・ウィルスを
作る事もあると聞いた事がある。
だから、17歳の薗子が
自分のスマート・フォンのデータを
僕のそれにコピーすれば....
メール・フォルダも同じだ。
だけど、なぜ、そんな事を?
17歳の薗子は、そんなに機械に
詳しい感じではなかったから
論理的に可能だったとしても
おそらくそれは無いだろう、と僕は推理した。
バスは、桜台高校のある駅ではなく
僕の通っている、県立東高校の
ある駅へと向かっている。
もうすっかり夜の雰囲気が感じられる
車窓を眺めながら
僕は、推理を続けた。
スマート・フォンの音楽プレーヤーには、
曲が幾つか収めてある。
イアー・フォンをつないで、音楽を聞いた。
ヨハン・パッヘルベルの「カノン・二長調」。
有名な曲だけれど、やすらぐ曲調が好きだった。
ゆっくり、ゆっくりと展開するメロディが
混乱している気持ちを鎮めてくれるかのようだった。
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