第29話


ただ、髪が少し伸びているかな、くらいの感じ。

実際、17歳からずっと眠っていたのだから

何も変わらないのかもしれなかった。

眠っている間には、記憶の時間・記憶の空間

その何れも、変わっていないのだから。



「.....あな、た、....は。」

薗子は、静かに僕に声を掛けた。

その声は、ついさっきまで聞いていた17歳の薗子と

-当然だが-同じだった。


その声に、僕はときめきを感じる。


しかし、それは.,,,,目の前の薗子に対してではなく

記憶の中の、17歳の薗子への想いであるが

僕は、錯覚してしまいそうになる。

21歳の薗子の事は、何一つ知らないと言うのに。



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