ただのダンジョン探索者ですがオリジナルスキルのせいで魔王と呼ばれています~スキル【複製転写《コピーアンドペースト》】でモンスターのスキルを習得しまくったら最強になった件~
第12話 双子の妹の姉さえいなければいい。
第12話 双子の妹の姉さえいなければいい。
俺が初めて攻略するCランクダンジョンに選んだのは、《CD-133ダンジョン》だ。
やってきた《CD-133ダンジョン》の周りには、結構な数の探索者がいた。
探索者全体で見ると、Cランクダンジョンを基本とするレベル50~99くらいの人が一番多いらしい。
レベル50までは普通にやっていればすぐ上がってしまうが、レベル100以上になる前に探索者を辞めてしまう人が多いというのがその理由だ。
何となくのノリで探索者生活を始める人もいるから、飽きたから辞めるとか、Bランクダンジョン以上のダンジョンは危険度がグンと増すから辞めるとか、そういう人が多いらしい。
もちろん俺は、子供のころから憧れていた訳で、いつかSSランクダンジョンに挑みたいと思っている。
でもまずは、段階を踏んで成長していくことが大切だ。
周りの人を見ると、剣やら盾やら弓矢やらいろんな武器を持っている。
ただ俺は、もうあの初期装備の剣すら持っていない。
人より多くスキルを習得できるため、武器を無理して買う必要はないのだ。
俺のように、武器を持たずにスキルのみを駆使して戦う人もいる。
探索者の上位層にもそういう人はいることから考えても、決して高い武器を持つことだけが強さの証ではない。
…なんて格好つけてはみたものの、実を言うと俺は武器の扱いが恐ろしく下手だったのである。
訓練すれば何とかなるなんて次元ではなく、救いようのないほどだった。
そういう訳で、俺は武器を使わないスキルに極振りすることにした。
本当は、早倉さんの【
まあ、出来ないことを考えても仕方がない。
自分の進む方向はある程度見えている訳だし、とにかく今は多くのダンジョンをこなすことだ。
今から挑む《CC-133ダンジョン》に主に出現するのは、「エレクトリック・アースワーム」という大層な名前のモンスター。
「エレクトリック」だの「アース」だの何だか強そうな単語が付いているが、要は電気を持ったミミズである。
ただ、モンスターというからには普通のミミズに電気がついた程度のものではなく、体長は1.5mくらいになるそうだ。
持っているスキルは【帯電】と【放電】。
【帯電】では電気を体に帯びて触れた相手を感電させ、【放電】では体に帯びていた電気を放出して周りの敵を感電させる。
どちらも、文字通りのスキルだ。
バカ正直に鉄製の剣で斬りつけでもしたら、たちまち感電で被ダメする。
俺は【ラビットファイヤー】で焼き払うのが基本の攻撃スタイルなのであまり関係ないが。
【ラビットファイヤー】が水系のモンスターには効果が薄いことを考えると、【帯電】と【放電】は取っておいて損のないスキルだ。
さすがに、Dランクダンジョンに住むモンスターのスキルだけでCランクダンジョンを攻略するのは無理だろうし。
人が多いことで、ダンジョンの入り口も混み合っている。
何人かでパーティーを組んでいる探索者たちもいるようだ。
ちなみに、探索者の中には独自に「ギルド」というものを作って活動している人たちもいる。
ギルドは探索者管理局のような公的な機関が管理しているものではなく、あくまでも探索者同士の私的な集まりだ。
上級の探索者になると、そのほとんどが何らかのギルドに所属している。
A、Sランクダンジョンを攻略しているギルドが実力者を集めたエリート集団だとすれば、Cランクダンジョンにいるギルドは仲良し同士でワイワイやってる集団という感じだ。
もちろん、Cランクダンジョンでもモンスターに負けて死ぬリスクもあるから、ただ遊び半分でやっているということでもないが。
「痛っ。」
あっと、ぼーっと考えながら歩いてたら誰かとぶつかってしまった。
「すいません。大丈夫ですか?」
慌ててぶつかった相手を見ると、そこにいたのは一人の女の子だ。
身長は結構低い。
それでも、ここにいるからには探索者なんだろう。
「は、はい。こちらこそすいません。」
彼女は慌てて頭を下げた。
日本人とは思えない、きれいな金髪が太陽の光に輝く。
もしかしたら、どこかの国とのハーフかもしれない。
ただ、日本語の発音はきれいで流暢だった。
「お怪我とかないですか?」
「ああ、大丈夫ですよ。」
彼女は、腰に剣をぶら下げている。
見る限りでは、高価な上質のものではないようだ。
「あ、あのっ。どこかで私の姉を見ませんでしたか?私と同じくらいの身長で銀髪の、盾を持った女の子なんですけど。」
「うーん。見てないですね。」
姉がいるのか。
どうやら、はぐれてしまったようだ。
彼女は人見知りらしく、ずっとおどおどしている。
「そうですか。ありがとうございました。」
頭を下げて立ち去ろうとする彼女。
しかし、また別の人にぶつかってしまった。
ペコペコと頭を下げている。
何だか、ほっとけない感じがするな。
「俺も一緒に探そうか?」
本当は、一刻でも早くダンジョンに入ってレベル上げをしたいところだが、何だか混み合っているようだし、彼女を少し手伝うくらいならいいだろう。
銀髪なんてそうそういないから、すぐ見つかるはずだ。
「ありがとうございますっ!!」
彼女は笑顔を見せてから、頭を下げた。
勢い良く下げた頭が、腰の剣にぶつかってしまう。
…本当にほっとけないな。
俺の思惑通り、姉はすぐに見つかった。
妹の言っていた通り、きれいな銀髪で盾を持っている。
身長も、妹とほぼ同じだった。
ただ違うのは…
「いや~、ありがとねっ!!お兄ちゃん!!」
妹と違い、人見知りというものを知らないようだ。
初対面の男である俺に対しても、「にゃっはっは~」とか笑いながら気軽に接してきた。
「一応言っとくと、俺は探索者になりたてだから『お兄ちゃん』ではないと思うけど。」
「え?そうなの?何歳?」
「18。」
「あ、なぁんだ。一緒か~。」
姉と俺が同い年でその妹も探索者ということは…
「双子なの?…ですか?」
敬語がいいのかタメ口がいいのか分からず、語尾があいまいになってしまう。
「にゃっはっは。敬語じゃなくていいよ、同い年なんだし。そう、私たちは双子なんだ。」
「そうなのか。」
「そうだよ。双子の探索者、ララちゃんとロロちゃんだよ。」
低学年女子向けアニメのヒロインみたいな名前だな。
「マジカル戦隊ララ♡ロロ」とかありそう。
いや、そんなことはどうだっていい。
「なるほど。ララとロロだな。よし、覚えた。」
「ありゃ?ロロから私たちの名前、聞いてなかったの?」
「何も。」
俺が答えると、ララはロロの方を向いて説教を始めた。
「ダメじゃない、ロロ。知らない人に話しかけられたら、まず名前を名乗らなくちゃ。」
「ご、ごめんねお姉ちゃん。そうだよね。」
ツッコミどころ満載である。
知らない人に話しかけられて名前なんか言っちゃいけないし、まず俺からナンパみたく話しかけた訳でもない。
俺が訂正すると、ララは不思議そうな顔で「違うの?」とかぬかしおった。
「違う。」
「そうなのか。てっきり、ロロに一目惚れしてナンパしたのかと思ったよ。」
どうしてそうなる。
「ていうか、お前はさっき『ありがとねっ!!』とか言ってたじゃんか。俺がロロを連れて来たの、分かってるんだろ?」
「あれ?そうだっけ?」
こいつ!!
すっとぼけやがって!!
俺が若干イラっとしたのに気付いたロロが、慌てて頭をペコペコ下げた。
「すいませんっ!!すいませんっ!!お姉ちゃんはいいお姉ちゃんなんですけど、ちょっと人をからかう癖があるというか。私もよくからかわれるというか。」
…それは、いいお姉ちゃんなのか?
まあ、本人がそう言うならそうなんだろう。
そんなことよりも、今の俺は(物理的に)小さな女の子をペコペコ謝らせている悪い奴みたいだ。
同い年ではあるんだけど。
「分かったから、そう謝らなくてもいいよ。」
俺の言葉に、ロロがやっとペコペコをやめた。
いやそもそも、ペコペコするならララの方なはずなんだけどな。
「ところで、お兄ちゃんの名前は?」
ララが聞いてくる。
「俺は、柏森麻央っていう。あと、お兄ちゃんじゃない。」
「そっか、麻央お兄さんだね。」
「お兄さんでもない。」
俺たちのやり取りを聞いて、ロロが「ふふっ」と笑いをこぼす。
何か、面白いことあったか?
「いいじゃん。お兄ちゃんって呼ばせてよ。」
「同い年だろ?」
「でもねでもね、私たち小っちゃい頃にお兄ちゃんを亡くしてるんだ。だから、お兄ちゃんになってくれる人がいたら嬉しいんだ。」
そ、そんな過去が。
もしかしてララがロロをからかうのも、ロロを元気づけるため?
…待て待て。
ロロは何か慌ててるし、ララは必死に笑いをこらえてるようだぞ。
「今の話、本当か?」
「ううん、嘘。」
こいつめ、またからかいやがった。
「あ、あの、すいませんっ!でもお姉ちゃんは、ちょっと人をからかうけど、本当にいいお姉ちゃんで…」
「分かった、分かったから。ロロは謝らなくていいから。」
「そうだよ、ロロ。」
「お前は反省しろ、ララ。」
全く、このままではララに振り回されてらちがあかない。
俺はここへ小悪魔銀髪女子に振り回されようと来た訳じゃないのだ。
「それじゃ、俺は行くからな。」
「え?どこ行くの?」
またしても、ララがすっとぼける。
「あのな。俺がここにスーツ買いに来たとでも思うか?攻略だよ、ダンジョン攻略。」
「あ、なんだ。
「俺はスキル駆使して戦う派だからな。あと、
ララとロロの場合は、ララが攻撃を防いでロロが一気にアタックという感じで戦っているのだろう。
性格からすると、攻守逆な気もするけどな。
「じゃあさ、私たちとパーティー組まない?今日だけでもいいからさ。」
「はぁ?何でだよ。」
「だってさぁ~。」
ララは、自分の持っている盾を見せてくる。
ロロの剣と同じく、特別高価でも上質でもない平凡な盾だ。
「私の盾もロロの剣も、鉄製だよ?エレクトリック・アースワームにビリビリやられたら、たちまち被ダメだよ?かわいそうな妹たちだと思わない?」
「知るかよ…。てか、何で鉄製の武器でここに来たんだ?」
「本当はね、他の人たちも来るはずだったんだけど、みんな都合が悪くなっちゃって私たちだけになっちゃったの。」
他の人たちっていうのは、ギルドのメンバーだろうか。
要はドタキャンされたということなのだろう。
「仕方ないな…。だけど、俺はCランクダンジョンを攻略するの初めてだぞ?」
「そんなの気にしないよ。私たちもまだ、レベル51だし。」
俺より下か。
ってことは、Cランクダンジョンも数えるほどしか攻略していないはずだ。
一応、この《CD-133ダンジョン》はレベル50になりたての人でも攻略できる難易度になっている。
それなら、大丈夫か。
「分かったよ。一緒に行こう。」
俺はため息交じりに答えた。
根負けするとは、まさにこういうことなんだろう。
何だか、俺とララでは精神が別次元にあったような気もするが。
「わ~い!!お兄ちゃん、ありがとう!!」
「ほ、本当にいいんですか?ありがとうございます。」
歓声を上げて飛び跳ねるララと、ペコペコするロロ。
俺にはこの2人が双子、それも姉はララということがとても信じられなかった。
「あ、そうだお兄ちゃん。」
「何だ?あと、お兄ちゃんじゃない。」
「ロロはすごいよ~。何たって、オリジナルスキル持ちだからねっ!!」
俺は、素直に驚いた。
「本当か?」
「は、はい。一応…。」
恥ずかしそうに、ロロが答える。
でもこの時、俺は知らなかった。
この遠慮がちな女の子が、あんなスキルを持っていたなんて…。
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氏名:
年齢:18
《STATUSES》
レベル:56
攻撃力:680
防御力:680
速 度:680
幸 運:680
体 力:680
《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【
【体当たり】Lv.2
【粘膜シールド】Lv.3
【分身】Lv.2
【跳躍】Lv.1
【ジグザグジャンプ】Lv.2
【ラビットファイヤー】Lv.4
【催涙花粉】Lv.1
【ステムバレット】Lv.1
【進化】Lv.2
【
〈ノーマルスキル〉
【鑑定眼】Lv.1
【ウィンドアロー】Lv.1
スキル習得ポイント:2650
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