ただのダンジョン探索者ですがオリジナルスキルのせいで魔王と呼ばれています~スキル【複製転写《コピーアンドペースト》】でモンスターのスキルを習得しまくったら最強になった件~
第1話 目には目を、スライムにはスライムを
ただのダンジョン探索者ですがオリジナルスキルのせいで魔王と呼ばれています~スキル【複製転写《コピーアンドペースト》】でモンスターのスキルを習得しまくったら最強になった件~
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第1話 目には目を、スライムにはスライムを
世界中にモンスターの住むダンジョンが溢れ、麦わら帽子のゴム人間が「ダンジョン王に俺はなる!!!!」と言って地中に潜っていき、竹くわえた妹を連れた少年がモンスターの首を斬りまくって心を燃やしている時代。
…と、ここまで来るとさすがに漫画やアニメの世界の話だが、世界にダンジョンがたくさんあるのは本当だ。
そしてそのダンジョンに潜り、モンスターを倒すことで金を稼ぐ人たちもいる。
彼らのことを、一般に探索者と呼ぶ。
探索者は特殊なスキルや「攻撃力」「防御力」などのステータスを活かして、ダンジョンを攻略する。
スキルやステータスは、探索者になると自動で各自に割り振られる。
探索者は子供の憧れの的だ。
子供たちは探索者の強さやかっこ良さにワクワクを覚え、「自分も強い探索者になりたい!」と、日々モンスター役のお父さんに飛びかかっているのである。
そして今日、新たに探索者としての一歩を踏み出す男が一名。
探索者に憧れ続けて十数年、晴れて18歳となり探索者の資格を得た
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「来た来た来た来た来た来た来たぁぁ!!ついにこの日が来たぁぁ!!」
俺、柏森麻央は目を覚まし、ベッドの上で歓声を上げた。
本日の日付は5月10日。
俺の18歳の誕生日だ。
そして今日が来たということは、俺が探索者の資格を得たことを意味する。
意気揚々とベッドから出て服を着替えた俺は、台所で冷たい水を一気に飲み干した。
コップを勢いよくシンクに置き、両手を突き上げる。
「来たぁぁ!!」
「朝からうるさいっ!!」
隣の部屋の住人に怒られてしまった。
俺が住んでいるのは、築30年の小さなアパート。
壁が薄く、隣の部屋まで簡単に音が届いてしまうのだ。
「す、すみません!」
一言謝って、テレビをつける。
「本日、期待の新星である柏森麻央さんが18歳の誕生日を迎えられました。これから探索者として活躍されることを、大いに楽しみにしましょう。」
…なんてニュースがやっているはずもなく、ありふれた話題ばかりだ。
つまんないニュースを、「あげパン」という愛称で親しまれる
愛称「あげパン」はどうかと思うけどな。
どうでもいい話題なので、俺はすぐテレビを消した。
朝食として8枚切りの食パンを1枚口に詰め込み、牛乳で流し込む。
冷蔵庫に残っていた唐揚げも口に放り込むと、俺は出かける支度を始めた。
今日俺は、探索者になるために近くの「探索者管理局」というお役所に行く。
そこで探索者として申請し受理されれば、めでたくダンジョンに潜り放題という訳だ。
ダンジョンにはたくさんのモンスターがいて、それを討伐することでお金がゲット出来る。
つまり今日は、俺の誕生日&就職記念日なのだ。
「さて、行くぞ!」
用意を整えた俺は、勢いよく玄関の外に出た。
すると、同時にお隣さんも部屋を出てくる。
目が合った俺を見て、お隣の女性(多分同い年くらい)は不機嫌そうに言った。
「あの、もうちょっと静かにしてもらえませんかね?」
「あ、ほんとに、あの、すみません…。」
小さな声で言って頭を下げる。
言い忘れてたけど、俺は女性と話すのがかなり苦手なのだ。
15分ほど歩き、白塗りの大きな建物の前にやってきた。
「探索者管理局 第24支部」と、大きく記されている。
「いよいよだっ!」
力強く拳を握りしめ、俺は管理局へ入った。
発券機で番号の書かれた紙を取り、適当な椅子に座る。
見たところ、俺と同じように申請に来た人が10人ほどいるようだ。
受付カウンターは5つあるし、すぐ呼ばれるだろう。
「番号札34番の方、どうぞ〜。」
思った通り、10分もせずに俺の番号が呼ばれた。
俺はやや緊張しつつ、3番カウンターの前に座る。
手続きをしてくれるのは、30代くらいの男性職員だ。
良かったぁ…女の人じゃなくて。
「それではまず、こちらのQRコードを読み取ってください。」
男性職員の提示したQRコードをスマホで読み取ると、新しいアプリが追加された。
探索者に憧れ続けた俺は知っている。
これが、「D-GUIDE」という探索者必須のスマホアプリだということを。
このアプリには、端末所有者のダンジョン攻略記録、ダンジョン内のマップ機能、モンスター図鑑、スキル図鑑など様々な機能が集約されていて、これ無しにダンジョンに潜ることは出来ない。
「無事インストール出来ましたね。では、アプリを開いていただいて基本的な情報の入力をお願いします。」
指示に従い、氏名や年齢、性別などを入力する。
男性職員が確認し、処理を完了した。
「さて…」
俺の呟きに、男性職員はにっこり笑って言った。
「ここからですね。」
「はい。」
いよいよ、俺のステータスと初期に所持しているスキルが表示されるのだ。
「みなさん、この瞬間をとても楽しみにされていますよ。」
「そうでしょうそうでしょう。俺も今、すぅぅぅっごく楽しみです。」
「では、そちらのボタンを。」
画面上に「STATUSES OPEN!!」と書かれたボタンが表示されている。
俺は一度大きく深呼吸すると、覚悟を決めてボタンを押した。
一瞬画面が暗くなり、そして詳細なデータが表示される。
俺は震える手で、一つ一つのデータを確認した。
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氏名:
年齢:18
《STATUSES》
レベル:1
攻撃力:100
防御力:100
速 度:100
幸 運:100
体 力:100
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…まあ、酷くはないか。
初期時点でのステータスの各項目は、100前後が平均的と言われている。
全てが100の俺はThe平均。
決して良くはないが、悪くもないというまあまあな数字だ。
各項目の数値は、レベルが上がるに連れて上昇していく。
モンスターを倒したりダンジョンを最下層まで攻略すると、経験点が貰えてレベルが上がるという仕組みだ。
「全部100とは珍しいですね。」
男性職員も、興味深げにスマホの画面を覗き込んでいる。
「次はいよいよ、スキルですね。」
男性職員の言葉に頷き、俺は画面を下へスクロールした。
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《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【
〈ノーマルスキル〉
未所持
スキル習得ポイント:0
---------------------------
「「こ、これは!?」」
俺と男性職員の声が重なった。
2人とも驚いて、画面を見つめている。
それもそのはず。
何と俺は、数千人に一人しか手にしないというオリジナルスキルを手に入れたのだ!
「お、おめでとうございます!これは本当にすごいことですよ!」
男性職員が上ずった声で祝福してくれる。
「あ、ありがとうございますっ!」
やばいやばいやばいぞ!
この展開は激アツすぎる!
ステータスもまあ悪くない数値な上に、まさかのオリジナルスキル持ちだ!
これはマジで新星になれるんじゃないか!?
興奮そのままに、俺は【
スキルをタップすると、そのスキルの詳細な情報が表示される。
---------------------------
【
効果:???
---------------------------
詳細な情報は「???」だった。
まあ仕方がない。
オリジナルスキルということは、世界でこのスキルを持つのは俺だけ。
誰も使ったことがないため、どんな効果があるのかまるで分からないのだ。
「オリジナルスキルですから、仕方ありません。使ってみて分かったことがあれば、ぜひ報告してください。」
少し落ち着きを取り戻した男性職員が、優しく声をかけてくれる。
「分かりました。」
俺が答えると、男性職員はタブレットの画面を見せながら解説を始めた。
「まずは、この《DD-208ダンジョン》に行ってみることをおすすめします。あ、ダンジョン名の表記法は分かりますか?」
俺は頷く。
例えば《DD-208ダンジョン》の場合、最初のDはダンジョンのランク、2番目のDはそのまま「ダンジョン」の頭文字、208は識別番号になっている。
ダンジョンのランクにはD、C、B、A、S、SSの6段階があり、初心者の俺はとりあえずDランクダンジョンに挑むのが賢明だ。
「《DD-208ダンジョン》には、スライム以外のモンスターは出現しません。それもレベルの低いスライムなので、駆け出し探索者のみなさんはここで戦闘に慣れたり、レベルを上げたりしていますよ。」
言ってみれば、ゲームのチュートリアルステージみたいなダンジョンだ。
「ありがとうございます。早速今日、行ってみます!」
「ええ。ご健闘をお祈りします。」
その後も細かな説明を受け、俺は管理局を後にした。
管理局を出てから「D-GUIDE」の指示通りに歩き、俺は《DD-208ダンジョン》に到着した。
右手には剣を持っている。
管理局で、初期装備として無料配布されたものだ。
もちろん、特別なスキルも何も無いただの刃物。
ここから金を貯めて、優秀な武器を買い強くなっていくのだ。
「さて、初めてのダンジョン攻略だ!」
期待に胸を躍らせながら、俺は《DD-208ダンジョン》の扉を開けた。
薄暗く、若干かび臭いダンジョンの中。
やや湿った土の地面を踏みしめながら、緩い下り坂を下っていく。
50mほど歩いたところで、何かが近づいてくる音がした。
ポチャンポチャンと、弾むような音だ。
ダンジョン攻略関連のまとめサイトに書かれていた、スライムが近づいてくる音だろう。
「来たな。」
俺は暗闇の先へ、剣を構えた。
すぐに、スライムがその姿を現す。
水色でゼリー状の、丸いモンスターだ。
サイズは人間の頭2つ分くらい。
そこまで大きな個体ではない。
「やるか!」
剣を振り上げたところで、俺は一度動きを止めた。
記念すべき最初のモンスターだ。
オリジナルスキルで倒した方が良くないか?
そう思った俺は、剣をしまうと何となくのイメージで手を前にかざした。
そして叫ぶ。
「【
途端にスライムの体が弾け、俺は記念すべき1体目のモンスターを討伐する。
…はずだった。
はずだったのだが、何も起こらない。
「くきゅぅ…」
スライムがそのゼリー状の体を震わせた。
そして一気に飛び上がり、俺にぶつかってくる。
「痛っ!」
たかがスライムだと思っていたが、かなり痛い。
今のはスライムの攻撃スキル【体当たり】だ。
体力がわずかに削られた。
「くそぉ。何だろう、使い方が悪かったのか?」
詳細が「???」なスキルを何とか発動させようと、俺は再び叫ぶ。
「【
さっきより力を込めて叫んだのだが、やはり何も起こらない。
それどころか、2発目の【体当たり】を食らってしまった。
「痛ぁぁ!」
体力的にはまだ余裕があるのだが、衝突の衝撃で体はかなり痛い。
と、スライムがまさかの連撃に出た。
3度目の【体当たり】。
それも、クリティカルヒットしてしまう。
さっきまでの2回より圧倒的に強い痛みが、俺を襲った。
残りの体力は、気が付けば90になっている。
「痛い痛い!何なんだよ!オリジナルスキル持ちっていったって、何も使えないじゃないか!!」
俺の叫びも虚しく、スライムが再び【体当たり】の態勢に入る。
俺は呟いた。
「ああもう!【体当たり】はやめろって…」
そう、俺はただ呟いた。
それだけだ。
しかし、その呟きによって俺のオリジナルスキルが目覚めた。
[スキル【体当たり】Lv.1を
脳内に声が響く。
目の前に、「Yes」と「No」の2つのボタンが表示された半透明のモニターが現れた。
俺はよく分からないまま、「Yes」を選択する。
再び、声が響いた。
[スキル【体当たり】Lv.1を
[スキル【体当たり】Lv.1を習得しました。]
…え?
スライムのスキルを習得…?
モンスターのスキルは、人間には習得出来ないはずなのに…?
この瞬間、俺の体中をゾワゾワとした予感が駆け抜けた。
腕を見ると、めちゃくちゃに鳥肌が立っている。
試しに俺は声に出してみた。
「【体当たり】…」
俺の体がスライムに引き寄せられるように近づいていき、激突する。
「くきゅぅ…」という鳴き声と共に、スライムの体が弾け飛んだ。
「た、倒した…?スライムをスライムのスキルで…?」
俺はハッとして自分のステータスを確認する。
スキルの欄には、確かに【体当たり】が追加されていた。
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《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【
【体当たり】Lv.1
〈ノーマルスキル〉
未所持
スキル習得ポイント:0
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【体当たり】は、オリジナルスキルの扱いになっている。
タップすると、その詳細が表示された。
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【体当たり】Lv.1
効果:突進してぶつかった対象にダメージを与える。
与ダメージ:自身の攻撃力×5%
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え?攻撃力のたった5%?
今の俺の攻撃力は100だから、与えられるダメージは5。
それで倒せたってことは、あのスライムの体力が5以下ってこと?
それも自分のスキルで倒されるとは、何とも不憫なスライムだこと…。
ともかく、よく分からないうちに初めての攻撃スキルゲットだ。
さすがに攻撃力×5%ではスライムぐらいしか倒せないが、スキルのレベルも上がるだろうし何とかなるだろう。
新たな攻撃スキルも習得出来るはずだし。
何と言っても、モンスターのスキルを持つ探索者なんて聞いたことがない。
これだけで、すごいことだ。
しかも2つ目のオリジナルスキル。
至れり尽くせりとは、まさにこのことである。
「お、これは…」
俺は、スキル欄の【
タップしてみる。
すると、「???」ではない詳細な情報が表示されていた。
---------------------------
【
効果:言葉にした戦闘相手の持つスキルを
ただし、
---------------------------
「マジか…」
これは…このスキルは…強すぎる。
たった今スライムのスキルを手にしたように、この世界のダンジョンに住むありとあらゆるモンスターのスキルを入手し放題という訳だ。
それに、スキル習得に必要な「スキル習得ポイント」の消費も無い。
本来であれば、スキルはダンジョン攻略完了時に貰えるスキル習得ポイントで獲得する。
つまり、ダンジョンに一度入ってしまえば、出るまで新たなスキルは獲得できないという訳だ。
しかし、このスキルがあれば新たなモンスターと出会う度に新たなスキルが手に入る。
俺だけが使える、超強力な成長法だ。
「来たこれ来たこれ来たこれ来たこれぇぇぇぇ!!」
このままスキルを覚えつつダンジョンを攻略していけば、モンスターのスキルでモンスターを倒すなんてオシャレなことが出来る世界で唯一無二の探索者になれる。
それを理解した俺は、興奮のあまり叫ばずにはいられなかった。
まあ、この時の俺は知らなかったんだ。
モンスターのスキルを習得しまくった探索者が、到底「オシャレ」とは見られないことを。
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氏名:
年齢:18
《STATUSES》
レベル:1
攻撃力:100
防御力:100
速 度:100
幸 運:100
体 力:100
《SKILLS》
〈オリジナルスキル〉
【
【体当たり】Lv.1
〈ノーマルスキル〉
未所持
スキル習得ポイント:0
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