第7話 第三魔法騎士団
第三魔法騎士団の仕事は主に国境沿いの警備と害獣の駆除だ。
サーシゥ王国はパカレー共和国とナルボヌ帝国そして海に囲まれた国だ。
空から見たなら歪な三角形に見えるだろう。
そして、互いの国境線はアーティファクトである魔道具で線引きされている。
どういう事かって?
国境に近づくと不可視の壁に阻まれるんだよ。一定以上の魔力が無い物、例えば先程の赤熊や大猪などの動物や雨や風なんかは素通りしちまうがね。
なんでもその魔道具は各国のトップが代々受け継ぐ代物で現在の魔法科学じゃ作れないらしい。
ウチの王様とあっちのトップが揃って儀式を行う事で魔道具が作動し国境線に壁ができるって寸法だ。要は「お互い納得してココを国境にしますよ」って確認儀式をする訳だな。
片方の国だけじゃ作動も解除も出来ない。勿論戦時中は壁は無い、両国の開戦宣言と共に解除されるからな。
つまりだ、コイツを操作する時は戦をおっぱじめる時か戦後の領地が変更になる時だけって事だ。
そんな訳で国境沿いの警備ったってのんびりしたもんだ。害獣は間引かなきゃならないが、大事件が起こる事なんてまず無い。
お高くとまった王城の貴族様を相手にする第一魔法騎士団や国内警備でわちゃわちゃやってる第二魔法騎士団よりぶっちゃけ俺たちの重要度は低い。
まぁ、だからこそ俺なんかが副団長出来てるんだけどな。団員にはクリミアやウルトみたいに孤児院上がりの奴等も多い、後は上から落ちてきたやつだな。アレスは元々は第二魔法騎士団所属の回復魔法士だったが、やらかして下ここに来たらしい。詳しくは知らねぇがビエル団長も昔は第二にいたって話だ。
ところがだ、今日は何時もとは様子が違った。
まず赤熊が出た、赤熊の生息地はパカレー共和国だ。餌を求めてこっちに来る事も珍しくはないが時期がおかしい。
次にあの筋肉モリモリのアイツだ、あんな姿の種族なんて見た事ないが人か?
しかも魔力が出鱈目に高ぇ! 俺だって結構魔力量には自信があるのに軽々
どっから湧いたかわからねぇが、あんだけ魔力があるんだからの確実に国境の壁にぶつかる、だから他国のスパイって事は多分ありえねぇ。
ーーじゃあアイツは何だって話だが…
俺達の見解は「忌子」だ。
「忌子」は見た目が普通じゃなかったり、身体に変な特徴をもった生まれた子で、田舎の村じゃ未だに呪いの象徴ってんで殺されたり山に捨てられるらしい。
今までどうやって生き延びたのかは知らねぇが、きっと苦労してきたんだろうよ。あの顔見りゃ分かるさ。
それで優しい我らがビエル団長は取り敢えず保護対象にしたって訳だ。
◇
荷車を引く馬の口に時折り氷の塊を入れながら私たちは国境沿いを歩く。荷車には沢山の熊肉と彼、あとウルトが腰掛けてる。
(もうっ、ほんとすぐサボるんだから! 赤熊だってまた出るかもしれないのにさぁ、緊張感ないあなぁ!)
私がイライラしているのはきっとウルトがサボってるせいだけじゃない、ウルトが彼がの近くに居るからだ。
(人見知りのウルトが笑ってた…。私だってあまり笑ったとこ見た事ないのに! 最近は特にそう…まだまだお姉ちゃんのウルトでいて欲しいのにぃ〜!)
彼は「忌子」らしいとカイルさんが言っていた、変な姿の子供を山に捨てる村があるなんて!
確かにちょっと…うぅん、だいぶ? 変わってるけど、捨てるなんて可愛そうだよ。
今までずーーっと一人で森に居たから言葉も話せないんだろうって。
…決めた! それなら私がお姉ちゃんになってあげよう! ウルトと彼が妹弟なら仲良くしててもお姉ちゃんは悔しくないしね!
そんな事考えながら歩いていると森がざわつき始めた。
(また赤熊!?)
後に合図を送り馬を止める。風に乗ってくる微かな油と鉄の匂い。森の左手からは鳥や虫の声が消えた。耳を澄ませると次第に草をかき分ける音や複数の話し声が聞こえ出した。
(こんな所に人?)
ガサガサ ガサガサッ
森から10人くらいの兵士が出て来る。
向こうの兵士たちも私達がこの場に居るのは予想外だったらしく酷く驚き、動揺している。
(あのシンボルマークは…パカレー軍?なんで他国の軍がここにいるの!?)
「だ、団長!パカレー軍です!」
「おい、ここはサーシゥ王国領内だ! わかっているのか?一体どうやって・・・」
「
ビエル団長が声をかけたその時、轟々と突風が襲う! 咄嗟に地面に伏せるが馬と荷車がやられた。
「あっ、ウルト!?このぉ
私が
「おいおいおいおいッ! どうなってやがる? どうして他国の軍隊がここにいるんだよッ!」
「わからんが、相手はやる気だ……やるしかないだろう。森まで壁を作る、カイルは森から奴等を撹乱してくれ」
「こ、これ国際問題になりませんかね?」
「先に手を出したのはアイツらだ、それにコッチサーシゥ王国に居る時点でもう既に国際問題だよ! アレス、お前はとにかく
「すまんなアレス、ぶっつけ本番だが頼めるか? 出来れば殺さずに拘束したい。先程の赤熊の時みたいに視界を奪う事は出来るか?」
「…やってみます、恐らく動物よりも対人の方が
「団長! 私はどうすれば…」
「クリミアはウルトと一緒にカイルが森に入るまで
「彼はどうしますか? きっとウルトと一緒に居るはずです!」
「彼か……救助するにはタイミングが最悪だったな……。拘束を解いて森へ逃せ! だが自分の命が最優先だ! 無理そうなら荷車の下に転がして置け、運が良ければ助かる」
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