107話 その頃地上では…

 王都アルデスク同様、グレイラット王国中心近くに位置する街、リボーン。他の土地と比べモンスターアベレージも低いことから、多くの新米冒険者が集まる街としても有名であり、始まりの街とも言われている。


 そして今日ものどかで平和な1日が過ぎていく………筈だった。



 ―大河たちが落下してくる少し前―


「緊急警報!緊急警報!突如として魔王軍の一部隊が街の付近に接近しているのが確認されました!街にいる全冒険者は今すぐ北門前に集合してください!繰り返します、街にいる全冒険者は今すぐ北門前に集合してください!」


 鳴り響く警戒音に街に滞在していた冒険者たちは焦る気持ちを抑える暇もないまま北門へと急行し、街へと近づいてくる魔王軍部隊と戦闘を開始した。


 しかし戦力の差は歴然で冒険者たちは苦戦わ強いられていた。


「偵察するだけのつもりだったんだがな。まさかここまで脆弱な冒険者しかいないとは。これならそのまま落とせそうだ。ヒッーヒッヒ‼︎」


 クエストなどにより街では強者の冒険者などが不在な事もあり、戦力を大きく欠いていた冒険者側は圧倒的な戦力差に僅かな勝機すら見出せず戦意を失いかけていた。


「くっ、このままでは」


「みんな諦めるな!守り続けて入ればきっとなんとかなる‼︎」


「だけどこの状況じゃ!」


「それに頼みの綱の連絡網も故障していしまっているみたいだし。このままだと…」


(マズイ!な、何かないのか?何か…この危機的状況を逆転できる方法は!?)


「ん?おい、アレを見ろ」


「何だあれ?人…か、あれ?何であんなところに」


「空から何か降ってくるぞ」


人間奴らの動きが固まったぞ、何かの作戦か?まあいい、今の内に…ん?」


 早々に決着を付けようとしていた矢先、襲撃に来た魔王軍は自分たちの足元に急に影が落ち、不審に思い空を見上げると人らしき何かが迫ってきているのを確認した。


「何だありゃ?人間共の作戦か?あんな所から何しようってんだ?…って危ねっ⁉」


 奇襲なのか何なのかわからない謎の物体に気を取られているとそこから謎の球体らしき物が頭上から落ちて来た。


「まさか奴らああして空から物体を落して我々の注意を分断する作戦か?小癪な!」


「ウエルグ様!落ちて来たこの鉄の球体なのですが…中から断続的な点滅音が聞こえてくるのですが」


「チィィッッ!そんなガラクタなどほっといて…待てよ、点滅音?まさかそれ爆弾か⁉」 


「「「ええっ!?」」」


「おい、お前ら!今すぐそれから離れて…」


 敵の指揮官が注意しようとした瞬間だった。敵は一瞬白い光に包まれた直後、ただそこに居合わせただけの魔王軍の軍勢は見事王女らの特殊趣味エルノアらの娯楽という名の爆弾に巻き込まれ、その爆発による衝撃を間近で受けるのだった。


そして…


「ウギャャァァーー‼‼」


「ホォワァァーー‼凄い!凄いぞー⁉」


 爆発の衝撃を受け阿鼻叫喚の表情をする大河と、対照的に爆風を全身で受け止めて快感に感じているエレノアと、その幸せそうな表情をウットリと見つめているクラリスの姿は誰の目にも見えなかった。


 爆発によって巻き起こされた砂ぼこりが静まり始めてきた頃に爆発の被害に遭った大河たちや魔王軍はようやく気を取り戻し、防衛していたリボーンの冒険者たちは予期せぬ爆破に呆気に取られていたが、目の前の爆発の被害に巻き込まれた敵も唖然としているのに気付きその隙を付いて形勢を逆転させていった。


「痛たたたた…って、生きてる、な。絶対死んだと思ったのに。体は…よかった、四肢爆散してなくて。感覚も…一応大丈夫そうだ」


にしても、あれだけの目に遭って爆発と落下のコンボ食らって普通に生きてるなんて…能力値やらスキルのお陰だとは思うけど、どんどん人間から離れていってる気がする


 危機的状況を乗り越えて体の無事を喜ぶ半面、色々と複雑な心境だった大河の足元には


「ううぅ…どうして我々がこんな目に」


やべっ!まさか下に人がいたのか⁉こんなくだらんことに巻き込まれるとは可哀そうに…俺もだけど。って、そんなこと考えて場合じゃない!取り敢えず助けないと


「だ、大丈夫ですか?」


「ええい!こんな目に遭わされて大丈夫に思えるのか⁉」


ですよね~


「手を貸しますので掴まってください」


「まったく、何故我々がこんな目に…奴らめ、絶対に許さんぞ!」


何処の何方のことと勘違いしているか存じませんが、犯人は恨めしくも俺の連れなんです。ゴメンナサイ!!


「指示した者と実行犯は見つけ次第見せしめとして必ずつるし上げてやる!」


うわぁ〜スゲーご乱心だこと。まあ、いきなり爆発なんかに巻き込まれたんだから当然か



「えっ?」


今なんて…って


「「ん?」」


 目の前に人物から放たれた予想外の台詞に疑念を抱いていると両者とも、ある違和感に襲われた。


((何だ?コイツの手))


 大河がはだいだい色、魔族上級インプのウエルグは薄紫という大きな違いがあり、それぞれ相手の握っている手の肌色が自分のそれとは明らかに違うことは僅かに砂が舞う中でも明白だった。


なんかこの人の手、やけに血色が薄いというか…普通と色が違くないか?元々そういう種族なんだろうか?爪もやけに長いし


(こんな肌色の奴、ワシの軍におったか?)


 おかしいと思い両者とも相手の顔に視線を向ける。その時、砂ぼこりが完全に晴れて視界が正常に戻り、相手の顔がはっきりと視界に映し出された。そして両者は驚愕する。


「あんた誰だ?」


「お主こそ誰じゃ⁉」


 大河は角の様な触角を生やしている人間ヒューマンとはかけ離れた容姿をしている見た事のない種族にであることに、ウエルグは手を貸した相手が同じ魔王軍の者だと思っていたのにその相手大河の肌色や顔つきが人間のそれだったことにそれぞれ驚きを隠せなかった。











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