78話 凱旋
アルゼンス公国。グレイラット王国を覆う形で北東、南東、南西、北西にそれぞれ存在している中の北東にある公国であり、王国に属国している4公国の内の一つである。
そのアルゼンス公国に突如出現し国民を恐怖で震え上がらせていた
恐怖の象徴と囁かれている程の《ウォークディザスターズ》の討伐成功によりアルゼンス公国の民は勿論、王国全土がこのニュースに歓喜していた。
そしてこの戦いと立役者となった
それに伴いエルド隊長を筆頭とした王室警備部隊は表彰式が行われる会場の広さを想定した兵の配置確認。警備体制に不備がないかチェックしたり、想定外の事態に対する対応の仕方などを今日の為に召集された各地区の警備隊長と早朝から会場に集まり最終チェックを行っていた。
この手の催しは英雄の帰還を待ちわび祝福しようとする住人や国王陛下の姿を一目見ようとする観衆。或いは両方を一遍に目撃出来るこの機会を逃すまいと
今日一日は様々な対応に追われることが予想されるためなるべく移動を円滑に進められるように、怪我人を出さないように、他地区の警備隊員が派遣されいた。そいてなるべく穴が無いようにあらゆる点を見直しながら念入りに確認作業が行われていた。
ルブノス国王や王城勤めの者も式の段取りの確認や支度などで朝から大忙しであるとそれを伝える為とに残されたメイド長から食事中に説明を受けた。大河は初めて広いテーブルで食事を行う寂しさを味わい~少し理解した。
(相変わらず料理はおいしい。おいしいけども…)
まるで祝いや宴、英雄の帰還を祝福するかのような晴れ晴れとした日の光が王国を照らし、人々も予報通り今日の凱旋が無事晴れ中で行えることに喜んでいた。しかし唯一大河だけが天候や住民とは反して心の中が曇り空だった。
しかも本日は王城全体が激務な事もあって他の者達も早々に朝食を済ませており、結果的に大河はあまりにも広すぎるテーブルに一人で朝食を摂ることになったため、気持ちの沈みにより拍車をかける事となっていた。
(虚しいというか、悲しいというか。まるで一人っきりだったあの頃みたいだな…別の意図もあるんだろうけど陛下が大勢で食卓を囲みたい気持ちが今なら分かる気がする)
「それで先程申しました通り本日は東地区で王国でもトップクラスの実力派パーティー凱旋されます。陛下も興味があるのならば見に行った方が良いと仰っておりました」
(それにしてもどうしようかこれから。流石にスキルがあれだと…はぁ)
「それでどうされますか?」
(料理系の才能はあったみたいだしなんなら
「タイガ様?」
メイド長の呼びかけでようやく我に返る大河。
「!す、すいません。ちょっとボーっとしてて」
「そうですか」
「それで、えっと…何でしたっけ」
「東区に向かわれますかとお聞きしましたが、どうされますか?」
(祝い事って気分ではないんだけど…うじうじしてても仕方ない。それに気分転換になるかもしれないし)
「畏まりました。それでは…」
その数分後大河はメイド長と共に東区へと
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メイド長に連れられ東区東門前から少し離れた場所へとやって来た。引かれていた停止線一杯まで詰め寄る人々だけでなく建物の窓や屋上などからも半分身を乗り出しており、これでもかというくらい民衆が英雄の帰還を今か今かと待ちわびていた。なかにはラインを越えてこようとする者もチラホラおり~がそういった人物の対応に追われている姿が目に入った。
「凄い人の数ですね。冒険者パーティーの人気が伺えます」
「そうですね、王国一の冒険者パーティーですからね。恐らくもう少しで…」
「おー!ブライト―!」
「あれってもしかしてミクス!?お面を外している姿初めて見たわ!」
「マルグレアー!こっち向いてー!」
まるで王都全体に響きそうな地鳴りのような大歓声が都市外から熱気と共に伝わってきた。それに釣られて都市内の住民も待ちわびた英雄の到着に気分が高揚していった。
「どうやら外の門前に到着したようですね」
「都市外にも人が集まっているんですか?」
「ええ、このような場合都市外からもかなりの数の方々がこの王都に来られますからね。しかし東区だけでもかなりの数の住民がおります。それに加えて北、南、西、中地区の計4地区からもそれぞれ同人数程の方々が押し寄せます。いくらこの東地区から中地区までが距離があると言ってもこの一本道の両脇にそれれだけの人数が並ぶのはかなり無理がありますからね」
「確かに人が多すぎてギュウギュウ詰め状態ですからね」
「いえ、それだけではありません。建物の上を御覧ください」
言われた通り見上げるとそこには複数足の生えた白いUFのようなクネクネした生物と気球のような物体が人を乗せて浮遊していた。
「あれは何ですか?」
「王国で所有している浮きクラゲと魔力気球です。こういった際の観賞時や乗り物として使用されます」
「まるで小さな雲みたいですね。確かにこれ見ると…全員は難しいですね」
そのあまりの数からそれらに上席しているであろう人がこのほぼ埋め尽くされている街道に降りてきた場合どうなるのかを考えたらメイド長が言っていた通り収まりきるのは無理があると思った。
「あれだけ人を乗せてても混雑しているんですね」
「ええ、まして都市外の方々がそこに参列されるとなると
「そうなんですね…ん?」
メイド長の言葉に大河はある疑問が浮かんだ
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