OverKill:LifeMeter
空飛ぶこんにゃく
ー 焼燬の過去に
薄暗い森の中、一人の少女は連れの帰りを待っていた。彼女は巫女服にミニスカートという、人の目を引くような格好をしている。
天気は曇り。森の静けさも相まって、鬱蒼とした雰囲気が漂っていた。
――そんな中、突然"それ"は起きる。
「――っ! へぇ……」
その黄色の瞳にベージュ色の短髪の少女――
長時間腕の上におもりを乗せていたせいでグダった、とかではない。
ならば、どこかに敵がいるはずだ。
木々の隙間を抜けながら、軽く周囲を感知してみても、大きな気配は感じられない。身を隠しているのか、それとも遠距離から攻撃をしてきたのか。
左腕からは完全に力が抜けていた。否、それ以上に感覚をも失い、動かすことも不可能となっていた。
駆けながら、
「んー……?」
左腕に伝達する力が抜け落ちている、奇妙な感覚がそこにあった。どのような攻撃を受けたのかはまだ不明であるが、左腕が使用不能になったのは確かである。全く動かせない。
刹那、悪寒を感じて
「ッ!」
その一瞬の回避の隙間に、
そこで
どうやら相手は"口"を召喚し、それで噛み砕くことで感覚を奪うことができる異能を持っているようだ。
不気味であるが、今のところ攻撃性は薄い。
ならばやることは一つ。
「っ!」
火炎を纏った右腕を振るい、三百六十度全方向へ火炎の波を発生させた。森が火の波に飲まれていき、周囲を大火が包みこむ。
森ごと燃やしていく。これで近くを虱潰しにできるだろう。
もし敵が近くにいるのなら、この火炎の波を異能か何かを使って防ぐ、または回避するはず。その際の動きを感知し叩く。それが
――唐突に、目の前に放たれていた火の波に穴が開いた。
そこからは炎の波を断ち切って大きな口が現れ、
正面にいたのか、と
棚引く火炎は炎の刃となって放たれ、現れた大きな口を真っ二つにかち割った。意外なことに血が噴き出し、周囲へ飛び散る。
"実体"があるのか――
「――っ!」
「おっと」
隣から一つの影が飛び出てきて、
その人影は掌底突きを
「その姿見たり、ってね」
そう余裕そうにぼやく
が、
人影に対し火炎が炸裂したかのように見えて――が、それは叶わない。命中する寸前で人影の前に"口"が現れたのだ。"口"は火炎を飲み込み、小さな火花を散らしながら虚空に消えていく。
「……!」
そんな中、間髪入れず男の掌底付きが再び放たれる。彼女はそれをスウェーで避けた後に背後へ跳んだ。
それは僅かな間だったが、その隙に目の前から放たれたそれに付随した気配を、
人影が放った掌底、そこには妙な気配を感じていた。隙を測り目視してみたら、そこには例の"口"がついていた。
なるほど、これが"口"の気配か。
そして
ならば、と
人影の掌底突きを動かせる右腕で相殺するフリをし感覚を吸わせて、その隙に火炎を纏った足蹴りで仕留めよう、と。
その思考時間と実行に移すまでの時間はまとめて一秒ほど。
「……!」
悪寒が走った。何かマズい。
原因はあれだ、
ヤバい、
「……っ」
人影の掌底突きと
その隙を狙った
――危なかった。あの"口"は『感覚を奪う能力』と『物理的に噛み砕ける殺傷能力』の使い分けができるようだ。あのまま掌底突きを右腕で生身のまま防御していたら、右腕を噛み千切られていた。
「貴様ァ……何者だ……!」
いつの間にか瞳が赤と黄のオッドアイに変化しており、その殺気は人影を刺し抜いていた。
「やっぱ一筋縄じゃいかねえよなぁ~」
その人影――不格好な赤い長髪を振るいながら、黒と黄色の不気味な瞳で男は笑った。それから続けて、だらけ切った口調で言った。
「初めまして精霊様ぁ。俺は
「ハッ。精霊と知って私を狙うか、人間」
火の精霊、
「――そういうところだぜ、精霊様」
「何を――」
口調の変わりように不信に思った
「がッ……!」
突然左腕に顕現した"口"が、その左腕を噛み千切ったのだ。その激痛に
おかしい、
"口"の気配は完全に感じ取れるようになっていたはずだ。それなのに、
千切れた左腕の側面からは血液がドバドバと流れ出している。何かがおかしい。体に力が入らない。
倒れ込んだ
「よし、さっさとトドメを――」
金剛寺が言葉は途中で途切れた。彼はビクンと何かに反応して八時の方向へ振り返る。
「ぜぇ……は……ぁ……。ふ……来る、よ……今から……私の主がね……」
「チッ、やめとこう」
「……」
「良い経験ができたよ」
彼はそれだけ残して、燃え盛る森の中へと消えていく。
その数秒後、左腕を失い血だまりの上で倒れる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます