第406話 召喚レベル9
アレンとメルスが2人3脚で必死にスキル経験値を稼いでいると、とうとう魔導書にログが流れた。
『合成のスキル経験値が100億/100億になりました。合成レベルが9になりました。召喚レベルが9になりました。魔導書の拡張機能がレベル8になりました。成長スキルを獲得しました。「スキル名未公開」(封)スキルを2つ獲得しました』
「どうしたの?」
アレンのこの反応から何が起こったのか分かったのだが、隣で食事をするセシルは何が起きたのか聞いてみる。
「召喚レベルが上がったぞ! ようやく上がった!!」
アレンは立ち上がり、そして拳を握りしめて叫んだ。
こうしてはいられないと、ゲームがしたくて夕食を早食いする子供のようにルコマンを、口の中に押し込んで、貸し与えられた自室に向かう。
これから検証しないといけないことは多い。
アレンの仲間たちも「仕方ないわね」とアレンの後姿を静観する。
(さてさて、ログにあれこれ書かれていて、今回も気になることが目白押しだな)
自室でもう一度ログを見ると前回までなかったようなものがある。
魔導書を開いて、ステータス画面を確認する。
(え? どういうこと?)
アレンは魔導書の中を見て驚いてしまう。
この状況が分かるメルスをこちらに召喚することにする。
『どうした? おお! 召喚レベルが上がったのか!! わ、私は解放されたのか! やった、やったぞおお!!』
直ぐに召喚レベルが上がったことが分かったのか表情が一変する。
両手を上げたメルスは吸い込まれるようにソファーにダイブした。
体をゴロゴロとしながら、仰向けになると天井を見るでもなく遠くを見つめている。
そんなメルスの目に涙があふれるが、形を成さず、水中に溶けてしまった。
牢獄から脱獄させたドレスカレイ公爵よりも、開放感を満喫している。
「……ちょっと、聞きたいことがあってだな」
(そろそろ話しかけていいかな?)
『そうか。何でも聞いてくれ。だが、休みは貰うぞ!!』
メルスには召喚レベル9になったら休みを与えるという話をしていた。
「分かった。約束は守るぞ」
『それで聞きたいこととは? 知っていると思うが、私はAランクの召喚獣の設定をしている途中で召喚獣になったのだぞ』
(これはある意味、涅槃仏(ねはんぶつ)だな)
メルスはソファーに横になりながら、頭を肘で上げてアレンと会話を交わす。
前世に例えるなら、タイや日本にもあった横になった姿勢の仏なのかと思う。
少しでも楽な姿勢を取りたいようだ。
前世で、父親が休日にこんな姿勢をしてテレビを見ていたことを思い出す。
なお、メルスに魚Aの召喚獣の覚醒スキル「擬態」を使うことはできない。
茶髪のくせ毛をしたイケメンの姿をしている。
もしかして御利益があるのかもしれない。
そんなメルスはSランクの召喚獣は知らないと言う。
Aランク以下の召喚獣についても案として伺うが、最終決定は創造神エルメアにあったと聞いている。
Aランクの召喚獣の作成途中で、上位魔神キュベルに敗れアレンの召喚獣になった。
「それは聞いている。今回、封印が随分多いなと思ってな。そもそも何で封印しているんだ?」
アレンは今一度、召喚レベル9に達した自らのステータスを改めて確認する。
【名 前】 アレン
【年 齢】 16
【職 業】 召喚士
【レベル】 93
【体 力】 3815+2000
【魔 力】 6060+12060
【攻撃力】 2124+2800
【耐久力】 2124+4400
【素早さ】 3951+6200
【知 力】 6070+15060
【幸 運】 3951+2000
【スキル】 召喚〈9〉、生成〈9〉、合成〈9〉、強化〈9〉、覚醒〈9〉、成長〈1〉、拡張〈8〉、収納、高速召喚、等価交換、指揮化、王化、共有、削除、剣術〈5〉、投擲〈3〉、〈封〉、〈封〉
【経験値】 約1兆/300兆
・スキルレベル
【召 喚】 9
【生 成】 9
【合 成】 9
【強 化】 9
【覚 醒】 9
【成 長】 1
・スキル経験値
【生 成】 約300万/1000億
【合 成】 0/1000億
【強 化】 約250万/1000億
【覚 醒】 約120万/1000億
【成 長】 0/1000
・取得可能召喚獣
【 虫 】 封ABCDEFGH
【 獣 】 封ABCDEFGH
【 鳥 】 封ABCDEFG
【 草 】 封ABCDEF
【 石 】 封ABCDE
【 魚 】 封ABCD
【 霊 】 封ABC
【 竜 】 封AB
【天 使】 SA
【 - 】 S
・ホルダー
【 虫 】 A7枚
【 獣 】
【 鳥 】 A10枚
【 草 】
【 石 】
【 魚 】 A50枚、魚D3枚
【 霊 】 A5枚
【 竜 】 A4枚
【天 使】 A1枚
【 - 】
(召喚獣も封印されているし、手に入ったスキルは何のスキルかすらわからないし。もしかして設定間に合わなかったのか?)
2つの〈封〉とだけあるスキルは何のスキルかもわからない状態にある。
Sランクと思われる召喚獣がほとんど封印されている。
召喚獣の設定はデザインから特技の効果など、調整がすごく大変だとメルスから聞いていた。
メルスと2人3脚でスキル経験値を稼いだこと、魔石も十分にあり、アレン軍の活動は時間的に余裕がこの半年ほどあったことで、随分早く召喚レベルを上げることが出来た。
そのため、召喚レベルが早く上がり過ぎて設定が間に合わなかったのか疑いたくなる。
アレンは自らの成長の記録を魔導書に記録する。
・01歳00か月 魔導書獲得、召喚レベル1、召喚獣Hランク
・01歳10か月 召喚レベル2、合成スキル獲得
・03歳00か月 召喚獣Gランク
・05歳11か月 召喚レベル3、強化スキル獲得、召喚獣F
・07歳09か月 召喚レベル4、収納スキル獲得、召喚獣E
・09歳10か月 召喚レベル5、共有スキル獲得、召喚獣D
・12歳09か月 召喚レベル6、覚醒スキル獲得、召喚獣C
・13歳11か月 召喚レベル7、高速召喚スキル獲得、指揮化スキル獲得、召喚獣B
・15歳03か月 召喚レベル8、等価交換スキル獲得、王化スキル獲得、召喚獣A
・16歳00か月 召喚レベル9、成長スキル獲得、封印されたスキル獲得を2つ、召喚獣S
『……そもそも、既にアレン殿は人の域を逸脱しつつある。それは分かっているな?』
疑いの目を向けられた神界の代表者となったメルスが呆れながら口にする。
「ん? 魔王を倒すのにAランクでも良いとかそういう話か」
メルスが召喚獣になって10か月ほどになる。
その間にあれこれ色々なことを聞いた。
そんな中の話をアレンは思い出す。
「そうだ。その話からすると、作成時、神界では人がヘルモードで召喚レベル9に達するのかという意見もあった。そもそも、通常の魔王ならそんなに職業レベルを上げる必要はないからな」
人の域を超えつつあるアレンの話の前段となる、魔王の強さについてアレンは思い出す。
魔王は魔族の中からたまに現れる職業で、現れると野心を持って世界を征服しようとするらしい。
魔王が出現する度に、その度に世界は苦しめられてきた。
魔王を倒す者は、「英雄」という括りだと言う。
英雄の中には「勇者」のヘルミオスも含まれる。
アレンやヘルミオスと、修羅王バスクは同じ立場だという。
魔王を倒すために必要なものは、レベルであったり、職業レベルであったり、装備であったり、パーティーの人数や、パーティーの才能や構成によって違いがある。
魔王との戦いの勝率5割になる構成を教えてくれた。
5割以上の確率で魔王を倒すには、ノーマルモードだと、才能が星5つの勇者がレベルとスキルレベルをカンストさせ、オリハルコン級の装備を手に入れる。
才能が星3つ以上の仲間を作り、8人以上のパーティーを組んだら、5割の勝率で勝てる。
勝率5割なので、敗北も5割だ。
敗北になると勇者のパーティーは全滅し、世界は破滅の道を歩むという。
神界では、アレンの場合だと、召喚レベル7のBランクの召喚獣を召喚出来たら、5割以上の確率で、1人で魔王を倒せるのではという話であった。
(召喚レベル8にもなれば、ほぼ間違いなく魔王を1人で倒せるって話だよな。配下の魔神レーゼルに殺されかけたけど)
これまでの魔王はステータス1万から2万程度であったという。
Aランクの魔獣ならステータスが3000から6000ほどだ。
魔神レーゼルは魔王どころか、前世のゲームなら裏ボスほどの強さを誇っていたという。
高速召喚を駆使しても守りもままならず、ドゴラが結局1回死んでしまった。
魔神レーゼルを倒せた理由
・勇者ヘルミオスのエクストラスキルが魔神特攻
・アレンの仲間たちのエクストラスキルも優秀
・アレンがやり込み好きで既に召喚レベル7
・精霊神が「精霊王の祝福」を使い介入
『才能の星が8つのアレンは、他のどの者よりも職業レベルが上がる度に強くなる』
「剣士よりも剣聖の方のステータスの伸びが高くなるとかいう話だな」
成長率を決めるのは星の数だ。
だから星1つだったドゴラより、星3つのクレナの方がレベルや職業レベルが上がった時の成長率は高い。
星8つのアレンは召喚レベルが上がる度に飛躍的に強くなるのはこれが理由だ。
魔獣のようにランクのある召喚獣だが、同じランクで比べると明らかに召喚獣の方が強い。
そして、そんな召喚獣を同時に出現させることのできる数も10ずつ増えていく。
『本来であれば職業レベルが7や8で倒せるべき魔王が倒せなくなる状況にある。だから、力を得るためには相応の代価を必要とする』
(まあ、スキルを覚えるのに必要レベルがあるなんてものは当然だからな。そもそもレベルだけで手に入る世界なんてヌルゲーだし)
アレンの前世の記憶でも、強力なスキルにはそれ相応のレベルを必要とする。
そもそもスキルがレベルを上げるだけで手に入るなんてヌルゲーだ。
アレンが前世でケンピーだったころ、万のユーザーがプレイして、手に入るのは月によくて1つというとんでもなく低い確率でドロップするスキルもあったことを思い出す。
「既に通常の魔王なら倒せる域に達した俺が、それ以上の力を得るための代価が必要だということか」
何をするにも代価を求める世界だ。
神が無償で力を差し出すことはとても少ない。
魚人だったマクリスは力を得る代わりに、聖魚になってしまった。
『そういうことだな。何が足りないかは分からないがな』
今世の魔王は何らかの方法を使い、圧倒的な力を持ち、裏ボスといってもいいほどの力を持つ魔神でさえ配下に持つ、人類にとっては詰んだ状況だ。
それに対抗して呼ばれたアレンだが、だからといって力を無条件に行使することはできないようだ。
(代価を払えか。とりあえず、封印されまくっているが、とりあえず、虫を生成してみるか)
召喚レベル9の虫の召喚獣を生成してみる。
『虫Sの召喚獣は封印されています』
「なんだよ、教えてくれるのか。とりあえず、召喚レベル9の召喚獣のランクはSなんだな」
アレンは思わず声が出る。
封印されているが、召喚レベル9はSランクの召喚獣であることは間違いない。
そもそも天使と新たに追加された系統の召喚獣は封印されていないので、おそらくSランクの召喚獣であることは容易に想像できた。
(これって、召喚獣を合成する条件とか分かるのか? 天使Sは封印されていないしな。どんなログが出るか確認するか)
今ある状況から、さらなる分析を進めることにする。
天使Sの召喚獣は唯一封印もされていない。
アレンは魔導書の合成のページを開き、天使Sを合成しようとする。
なお、召喚獣は虫系統と獣系統の召喚獣以外は、直接は生成できない。
生成と合成を繰り返さないといけない。
合成に失敗しても何らかの注意メッセージが魔導書の表紙にログとして表示される。
それをヒントに封印解除の手立てはないか調べようと思う。
『お、おい』
何か言おうとしたメルスをカードに戻して、適当に天使Aと竜Aのカードと、アイアンゴーレムを狩って手に入れたSランクの魔石も置く。
「天使Sの召喚獣を合成。む? 反応しないぞ」
これも初めてのことだった。
成功しても失敗しても、魔石と魔力は消費するからだ。
とりあえず、魔導書の表示のログを確認してみる。
「ぶ!?」
アレンは水を吹き出してしまった。
ちょっと疲れていたのか、かすれ目かなと水中で潤いまくっているのに、目が乾燥してしまったかと思った。
魔導書を見間違いと思い、改めて瞼をパチパチしながらログをしっかり見る。
『天使Sの召喚獣を召喚するためには、Sランクの召喚獣が必要です。また合成により生成するには聖珠を一定量収納してください』
(聖珠が必要なのん?)
必死に求めているものが合成に必要だった。
そして、それ以上の大事なことに気付いた。
それは召喚レベルが新しく追加された系統ほど魔石を多く必要とするということだ。
「ん? え? 天使Aの召喚獣ってAランクの魔石なら49個必要だったよな。じゃあ、天使Sを召喚するのに49個の聖珠が必要ってことか?」
アレンは独り言のように思考を漏らしてしまう。
それほど途方に暮れるほどのログが魔導書には流れていた。
圧倒的な代価を払わねばならない領域に、アレンは足を踏み込んでしまったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます