第273話 天使の輪
ブロンズゴーレムとの激突で力負けをした天使メルスが、吹き飛ばされる。
そして、少し飛ばされた中空から、アレンたちの背後に、ブロンズゴーレムに負けないくらい巨大な竜Aの召喚獣を召喚する。
『オロチよ、攻撃を合わせ、隙を作れ』
『おう! メルス殿!!』
5つの首が巨大なブロンズゴーレムに迫る。
ブロンズゴーレムの両腕がドリルのように回転し、何かがこすれる衝撃音をまき散らせながら竜Aの召喚獣の頭に迫る。
一撃で、竜Aの召喚獣の頭の1つを粉砕する。
圧倒的にブロンズゴーレムの方が竜Aの召喚獣よりステータスが高いようだ。
ミチミチ
竜Aの召喚獣の失った首の肉が動いたかと思うと、首の肉から頭が生えてくる。
竜Aの召喚獣の特技「超再生」の効果だ。
(これは普通に助かる。頭が5つあるから、攻撃をしていない頭の回復に時間かけられるし)
今回のように強敵が相手だと、召喚獣はどうしても消耗品のような扱いをしていた。
魔石も大量に消費するので、しぶとく戦ってくれて助かると思う。
再生能力を活かし、ダメージを無視して四方から攻撃を加えていく。
「よし、このブロンズゴーレムはかなり強いぞ。ドリルパンチに気をつけろ。一撃必殺に近い攻撃を受けるぞ!!」
「俺も行くぞ!!」
「うん!!」
アレンがメルスと竜Aの召喚獣の戦いを分析し、仲間たちに檄を入れる。
そしてその言葉と共に、後方で様子を見ていたドゴラとクレナが一気に距離を詰めていく。
メルルも既に100メートルに達したミスリルゴーレムを降臨させている。
「うりゃあああああ!!!」
巨大なゴーレム同士の戦いだ。
タムタムはブロンズゴーレムの両肩を握り、一歩、また一歩とゆっくり押していく。
(それにしても、天使の輪有能過ぎるな。まさに管理者権限ってやつか)
アレンは魔導書の新たなページに追加された天使の輪専用ページを確認する。
【天使の輪の権利設定一覧】
天使の輪での権限範囲を選択してください。
・召喚 無制限
・生成 使用不可
・合成 使用不可
・強化 使用可
・覚醒 使用可
・収納 使用可
・共有 使用可
・高速召喚 使用可
・指揮化 使用可
・等価交換 使用不可
・1日の魔石使用量 使用不可
・管理者との距離 無制限
・チャット入力 無制限
アレンは天使メルスに召喚の各種スキル使用権限を与えることができる。
そして、どの程度権限を与えることができるのか、選択が可能だ。
例えば召喚については、ランクがHからAまで選択ができ、全て召喚できるようにしたいなら【無制限】の項目を選択したらよい。
【1日の魔石使用量】とは生成させるなら1日どの程度使用させるのか数値を入力できる。
Eランクの魔石なら1、Dランクの魔石なら10といった数値に魔石が置き換わっており、上限の数値まで生成できる。
【管理者との距離】とは、アレンからメルスまでの距離で権限を行使させるかどうかということだ。
1キロメートルを選択すると、メルスがアレンと1キロメートル以上離れると権限を失ってしまう。
(スキル経験値も入れば良かったが、それは都合良すぎるか)
スキルの使用はメルスの魔力を必要とする。
アレンの魔力を消費しないためか、メルスが召喚獣を生成してもアレンにスキル経験値は入らない。
とりあえず、戦闘などで必要な権限を選択し与えている。
他の召喚獣より立場が上なのか、天使の輪の権限一覧には載っていないが、メルスの指示を召喚獣は聞くようだ。
「ぐぐ」
タムタムがブロンズゴーレムに力負けをしていく。
肩のあたりを掴み、両手のドリルパンチを防ごうとするが、抑えることができない。
迫るドリルパンチでタムタムの体が削られていく。
「アレン、むちゃくちゃ硬いぞ!!」
そんな中、ドゴラがあまりの硬さに驚愕している。
3回の転職を経て、圧倒的な攻撃力を手に入れたがそれでも攻撃が通らない。
クレナについても同様なようだ。
(明らかに2階層から4階層のSランクの魔獣に比べて強敵だな。こんな強敵は変貌した魔神レーゼルくらいか)
ブロンズゴーレムはクレナとドゴラの攻撃がほとんど通じない。
後方からもセシルの魔法や、ソフィーの精霊を通じての攻撃もダメージが確認できない。
物理攻撃だけでなく、魔法や精霊魔法にも一定以上の耐性があるように思える。
圧倒的な攻撃力と耐久力、そして各方面の耐性もかなり高い敵だと理解する。
攻撃がほとんど効かない状況での総攻撃が続いていく。
こんなに攻撃が通らないのは、魔神レーゼルが本気を出して、グロテスクな化け物に変貌したとき以来のように思える。
「アレン、限界突破使うよ!?」
「いや。まだだ。メルス! そろそろ準備できないか?」
クレナがあまりにも硬い敵のため、ステータスの底上げをするエクストラスキル限界突破を使っていいかアレンに確認する。
しかし、アレンはクレナの判断を止め、メルスに作戦遂行の状況を確認する。
『前も言ったが、これは100パーセント効くわけではない。ちょっと待っていろって、よし効いたようだ』
「お?」
(いったか?)
メルスが少し待てと言いかけたところで、何かが上手くいったようだ。
『この敵の弱点属性を雷属性にした。皆の属性も雷属性に変えていくぞ』
「すごい! 攻撃が通じるよ!!」
両手で握り締め、全力で振られるクレナの大剣が、巨大なブロンズゴーレムを衝撃で後退させる。
「お、おい。俺も早く!!」
ドゴラも自分にも早く使ってくれと督促する。
メルスはドゴラの大斧、フォルマールやソフィーの弓にも特技「属性付与」を使っていく。
そして、メルルのタムタムの両腕にも属性付与を掛ける。
(メルルのタムタムは武器判定だからな)
天使メルスが使ったのは、特技「属性付与」だ。
スキルや魔法には属性というものがある。
もちろん、属性のない無属性もある。
そして、魔獣にも属性によって攻撃が通じ易かったり、通じ難かったりする。
火属性に強い耐性があれば、火魔法や火属性のスキルはあまり効かない。
逆に火属性が弱点なら、通常以上のダメージを与えることができる。
メルスの特技「属性付与」は敵、味方の属性を変更するというものだ。
敵の属性を変え、1つの耐性を弱点にする。
そして、味方の武器に属性を付与することができる。
なお、魔獣のランクや耐性によって、属性付与が直ぐにかかったり、失敗をしたりもする。
特にSランクの魔獣で属性付与が一発で効いたのはスカーレットのみだった。
敵の弱点を追加することができることもあって、ビービーもクリムゾンもメルスたった1体で倒すことができた。
なぜ、数ある属性の中で雷属性を下げたかというと、それにも理由がある。
「すごいわ!! 魔法が通じるわよ!!」
セシルがアレンの後ろで感動する。
知力3000上昇の指輪を2つ装備し、ステータスを合わせて1万を超えたセシルの雷魔法がブロンズゴーレムに通じるようになったことが明らかに分かる。
魔導王のセシルが使える魔法の1つが雷属性だ。
後方からの砲台の役割のあるセシルがガンガン魔法をかけていく。
『悪よ、滅びよ。裁きの雷!』
そして、メルスが収納から天の恵みを使い魔力を全回復させ、全魔力を手のひらに集中させていく。
そして、放電をまき散らしながら、巨大な雷がブロンズゴーレムに落ちる。
メルスの覚醒スキル「裁きの雷」は雷属性だ。
「明らかに敵の動きが鈍ってきたぞ」
(つうか、まだやられないのね)
強化を使い2万を超えた全魔力をぶつける裁きの雷でも一撃では倒せない強敵だ。
しかし、十分な一撃であったようでかなり動きが鈍い。
その後も、クレナのエクストラスキルも発動し、皆でタコ殴りにしていく。
『ブオオオム』
最後に一言、鳴いたかと思ったら倒れる。
『ブロンズゴーレムを1体倒しました。経験値8億6千万を取得しました』
ブロンズゴーレムが消え、倒したところに1つの宝箱が現れる。
「よっし!!」
ブロンズゴーレムは姿を消し、広間の奥の方にキューブ状の物体が浮いていることに気付く。
そして、そのキューブ状の物体の目の前に1つの宝箱が置いてある。
「こ、こんなにすごい敵なんだから」
キールがイソイソと宝箱を開けると、倒したところに落ちていたのはミスリルゴーレムの本体用石板。奥にある宝箱には1つにはブロンズゴーレムの模様のあるメダルが1つ入っていた。
既にメルルが揃えているミスリルゴーレムの本体用石板でキールの肩の力が抜けていく。
明らかにガッカリしてる。
「キール、がっかりするの早いぞ。見てみろ。この宝箱に見覚えがあるぞ。最下層ボスの攻略報酬の宝箱だ」
「お!? ってことは、銀箱、金箱もあるってことか? って、こんな強敵を何体も倒せってことじゃねえよな?」
(答えは既に君の中にある!)
アレンがニヤリとするので、キールの顔が歪んでいく。
C級からA級ダンジョンにあった懐かしい木箱が出てきたので、銀箱や金箱も出るのではとアレンは思う。
しかし、銀箱は1割程度の確率、学園にいたころ金箱に至っては1回しか出て来ず1パーセント以下だった記憶がある。
「まあ、今回は最下層ボス攻略が目的だからな」
あくまでも、最下層ボス討伐前に出た宝箱はおまけだと言う。
アレンのその言葉にキールがホッとする。
(こんなのをあと2体も倒さないといけないのか)
こうして、最下層ボスではないものの、最下層ボスに通じる強敵をアレンたちは撃破したのであった。
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