第241話 3階層①
アレンはゴーレムの有用性と可能性を、3階層で活躍をするゴーレムを見て改めて気付かされた。
(極力早めに本体用石板を集めて、次の階層に行くかな。仲間のレベル上げはどこが一番うまいのかな? 魔石も集めないと。何だろう、やることが多くてすごくワクワクするんだが。ディグラグニは神か。いやこれから神になるのか)
仲間たちがまだ1回しか転職できていないので、レベル上げも兼ねて石板を集めたいと考えている。
金策もして魔石も集めねばとやりたいことが多くてなんか気持ちが高揚する。
冒険者ギルドでDランクの魔石を募集するために5日で金貨1000枚を稼ぐ必要がある。
このS級ダンジョン「試練の塔」はやり込み要素が満載のようだ。
ダンジョンマスターのディグラグニに感謝の気持ちを持ちつつ、キューブ状の物体に歩みを進める。
この3階層にも2階層と同様に、次の階層に案内してくれるキューブ状の物体があるようだ。
せっかく目の前に次の階層を案内するキューブ状の物体があるので、3階層を散策する前に4階層へ移動する条件を確認する。
『こんにちは。廃ゲーマーの皆様。ダンジョン階層管理システムS301です。次の階層に行きますか? それとも1階層に戻りますか?』
「え?」
(おいおいまじかよ)
「どうしたの?」
アレンが動揺したので、クレナが尋ねてくる。
「いや、クレナ。ちょっと確認させてくれ」
「うん」
「すみません。この3階層から2階層へは戻れないのですか?」
『申し訳ございません。移動できるのは次の階層もしくは1階層のみとなっております』
「うは!? メダルめっちゃいるんだが」
(え? 何? S級ダンジョンはメダルゲーなの?)
「「「!?」」」
アレンの仲間たちもアレンの言葉の意味を理解した。
次の階層に行くにはメダルが必要だ。
そして、メダルは次の階層に進む度に必要になる。
これでは、1階層から毎回メダルを使用して上がって行かないといけないということだ。
「次の階層に進みたいです」
アレンは次の階層に進む条件を確認する。
『4階層ですね。ブロンズメダルを4枚、アイアンメダルを4枚お出しください』
「持ってないです」
(1枚もない。まじか。ブロンズメダルもいるのか)
「ちょ、ちょっと!? 何よこれ。どんどん必要なメダルが増えていくじゃないの!」
セシルは昨日半日近くかけて移動し続けて、やっとの思いで手に入れたメダルの苦悩を思い出した。仲間たちも絶句している。
何となくこのS級ダンジョンの攻略の難しさが分かったような気がする。
このダンジョンは階層を上に進めば進むほど、必要なメダルの種類が増え、そしてメダルの枚数も増えていく。
「たしかに。これはダンジョンに泊まることも視野に入れないとな」
「……そうですわね」
ソフィーも困りましたわねと頬に手を付けて返事をする。
せっかくダンジョンの近くに賃貸物件を借りたが、毎日ダンジョンから出るとそれだけメダルが必要になる仕様なことが分かった。
3階層の広場で休憩していた冒険者たちを見る。
彼らがダンジョン内で休んでいるのは、このメダルが毎回必要な仕様のためなのかもしれない。
何日も寝泊まりしている冒険者のパーティーもいるのだろう。
「さて、ダンジョンの様子を把握しながら、メダルを集めるぞ」
アイアンメダルは今後も必要なことは容易に想像できる。
アレンは鳥Bの召喚獣を召喚する。
休んでいる冒険者たちが驚く中、上空へと舞い上がっていく。
(ふむふむ、それなりに冒険者はいるが混んではいないな。だが困ったな。戦闘中の魔獣以外は砂の中なのか? これを見つけるには。ん?)
3階層は2階層で活動をしていた冒険者の2割から3割程度しかおらず混んでいない。
魔獣は砂の中に入っており鳥Eの召喚獣を通して辺りを見るが見つからない。
砂の上に出ている魔獣は冒険者のパーティーと既に戦闘中のようだ。
そんな中、1つの冒険者のパーティーが砂の中に点在する丘くらいの大きさのある岩山に近づいていく。
数十人規模のかなり大きな冒険者のパーティーのようだ。
(む、これは何かあるのか? おお! 岩山に穴があるぞ!! ん? なんだ? この穴に何かあるのか?)
アレンが鳥Eの召喚獣で冒険者たちの様子を確認する中、冒険者たちは大きい岩山にぽっかり空いた穴の前で陣形を組み始める。
冒険者たちからは、これから一戦を交えようという気迫のようなものを感じる。
前方に2体のゴーレムが立ちふさがり、その後方に後衛の冒険者が控える。
ゴーレムの肩の上には軽装の弓隊が立っている。
2人ほど、斥候と思われる獣人がゆっくりと穴の中に入って行く。
ある程度入って行くと、ものすごい勢いで追われるように駆けて出てくる。
その後ろからワラワラとサソリの魔獣が出てきた。
そこまで大きな岩山には見えないがどんどん出てくる。
そして、何十体のサソリの魔獣の後ろから1体の大型のサソリの魔獣が姿を見せた。
冒険者たちと魔獣の戦いが始まった。
陣をしっかり組んでいることもあり、冒険者有利に戦闘は進んでいく。
(なるほど、穴の中にも魔獣がいるのか。砂の中だけではないんだな。ん? これは2階層も同じなのか? そういえばデカい木が生えていたな)
冒険者のパーティーが戦闘をする中、森林と草原で構成された2階層を思い出す。2階層にもたしかに、数キロメートル間隔で点在する大きな木が生えていた。
現在も2階に飛ばしている鳥Eの召喚獣に、とても目立つ大きな木に向かわせる。
木には大きなウロがある。
全ての大きな木にはウロが開いているようだ。
(ふむふむ、こういうところに宝箱があったり、魔獣がいたりするのか? 2階層の木は3階層の岩山ほど大きくないから、あるのは宝箱だけなのかもな。なるほどなるほど)
アレンはこの大きな木や岩山の穴に魔獣であったり宝箱であったりがあると予想する。
冒険者たちは、この2階層の木や、3階層の岩山の中を調べながら宝箱を回収したり、魔獣を倒しているのだろう。
「どうしたの?」
メルルが上空で待機して一向に進まないアレンに尋ねる。
「何となく、この階層の攻略方法が見えてきた」
「本当!?」
「ああ、ちょっとあっちの岩山に行ってみよう」
アレンは気付いたことが正しいか確認をするため誰もいなさそうな岩山を目指す。
「よしここがいいな。皆も敵が出てくるかもしれないから気を付けてくれ」
そういって岩山にぽっかり空いた大穴から少し離れたところに、クレナとドゴラを先頭に陣を組んでいく。
そして、仲間たちの陣形ができたところで、霊Bの召喚獣を穴の中に向かわせる。
「む? 何もないぞ」
「「「え?」」」
アレンが、岩山にできたAランクの魔獣が出入りできるくらいの大きさの大穴に霊Bの召喚獣を向かわせると、穴の中はちょっとした洞窟のようになっていた。
魔獣がいることを期待したが、行き止まりに達してしまい何もなかった。
「必ず何かあるとは限らないのかもしれないな。別の岩山に行ってみるぞ」
鳥Eの召喚獣の千里眼で見てみると、この3階層の広大で波打った砂漠には岩山が100カ所以上ある。
検証は始まったばかりなので、別の岩山に変更をする。
到着したら同じように陣を組み、霊Bの召喚獣を向かわせる。
しかし、何もないようだ。
(今回も何もないな。しかし、こうやって岩山を目標に魔獣を狩っている冒険者も多くいるようだからな)
他の冒険者パーティーの動きを確認すると、大きく2つの行動に分かれているように感じる。
1つは砂漠の中を徘徊して魔獣を狩る冒険者のパーティー。
もう1つは岩山に向けて移動する冒険者のパーティー。
必ずやっていることに意味があると思い、3つ目の岩山にやってくる。
霊Bの召喚獣が中に入って直ぐのことだった。
奥まで入ったが何もないのかと思ったが、幾何学的な文字が多用された魔法陣のようなものが現れる。
『『『キシャー!!!』』』
そして、その魔法陣から大量のサソリの形をした魔獣がワラワラと洞窟の穴を満たすように現れるのであった。
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