第113話 ダンジョン②

 ダンジョンの1階層にアレン達4人は飛ばされた。飛ばされた先で陣形を組みながら、前に進みだす。日差しのないダンジョンだが、なぜか真っ暗ではない。


 正面をクレナとドゴラ、中央にセシル。最後尾にアレンという陣形だ。こういった陣形の話も、事前に拠点で話ができるので、賃貸物件を借りて良かったと思う。


「道が分かれているわね」


 ダンジョンを進んですぐのところで道が分かれている。


「右は行き止まりかな。左に行こう」


(C級でも結構な迷宮だな。出口はまだ見つからないと)


「アレンすごい!」


 クレナに褒められる。ダンジョンに進み出したのと同時に4体の鳥Eの召喚獣を飛ばして、道の確認をしている。


 鎧アリの巣を攻略したときのように、ダンジョンの地図を作成中だ。最短で道順を完成させたい。


 ここは迷宮タイプのダンジョンのようで、通路と小部屋で構成されている。次の階層に行くためには、ダンジョンを管理しているキューブ状の物体を探して、次の階層に飛ばしてもらわないといけないらしい。


「前も話したけど、魔獣を狩るのは最低限にする。宝箱は魔獣だったり罠だったりするから無視だ。できるだけ早く3つのCランクダンジョンを攻略してB級ダンジョンに行けるようにしたい」


 皆が頷く。宝箱は魔獣が擬態していることがあるらしい。あとは開けたら矢が飛んできたり、毒が噴射されるらしい。C級ダンジョンの宝箱はそこまでうまみがないみたいだし、パーティー内に罠解除ができる職業がいないので全て無視の予定だ。


 ダンジョンに入るのにはいくつもの目的がある。自分も含めた皆のレベル上げ、金策、魔石集め。皆大事なのだが、今は攻略を最優先にする。攻略を進めるのは、魔力回復リングがA級ダンジョンの最下層ボスから出るかもしれないからだ。


 それに、C級ダンジョンは魔獣のランクが低すぎる。金策もレベル上げもここでは物足りない。最低でも、まずはB級ダンジョンだと思っている。そこで皆のレベルを上げ、Bランク以上の魔獣に対応できるようにしたい。


(さてさて、皆のステータスの確認っと)


 アレンは歩きながら魔導書を確認する。パーティーを組んだ時、皆のステータスが見れるようになった。


 【名 前】 クレナ

 【年 齢】 12

 【職 業】 剣聖

 【レベル】 21

 【体 力】 880

 【魔 力】 330

 【攻撃力】 880

 【耐久力】 620

 【素早さ】 595

 【知 力】 350

 【幸 運】 415

 【スキル】 剣聖〈1〉、斬撃〈1〉、剣術〈5〉

 【エクストラ】 限界突破

 【経験値】 2,850/3,000


・スキルレベル

 【剣 聖】 1

 【斬 撃】 1

・スキル経験値

 【斬 撃】 0/10


 【名 前】 セシル=グランヴェル

 【年 齢】 12

 【職 業】 魔導士

 【レベル】 1

 【体 力】 25

 【魔 力】 25

 【攻撃力】 10

 【耐久力】 16

 【素早さ】 16

 【知 力】 30

 【幸 運】 16

 【スキル】 魔導〈1〉、火〈1〉、組手〈2〉

 【エクストラ】 小隕石

 【経験値】 0/10


・スキルレベル

 【魔 導】 1

 【火魔法】 1

・スキル経験値

 【火魔法】 10/10


 【名 前】 ドゴラ

 【年 齢】 12

 【職 業】 斧使い

 【レベル】 21

 【体 力】 464

 【魔 力】 248

 【攻撃力】 610

 【耐久力】 404

 【素早さ】 258

 【知 力】 170

 【幸 運】 276

 【スキル】 戦斧〈1〉、渾身〈1〉、斧術〈4〉

 【エクストラ】 全身全霊

 【経験値】 2,850/3,000


・スキルレベル

 【戦 斧】 1

 【渾 身】 1

・スキル経験値

 【渾 身】 0/10


 1週間ほど前から皆のステータスを見ることができるようになったので、ある程度の考察は済んでいる。


 なお、皆から魔導書が見えるようになったが、見える以上の効果はないようだ。神が皆のステータスが見えるようにしたのと引き換えに、ステータスが見える者からは魔導書も見えるようにしたようだ。


 まず、アレンの予想通り、召喚士だけではなく、どの職業にも召喚術のスキルと同じように基本となるスキルがある。アレンはこの基本となるスキルを「職業スキル」と呼んでいる。クレナなら「剣聖」であり、セシルなら「魔導」だ。


 次に、セシルはスキル経験値を獲得しているが、スキルレベルが上がっていない。これは魔法の講師が強力な魔法を覚えるには試練を乗り越えなければいけないと言っていた。レベル制限の可能性があるため、レベルを上げてみてスキルレベルが上がるか確認しようと思う。


 そして、クレナとドゴラがスキル経験値を全く獲得していないのは、騎士ごっこでは魔力を消費しないからだろう。スキルを使う環境になかったと言える。


 なお、クレナとドゴラに魔導書を見せ、クレナなら「斬撃」というスキルがあるぞと言うと、なんとなくイメージは頭の中にあるようだ。クレナとドゴラには魔導書のスキル名と頭のイメージを頼りにスキルを使えるようになってもらいたい。また、学園では午後に実技演習があるので、そこでも学んでほしい。


「セシル、スライムだ」


「分かったわ。ファイアーボール!」


 魔導書で考察しているが、魔獣の偵察は怠っていない。まっすぐ進んだ先にスライムが1体いることは分かっていたので、セシルに魔法で攻撃させる。


『スライムを1体倒しました。経験値8を取得しました』


「やったわ!」


 セシルが初めて魔獣を倒して経験値を取得した。


「ありがとう、その調子でお願い」


 セシルに対する話し方をクレナやドゴラと同じにした。セシルも受け入れているので、初日以降何事もない。


 セシルの魔法を食らい体が半壊したスライムから煙がでる。そして小さな魔石を残して完全に姿を消す。冒険者ギルド職員から聞いた通り、魔獣の素材は手に入らず、魔石以外残らないようだ。


 魔石を回収する時間も惜しいため、残った魔石を鳥Gの召喚獣に咥えて持って来させる。


(Eランクの魔石もある程度集めておかないとな。命の草が必要だからな)


 出た魔石は基本的にアレンの物と話がついている。


(明日は、1万個のDランクの魔石を冒険者ギルドに取りに行かないとな)


 アレンはこの3年で魔力回復リングを手に入れる予定でいる。同時にDランクの魔石によるスキルレベル上げも行っていく。


 各ランクの魔石の所有数

・E2746個

・D6953個

・C9157個

・B54個


 Dランクの魔石は2万個以上あったが、魔力の実を作るために結構使ってしまった。Dランクの召喚獣は有益な物が多いため、ある程度の個数は保険で残しておきたい。


 長期戦で召喚獣がたくさんいる機会もあるかもしれない。


 今アレンが持っている金貨は200枚ほど。


 あと2万個のDランクの魔石を冒険者ギルドで募集すれば、お金が底をつく。採掘権を手放すわ、子爵からの厚意の金貨400枚を断るわでお金がない。


 安定して金策ができるようになるまでもう少しかかりそうだ。Eランクの魔石などいくらあってもお金にならない。


 そこで手を付けるのがCランクの魔石だ。


 それぞれの魔石の価値

・E価値無し

・D銀貨1枚

・C銀貨10枚

・B金貨1枚

・A金貨10枚


 10倍ずつ増えていく。何故10倍かというと、魔石は魔導具に使われる。だいたいランクが1つ上がれば10倍魔導具を動かせるらしい。BランクやAランクの魔獣はかなり強いが、魔石自体は魔道具をどれだけ動かせるかで値段が決まる。


 アレンは今9000個程のCランクの魔石を持っている。これを1000個単位で売って9週間分で9万個ほどのDランクの魔石を募集しようと思っている。


 今後Cランクの召喚獣に魔石が必要と思うが、召喚レベルを上げることを優先する。それにCランクやBランクの魔石を市場に流せば、Dランクの魔石の値上がりを抑えてくれる効果もある。Dランクの魔石の価格を高騰させるわけにはいかない。


 魔石は買取と交換両方をやっていく予定だ。



 そして、休憩を取りながら、とうとう1日掛けて、キューブ状の管理システムが浮く部屋に到着する。


「あったわ、これで次の階層に行けるのね!」


 セシルが嬉しそうだ。休憩を含めて10時間以上経過しているが、定期的にレベルも上がったおかげで疲れも回復したのか元気そうだ。やはりレベルもヘルモードの100倍上がるので、Eランクの魔獣でもさくさくレベルが上がっていく。


『私は階層管理システムC328-01です。ダンジョンから帰還しますか? 次の階層に行きますか?』


「次の階層に行ったら、戻れますか?」


 アレンが代表して質問に答える。


『次の階層には階層管理システムC328-02がおります。そちらに言っていただければダンジョンから帰還できます。なお、次の階層に行かないと、次回2階層からダンジョンに入ることはできません』


(お、次の階層に移動したら、記録が残って続きからスタートできるってことか。助かるな)


「では、次の階層にまずは飛ばしてください」


『畏まりました』


 すると、部屋の雰囲気が少し変わる。C級ダンジョンの2階層に移動したようだ。


『いらっしゃいませ。階層管理システムC328-02です。このままダンジョンの攻略を続けますか? 帰還しますか?』


「はい、帰還って、ああ待ってください」


 アレンは収納から薪を一本取りだす。無造作に地面に置く。そして、鳥Gの召喚獣を1体召喚し、部屋に待機させる。


「アレン、何してんだ?」


「実験かな。じゃあ、僕らをダンジョンから帰還させてください」


「ふ~ん」


 ドゴラの質問に答える。ドゴラが何の意味があるんだと薪を見つめる。


『お疲れさまでした』


 その一言とともに、アレン達は後方に扉がある部屋に飛ばされる。そこにはキューブ状のダンジョン総合システムと名乗る物体は浮いていない。


「ここは出口専用の部屋か」


「そ、そうみたいね」


 そう言って、部屋をあとにする。そのまま通路沿いに進んでいくと、どうやら入口の反対側のようだ。こうしてアレン達の初ダンジョンの攻略が終わったのであった。

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