第108話 冒険者登録

 学園の合格発表を確認して、アレン達は魔導列車に乗り冒険者ギルドを目指す。

 魔導列車はどれだけ乗っても一律銀貨1枚となっている。


 魔導船でやってくるとき街全体を見たら、どうも円形の街となっているようだ。魔導列車の線路が東西南北及び街をぐるっと囲むように円状に走っている。交通の便が良さそうだ。


 学園都市と聞くので、学生ばかりかと思ったがそうではない。ダンジョンが多いのか冒険者ギルドに向かっているせいなのか冒険者がかなり多く感じる。


 魔導列車から降りて、5階建ての大きな建物の前に行く。


「ここっぽいな」


 グランヴェルの街の冒険者ギルドにもあった剣と杖と盾のマークがある。大きな建物だが普通に中に入って行く。


「いらっしゃいませ。今日はどのような御用でしょうか?」


 綺麗なお姉さんが入るなり声を掛けてくる。


「冒険者登録に来ました」


「見たところ学生さんのようですが?」


「はい、4月から学生の予定です」


「何か、合格したときの受験番号が分かるものをお持ちですか?」


 そう言われたので、4人とも鑑定の儀で渡された割符を見せる。学生は2階ですと言われて、2階に案内される。2階入り口にも案内係がおり、今いっぱいなのでしばらく待ってほしいとのこと。


 アレン達以外にも学生が結構いる。合格発表を確認してまっすぐ来たつもりだがこれだけ学生が多いということは、もしかしたら別の日に合格した受験生かもしれない。仕切りが設けられた、ローカウンターと呼ばれる、座って話を聞くタイプのカウンターが10ヶ所以上設けられている。前世で見た銀行の窓口のようだ。


 1階では見られなかった光景で、かなり学生を優遇しているようだ。学園都市に対して、冒険者ギルドも協力しているのかと思う。


 しばらくすると順番が来て、案内係に言われた番号のカウンターに座る。前にアレンとセシルが座り、後ろでクレナとドゴラが座る。


 カウンターに座るお姉さんが4つの水晶を持ってくる。


「冒険者証の発行ですね。まず、1人ずつこの水晶に手を当ててください」


 言われた通り人数分の4つの水晶にそれぞれ手を当てる。何に反応したか分からないが、水晶がほのかに光る。


(鑑定もそうだが、基本的に水晶なんだな。誰がこれを作っているんだ?)


「こちらにも記載願います」


 そういって、名前、出身、才能などを書く羊皮紙を渡される。4人とも書いたら、水晶と羊皮紙を持ってカウンターの奥に行く。


「今しばらくお待ちください。その間に冒険者について説明させていただきます」


 綺麗なお姉さんが冒険者について説明をしてくれる。説明した内容を箇条書きにして魔導書に記録していく。


・冒険者は冒険者ギルドが管理運営している

・王国からは独立した組織

・冒険者にはランクがありEから始まりSまである

・全ての冒険者はEランクから始まる

・冒険者は依頼を受け、その報酬を貰う職業

・依頼は通常依頼、緊急依頼、指名依頼の3種類がある

・緊急依頼と指名依頼はCランクの冒険者になると受注できる


(この辺はレイブンの話のとおりだな)


 8歳の時にレイブンと知り合って、冒険者についてはある程度理解しているつもりだ。初めて聞く内容もあるが、今聞く限り何の問題もない。


「以上になります。何か質問はありますか?」


「たくさん質問があるのですが、お時間は大丈夫ですか?」


「もちろんです。冒険者は危険なお仕事です。何でも聞いてください」


 むしろたくさん質問するように言われる。


「ダンジョンには、冒険者になればいけるかと思いますが、何か条件のようなものはありますか?」


「ダンジョンに入るにはいくつかの条件がございます。皆さまはEランクの冒険者ですのでC級ダンジョンにしか行けません」


「C級ダンジョンですか。どのようなものか、ダンジョンについて教えてください」


 カウンターのお姉さんがダンジョンについて教えてくれる。

・この学園都市には20個のダンジョンがある

・C級のダンジョンは10個、B級のダンジョンは6個、A級のダンジョンは4個

・ダンジョンは3種類の難易度に分別されている

・C級のダンジョンは最低難度でEDCランクの魔獣が出てくる

・B級のダンジョンは中程度の難度でDCBランクの魔獣が出てくる

・A級のダンジョンは最高難度でCBAランクの魔獣が出てくる


「ダンジョンに入る制限を無くすにはどのようにすればいいですか?」


 職員がダンジョンに入る制限の開放条件を教えてくれる。


・Cランク以上の冒険者でないとB級のダンジョンには入れない

・Bランク以上の冒険者でないとA級のダンジョンには入れない

・C級のダンジョンを1つ攻略すると、冒険者ランクはDになる

・C級のダンジョンを3つ攻略すると、冒険者ランクはCになる

・B級のダンジョンを3つ攻略すると、冒険者ランクはBになる

・A級のダンジョンを3つ攻略すると、冒険者ランクはAになる


 魔導書に箇条書きで記録していく。


(なるほど、さて、ここからが本題だな)


「ダンジョンで貴重なアイテムが出ると聞きました。どのような形で出るのですか?」


 アレンにはこの学園都市の3年間で達成しないといけない大きな目標がある。


 それは、「魔力回復リング」を探すことだ。


 理由は、現在も苦労しているスキルレベル上げをどうにかしたいからだ。3年後の戦場までにまだまだスキルレベルは上げておきたい。そのためには魔力をどれだけ回復できるかにかかっている。


 魔力回復リングを知ったのは、セシルが攫われた際、アレンも寝てしまったところから始まる。睡眠薬にかからない防具のようなものはないか、魔道具屋に行った。そこでは、魔道具屋ではそのようなものを扱っていない。魔法具屋に行けと言われた。


 そんな店があったのかと教えてもらった魔法具屋に行くと、確かに睡眠を完全に防ぐアイテムはあるという。睡眠を防御するのは指輪の形をしたアクセサリーで、「睡眠防御リング」と言うらしい。しかし、そんな貴重な物は出回らないと言う。


 元々入手困難で数が出回らない上に、自らの身を守りたい王侯貴族や富豪が買ってしまうので、こんな男爵領にはないらしい。王都か学園都市に行かないとないと言われた。


 なお、完全な睡眠防御リングは、相場で金貨100枚程度だという。


 そして、一緒に魔力を回復するアイテムはあるかと聞いた。


 すると、そんなものは聞いたことはない、しかし着けているだけで傷が回復する指輪があると聞いたことがあるという。それは「体力回復リング」。学園都市で昔発見されたと聞いたことがあるらしい。うろ覚えで定かな情報ではないが、たとえあっても金貨1000枚でも手に入らないだろうと言われた。


 アレンは、体力回復リングがもしあるのであれば、魔力回復リングもあるのではと考える。


 そういった指輪はどうしたら手に入るのかと聞くと、ダンジョンでたまに手に入るということだった。


「ダンジョンで手に入るアイテムですね。このような形でアイテムが手に入ります」


・ダンジョンには宝箱がある

・それぞれのダンジョンには最下層にボスがいて、倒すとアイテムが手に入る


「最下層ですか。それぞれのダンジョンの階層はどの程度ですか? あと迷わず進んだ場合の移動時間も教えてください」


「最下層はダンジョンの難易度によって違いまして」


・C級ダンジョンは4層から6層

・B級ダンジョンは10層から12層

・A級ダンジョンは15層から20層

・C級ダンジョン1階層の移動時間は6時間程度

・B級ダンジョン1階層の移動時間は12時間程度

・A級ダンジョン1階層の移動時間は24時間程度


(ふむふむ、最低難度のC級でも6時間かかるのか)


「ダンジョンは結構広いんですね。体力回復リングが学園都市で発見されたというのは本当ですか」


「よ、よく調べられているのですね。たしかに体力回復リングはダンジョンで手に入りました。たしか70年ほど前、A級ダンジョンの最下層ボスが落としたと言われております」


(ぐ、70年前なら魔王が魔獣を強化する前じゃねえか。今と昔で難易度が違う件について。だが、やばい。入手が厳しいアイテムをダンジョンで探すという言葉だけで、ワクワクしてくる自分がいる)


 魔王によって魔獣はランクより1つ上の強さを手に入れている。昔のA級ダンジョンと今のA級ダンジョンでは難易度が違う。


 A級ダンジョンの最下層ボスはAランク魔獣だ。今の自分達ではかなり厳しそうだ。手に入るか分からないアイテムが、かなり無理な状況で手に入るかもしれない。それだけで学園都市に来た価値があると確信する。


「まだ、質問があるのですがよろしいですか?」


「も、もちろんです」


 既に職員の前には別の職員が冒険者証を用意してあるのだが、アレンの質問が終わりそうにない。


セシル達は冒険者ギルドで確認しないといけないことがあると前日に聞いていたが、随分と質問があったようだ。真剣に質問をするアレンとカウンターの冒険者ギルド職員の話を黙って聞くのであった。

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