5月5日Ⅷ(11)
「不躾だとは思いますが、一つ質問をさせていただいてもいいですか?」
「どうぞ」
おずおずと切り出した詩歌に、続きを促す慎之助さん。
「私は昔『乙女剣士』としてそこそこ名を馳せていたから、今こうして架那ちゃんや三和さんを始めとした皆さんと行動できているんですが、私では実力不足なんじゃないかなと最近思うんです。自分じゃ何も掬えないのに、やる、とは言うだけ言って。何かアドバイスをいただけたら嬉しいです」
詩歌は真っ直ぐに慎之介さんを見ながら尋ねた。
ふむ、と言って慎之介さんは浴衣の襟を直した。
「一つ言うとするならば、だな神坂くん」
「はい」
「自分を卑下するものじゃない。自分の価値を自分で下げるものじゃない。それだけだ」
慎之介さんは強くそう言い切った。
短いたったそれだけの言葉だったのに、尋ねた詩歌本人ではなくただそばで聞いてるだけの私の心深くまで届いた。
「愛奈が君を選んだのなら君で不足はないと思うし、誰も批判したりはしないだろうさ」
慎之介さんは優しく微笑みながら言った。
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