5月5日Ⅶθ(10)

「おやおや。3人でお早いお着きどすか。ご苦労様どす」

会場に足を踏み入れると、特徴的な着物を羽織った人物が入り口で私たちを待っていた。

「四咲未来・・・」

ヘラヘラとよくも。

お前が師範を殺したようなくせに。

「神坂詩歌はんどしたかいな?そないに睨まんといておくれやっしゃ。

 まだなんもしてあらへんどすえ?」

四咲未来は心底不思議そうな表情を浮かべ尋ねてくる。

ああそうですか。

前回のことは覚えていらっしゃらないんですもんね。

「そんなことより、会場まで案内していただけますか?立ち話を続けるのもどうかと思いますので」

今にも食ってかかってやろうとしていたときに、三和さんが話を打ち切った。

「それもそうどすなぁ。ほなこちらへどうぞ」

四咲未来は笑みを浮かべると奥に向かって歩き出した。


「よく堪えたな。その怒りはありがたいが、戦いになる時までとっておけ」

歩き出した私の肩を師範が軽く叩きながら言う。

「そうですよ。今ここで揉めても仕方ありませんから」

三和さんも笑顔で言う。

「わかりました」

二人の言う通り、少し頭を冷やすべきだ。

落ち着け私。

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