4月30日Ⅵθ(22)
ガンッ、ギギギ、と金属同士がぶつかり合う鈍い音と、互いに気迫を込めた叫び声が廊下にこだます。
「せやぁぁっ!」
「はぁあっ!」
お互いの胸の前で警棒同士がぶつかり合って膠着状態に陥る。
「ここで押し切る!」
「させるかっ!」
ギギギギと、先ほどまでよりもさらに鈍い音が響く。
一瞬パチパチと火花も上がる。
「くっ、はあああっ!!」
膠着状態に終止符を打つべく、警棒を握った右手を前に押し出す力を抜き、斜め下へ勢いよくなぎ払うと、その勢いのまま彼女へ突進する。
「なっ!?」
そのまま愚直に突っ込んでくるとは思わなかったのか、彼女は私の勢いに押され床へ押しつけられる。
これでとどめを−
「詩歌もう良いよ!」
私が彼女に一撃加えようと右手を振りかぶった瞬間、左耳に架那ちゃんの声が飛び込んできた。
ガランと音を立てて、私の手から離れた警棒は地面を転がる。
「架那ちゃん・・・?」
驚きを隠せずに架那ちゃんの名前を呼ぶと、架那ちゃんは私のもとへ走ってきて私を勢いよく抱きしめた。
「ごめん、私のせいで。ほんとごめん」
架那ちゃんは、流れ出した涙を隠すように、私の胸に顔を埋めた。
私も架那ちゃんに釣られて流れ出した涙を止めることはできなかった。
囚われの身であると言うのに、この瞬間だけは酷く安心することができた。
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