第68話 さよなら、チョロ毛

短歌

「上、脱いで」 すっぽんぽんで レントゲン 他の病院 肌着オッケー



解説。

 上月くるをさまの「緑雨のあした」を読んで、思い出した実体験。

 20年以上前の話。胸部のレントゲンを個人病院で撮りましたが、その際「上、全部脱いで!」と言われました。


『うん? 全部?』と思いましたが、そういうもんなのかなと思い直し、見事に上半身すっぽんぽん!


 なんて潔い私。

 うん、腋毛も剃ってるし、おじいちゃん先生だし問題なーし! と自分を納得させました。


 が、すぐに問題発覚。

 私は、青ざめた……

 私の視線は、胸の一部を捉えていた。


「あっ、やばい! 大切にしていたチョロ毛。抜くの忘れた……」


 実は産後の私の体には、異変が起きていた。

 乳首の側に毛が一本生えてきたのですよ。

 普通は恥ずかしくて抜くと思うのですが、月猫は好奇心が強い!


『これって、どこまで伸びるのかな?』

 と、思ってしまった。


 それは、長さ2センチほどに成長。

 子どもが母乳を飲むたびに、その鼻の穴をくすぐるようにぺこぺこ動くチョロ毛……

 面白い、面白すぎる!


 そう、そのチョロ毛を抜くのを忘れていたのだ。


 貧弱な胸を見られるよりも、ぽっこりお腹を見られるよりも、チョロ毛を見られたことが恥ずかしかった。


 なのに、なぜか私はその夜、チョロ毛を抜かなかった。

 あんなに恥ずかしい思いをしたのに。


 後日、大きな病院で検査した方がいいと言われ、胸部のレントゲン撮影をした。

 すっぽんぽんにならなくても、レントゲン撮影ができたことに驚いた。

 前回の医者は、スケベ医者だったのか?

 

 その後心電図を撮る際に、またもチョロ毛を披露。


『なんで、抜かなかったんだろう?』

 自分がアホすぎて悲しくなった。


 その夜、ようやくチョロ毛とさよならしたけれど、もう彼のような立派な毛は生えてこない。


 そんなことを思い出した今宵。

 酒のつまみになるお話だと良いのですが……

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