第17話 亀戦、その後

 亀は動かなくなり、魔物達は様子をうかがっている。中には敵意が消え、森へ戻っていくものも出てきた。


 しかし、冬志が中から出てこない。


「大丈夫かな…」


 カルミアが心配していると、それを見たウル太郎が、亀の中に入っていった。


 少しすると、ウル太郎が冬志をかかえて出てきた。


「トウジ!」


 血塗ちまみれで項垂うなだれている姿を見て、悲鳴ひめいに近い声を上げる。


 ウル太郎が冬志を地面にそっと横たえる。


 息は、少ないがある。


「どうしようどうしよう…そうだ、回復薬」


 こしにつけた袋から回復薬を取り出す。それを冬志に飲ませようとする。


 …しかし、気絶してるから飲めない。


「回復魔法使えば…」


 回復魔法は光魔法の一つで、召喚魔法と同じくらいスキル取得が難しい。


「リク・キラ」


 トウジの体が黄色く光る。


 頭の傷がふさがる。しかし、一体何をしたのか、外傷がいしょうより内傷ないしょうのダメージが大きすぎる。カルミアの回復魔法ではこの傷は治せない。


 それでも回復を続ける。


「どうしよう、パラキシアまでも2時間かかるのに、このままじゃ…」


 すると、様子を見ていた魔物達が、少しずつ動き始めた。仲間の魔物がカルミア達の周りに移動して、戦闘態勢に入る。


 敵の魔物が動き、戦闘が再開する。


「お願い。起きて…お願いだから!」


 こんな状態になっている冬志に頼む自分に嫌気いやけがさす。しかし、自分には戦う力がない。


 召喚魔法で魔物達を遠くに飛ばしたいが、今回復の手を止めれば、冬志が死んでしまう。そんな気がする。


 #、自分は人を死なすのか。


 悔しさに涙が流れる。


 その時、自分の手元にけものの足が現れる。


 「…ッ!、敵っ…?」


 その獣はこちらを見つめ、静かにたたずんでいる。四足で、二本角。緑色にあわく光っている。


 獣は、カルミアへ顔を近づけたと思うと、その目から涙を流し、冬志へ落とす。そこからトウジの体が濃い黄色に光りかがやく。


「凄い…」


 カルミアが使った回復魔法の上位魔法だ。冬志の体がすぐさま治っていく。


体を触ると、折れていた骨は戻っている。他は確認こそできないが、治っているとわかる。


「あなたは…一体…どうし…て…」


 獣がもう一度カルミアへ顔を近づけると、カルミアは眠りについた…

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