第15話 亀と戦ってみた

「なんだ…あれ」


 森を破壊しながらこちらへ向かってくる亀の姿に呆然ぼうぜんとする。


 一歩一歩は遅いが歩幅が大きく、地震のような揺れで走りづらいとはいえ全速力のウルフ達に追いつきそうだ。


「でっか…って、そうじゃない。あんなの村の近くにいさせたら村が危ない。カルミア、転送できるか?」


「やってみる!…なにこれ」


「どうした?」


「転送できない!何かに妨害されてる」


「まじか、じゃあさっきの火魔法お願い!」


「わかった、フェン・アドグラ!」


 瞬間、巨大な火球が出現、亀に猛威を振るう。


 が、


 動きから想像できないほどの速さで、全身を甲羅こうらへしまう。火球が防がれる。


「行くぞウル太郎!」


「承知!」


 『超脚力ちょうきゃくりょく』を発動。ウル太郎と共に甲羅の中へ飛び込む。


「暴れ回れ!」


 冬志は剣を振り回し、ウル太郎は牙で噛みちぎっていく。


 亀が痛みに耐えかね、跳ね上がった。


「うがっ、」


 掴む場所がなく、勢いよく甲羅にぶつかり振り回される。何度も何度も跳ね上がる。


「や、やばっ、これ、死ぬ」


 真っ暗で上も下もわからない。がむしゃらに剣を振るう。


 冬志も亀も少しずつ、少しずつ弱っていっている。


「あ、忘れてた」


 『粘性ねんせい』発動。


「あっぶなかったぁ…」


 未だに振り回されている上に攻撃力は減るが、ダメージは無くなった。


「ウル太郎!大丈夫か?」


「な、なんとか」


「俺は大丈夫だから一旦外に逃げろ!」


「わかりました!」


 しばらくして


「外が見えました。出ます!」


 というウル太郎の声が聞こえた。


「よし、もっとだ」


 『粘性』を解除。痛みをウルフのスキル『闘争心』で無理矢理むりやりまぎらわす。熊をテイムした時に手に入れたスキル『怪力』で攻撃力をあげる。


 少しずつ暗闇とゆれれに慣れ始め、受けるダメージが減っていく。それに比例するように亀の体力が減っていく。


「もうちょっと、踏ん張れ俺!」


 亀戦が始まって20分。頭からの出血が酷く、右足と左腕は衝撃を吸収した時に折れている。み上がりでおとろえていた体力も底を尽きかける。


 亀もほぼ体力が尽き、ほとんど跳ねなくなっている。


 「う…ぉおおおお!」


 亀の眼に剣を突き立てる。


「ッ!!!!」


 途端、亀が咆哮ほうこうをあげて跳ね回る。


 突き刺した剣に右腕だけでしがみつき、耐える。


 しばらくすると力尽きたのか、亀が動かなくなる。


「まったく、この世界の亀は動き回り過ぎ…だ…」


 亀の死を感じ取り、冬志は眠りにつく。

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