旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第400話漏洩

春日虎綱「今年に入り信長が将軍様との間に取り交わした掟の中に『将軍が出す文書には必ず信長の書状を必要とする。』『これまで将軍の出した文書は全て無効とする。』と言った文言が記されています。」

私（村上義清）「義昭からすれば『うるさいな。』の一言だろうな。」

春日虎綱「個人的な文通でありましたら。とも思われるのでありますが、信長はそれすらも許しませんでした。尤もその程度の事でありましたら別に将軍様も信長に隠す必要も無いでしょう。」

私（村上義清）「隠さなければいけないような内容の文書があった？」

春日虎綱「いえ。それは無かったと思われます。三好などはっきり将軍様を敵視している者を追い払うだけの力を将軍様は持っていませんので。信長の力無しには生きていく事が出来ない事もわかっていますので。」

真田幸隆「そうなると送り先に問題があった？」

春日虎綱「左様であります。」

真田幸隆「その中の１人が朝倉義景であった？」

春日虎綱「そう見て間違い無いと思います。」

真田幸隆「今回のいくさは若狭の武藤を討つ事。その武藤が将軍様に反旗を翻している事ははっきりしている。ただその武藤の背後に朝倉義景が居る事も将軍様は把握されていた。そして信長がこれを口実に越前を伺っている事も感じ取られていた。」

私（村上義清）「将軍は信長を亡き者にしようとしたのか？」

春日虎綱「……そこまでは考えていなかったでしょう。ただ信長が朝倉を滅ぼすないし、力が衰えさせられてしまう事は避けたかったのではないかと思われます。」

私（村上義清）「それで今回。これまでには無かった踏み込んだ内容の書状を信長の承認無しに朝倉の下に送った？」

春日虎綱「はい。ただ信長の具体的な作戦は、流石の将軍様も把握する事は出来ませんので『気を付けろ。』程度の内容であったとは思いますが。それに加え、信長の動きが速かった。当初の予定である若狭を無視し、一目散に敦賀へと殺到したため朝倉も後手を踏んでしまいました。ただ敦賀を守る朝倉景紀は義景の代行も務める景鏡と仲が悪かったらしく……。」

真田幸隆「敢えて単独で戦わせた？」

春日虎綱「その可能性も否定する事は出来ません。」

真田幸隆「敦賀では無く、敢えて木ノ芽峠を迎撃地点に定めた？」

春日虎綱「否定する事は出来ません。」

私（村上義清）「敦賀が信長の手に渡った事を確認した上で義景は、浅井長政に信長の退路を断つための指示を出し、長政も実行に移そうとした。しかしその動きを信長に見破られてしまった。秘密裏で動いていたにもかかわらず……。」